Forrester分類と心不全について

本記事では「Forrester分類」を解説したいと思います。
前回から三部作に渡って右心カテについて解説しましたが、なんせ執筆しているうちにボリュームが増えていきまして・・・重要な「Forrester分類」まで書くことができませんでした。

まだ右心カテについて未読の方はぜひ【前編】から読み進めることをお勧めします。

筆者の記事では、何度も繰り返し調べて欲しい、反復して覚えて欲しいという思いから、略語などは一度だけ正式名称と共に記載するだけで、その記事内では以降は略語表記のみとします。

目次

Forrester分類(フォレスター分類)

Forrester分類は、心不全の重症度の評を行うための分類です。

Forrester分類で必要な指標は、肺動脈楔入圧(PAWP)心係数(CI)の2つです。

つまりは、右心カテ(RHC)さえ実施すれば得られる指標ですね。

このPAWPは【中編】で、CIは【後編】で触れています。

元々は急性心筋梗塞(AMI)に合併した心不全の治療のための分類でしたが、現在では急性心不全に幅広く適用されるようになりました。

Forrester分類

図に示される通り、横軸にPAWP縦軸にCIとなっており、PAWPは18[mmHg]、CIは2.2[L/min/㎡]がボーダーラインとなります。※絶対に覚えてください。

Forrester分類はI~IV群にそれぞれのゾーン分類されます。

I群 正常

治療:一般治療、鎮静、安静、必要時ACE阻害薬や硝酸薬

II群 肺うっ血(心拍出量は正常)

治療:利尿薬、血管拡張薬

III群 末梢循環不全(循環血液量減少性ショック)

治療:輸液、強心剤、一時ペーシング(tPM)

IV群 肺うっ血+末梢循環不全

治療:強心剤、血管拡張薬

改善なければ補助循環装置(IABP、ECMO、IMPELLA)

Frank-Starlingの法則(フランク-スターリングの法則)

循環血液量と心拍出量には、「心臓へ戻ってくる静脈還流量が増加して心筋が伸展する程、ある一定限度までは心筋の収縮力が増加する」という Frank-Starlingの法則に従っています。

Forrester分類へ応用するためにFrank-Starlingの法則の表現を変えますと、「前負荷(つまりは左心室内への流入血流量)が増加すると、1回拍出量が増加する」ということです。

Frank-Starling曲線(フランク-スターリング曲線)

図は縦軸を1回拍出量、横軸に拡張終期容積(前負荷)としたFrank-Starlingの法則を示したFrank-Starling曲線です。

心臓へ戻ってくる静脈還流量が増加して心筋が伸展する程、ある一定限度までは心筋の収縮力が増加する」となっていますが、心不全が進行し前負荷が増大すると、心筋が過度に伸展して、逆に心筋収縮力は弱まり、心拍出量も低下することを意味します。

Frank-Starling曲線

Forrester分類とFrank-Starlingの関係

もう一度確認します。
Forrester分類の縦軸はCI横軸はPAWPです。
Frank-Starling曲線の縦軸は1回拍出量横軸は左室拡張期容積です。

・・・ん?
両者とも縦軸は心拍出量、横軸は前負荷についての指標となっていることに気付いていただけたでしょうか。つまりは、同じ座標平面で視覚的に考えることができます。

下図のような感じに重ねて考えることができます。

Forrester分類とFrank-Starlingの関係

Forrester分類を用いたシミュレーション

では、簡単にですが図を使用しながら、Forrester分類IV類の患者へ対する治療のシミュレーションをしてみましょう。状態IV群(A)~I群(D)への移行をシミュレーションします。

※イメージしやすくするための一例であり、実臨床の治療方法とは異なる場合があります。
 登場する薬剤
使用を推奨するものではありません。

A:肺うっ血+末梢循環不全(低心拍出量)の重症心不全

左心不全(低心拍出量)の状態のため、強心剤(カテコラミンなど)を使用します。
使用する強心剤によりますが、心収縮力アップのためCOを増加させます。
A(IV群)からB(II群)へ移行します。

ドブタミン(DOB)を使用すれば血管拡張作用もあるため、肺うっ血もやや改善します。

改善なければ、補助循環装置の使用を検討します。

A(IV群)→ B(II群)移行

B:肺うっ血の軽度心不全

前負荷が高い、つまりは静脈還流量が過多のため利尿薬を使用します。
利尿を促し、静脈還流量を減少させることで前負荷を軽減させます。
主にhANP(ハンプ、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)が使用されます。

【補足メモ】hANP人工透析にも欠かせない大切な指標ですね。主に心房で合成され、心房圧による伸展刺激によって産生されるホルモンで、前負荷が高いときに高値を示します。

健常者の正常値は43pg/mL以下ですが、透析患者の場合は透析後の値が50〜100pg/mL以下になるようDWを設定することが推奨されています。

前負荷は軽減しましたが、もう一歩前負荷が高い状態とします。
B(II群)からC(II群)へ移行です。

B(II群)→ C(II群)移行

C:肺うっ血の軽度心不全(正常値へもう一歩)

肺うっ血がまだ残存している状態ですので、血管拡張薬を使用します。
静脈系を拡張させることで(静脈に血液をプールさせ)静脈還流量を低下させ前負荷を軽減し、動脈系を拡張させることで血管抵抗を低下させ、後負荷を軽減させます。

C(II群)からD(I群)へ移行します。

C(II群)→ D(I群)移行

D:正常状態

A→B→Cと経て、正常レベルになりました。
あとは状態を維持させるような内服等で調整します。

さいごに

これにてForrester分類についての説明を終わります。
PAWPとCIのボーダーラインは必ず覚えるようにしてください。

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この記事を書いた人

職歴
現大学病院勤務
取得資格
臨床工学技士(CE)、ITE 心血管インターベンション技師、ME1種検定試験

得意領域
カテーテル、アフェレシス、内視鏡、機器管理

大学病院での幅広い勤務実績をもとに、臨床工学技士業務全般執筆しております。
1児のパパでもあり、子育て情報も発信していけたらと思います。

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