右心カテーテル検査 ー スワンガンツカテーテルで得られる二次情報まとめ【後編】

右心カテのまとめもようやく最終稿です。

この記事は右心カテーテル検査―スワンガンツカテーテルについて【前編】
右心カテーテル検査 ― スワンガンツカテーテルで得られる一次情報まとめ【中編】の続きです。

目次

2次情報

この記事では右心カテ(スワンガンツカテーテル)で得られる2次情報について取り上げていきます。
2次情報とは、直接測定された1次情報を基に計算して得られるパラメータのことです。

心係数(CI:cardiac index)

CIはCOを体表面積(BSA)で除して得られます。CIは体格の違いを体表面積当たりに統一して、その患者にとって循環血液量(心拍出量)適正かどうかを判断・管理できます。

PAWPと共にForrester分類の評価に使用されます。

PAWPは中編で触れています

人工心肺では似たような指標として、PI(灌流指数:perfusion index)が用いられますが意味合いは一緒です。
成人と小児で適正値が異なります。小児では体表面積あたりの代謝量が高いのでCI及びPIは成人より高いです。

CI:正常値

成人:2.4-2.6[L/min/m2]
小児:2.6-2.8[L/min/m2]

\begin{align}
CI[L/min/m^2]=\frac{CO[L/min]}{BSA[m^2]}
\end{align}

1回拍出量(SV:stroke volume)

SVは心臓が1回の拍動で拍出する血液量です。COとHRから算出します。

\begin{align}
SV[mL]=\frac {HR}{CO[L/min]}\times{1000[mL/L] }
\end{align}

1回拍出量係数(SVI:stroke volume index)

SVIはCIと同様に患者の体格を考慮した指標です。

\begin{align}
SVI[mL/m^2]= \frac {SV[mL]}{BSA[m^2]} or \frac {HR}{CI[L/min/m^2]}\times{1000[mL/L] }
\end{align}

体血管抵抗(SVR:systemic vascular resistance)

SVRは心臓の拍出に対する抵抗を表します。つまりは左心室に対する後負荷のことです。
CO、平均動脈圧(mean arterial pressure)、平均右心房圧(mRAP)、及び単位変換係数から求めます。

SVR:基準値

800~1200\([dyne\cdot{sec/cm^5}]\)

\begin{align}
SVR[dyne\cdot{sec/cm^5}]=\frac {CO}{(MAP-mRAP)\times{80}}
\end{align}

肺血管抵抗(PVR:pulmonary vascular resistance)

PVRは右心室に対する抵抗または後負荷を表します。平均肺動脈圧(mPAP)とPAWP、CO及び単位変換係数から求めます。

PVR:基準値

250\([dyne\cdot{sec/cm^5}]\)未満

\begin{align}
PVR[dyne\cdot{sec/cm^5}]=\frac {CO}{(mPAP-PAWP)\times{80}}
\end{align}

シャント率(Qp/Qs :肺血流量Qp/体血流量Qs)

Qp/Qsは【キューピー・キュウエス】と呼びます。
通常、シャントの無い場合はCO=体血流Qs=肺血流Qpと一致しています。しかしながら、シャントのある先天性心疾患では体血流と肺血流は一致しません。Qp/Qsは先天性心疾患の手術基準として用いられます。
Qp/QsはFick法の応用から求められます。

\begin{align}
Q_p/Q_S=\frac {動脈血酸素飽和度-混合静脈血酸素飽和度}{肺静脈血酸素飽和度-肺動脈酸素飽和度}
\end{align}

上記式から4カ所の酸素飽和度を測定すれば求められますが、実際にはoxymetry run施行時は病態に合わせて多数の場所から採取してQp/Qsを算出します。

以下は、oxymetry runに採取されうるポイントの略語一覧です。

※oxymetry run : 右心カテにおける各所酸素飽和度測定

中田充, 「心臓カテーテル検査における心内圧測定・酸素飽和度測定」, 全循環器撮影研究会 HP講座No.2 臨床1:
http://plaza.umin.ac.jp/zen-jun/%E5%85%A8%E5%BE%AA%E9%81%8E%E5%8E%BB/public_html/secret_file/HPkoza_No.2_pressure_saturation.pdf
  1. 上大静脈 上部(無名静脈結合部付近):high SVC
  2. 上大静脈 下部(右心房結合部付近):low SVC
  3. 右心房 上部:high RA
  4. 右心房 中部:mid RA
  5. 右心房 下部:low RA
  6. 右心室 流入部:RV inflow
  7. 右心室 心尖部:RV apex
  8. 右心室 流出部:RV outflow
  9. 下大静脈 上部:IVC high
  10. 下大静脈 下部:IVC low
  11. 主肺動脈:main PA
  12. 右肺動脈:right PA
  13. 左肺動脈:left PA
  14. 肺動脈楔入部:PAWP
  15. 左心室:LV
  16. 上行大動脈:acs.Ao(ascending.Aorta)
  17. 下行大動脈:dec.Ao(descending.Aorta)

右心カテーテルを終えて

いかがでしたか。この度は循環器を語る上で最早欠かせなくなった右心カテについて3部に渡ってお伝えしてきました。

本来はここにForrster分類も追加したかったのですが、尺といいますかボリュームの都合上、申し訳ありませんが別記事にさせていただきます。

「Forrster分類と心不全」についての記事はこちら

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この記事を書いた人

職歴
現大学病院勤務
取得資格
臨床工学技士(CE)、ITE 心血管インターベンション技師、ME1種検定試験

得意領域
カテーテル、アフェレシス、内視鏡、機器管理

大学病院での幅広い勤務実績をもとに、臨床工学技士業務全般執筆しております。
1児のパパでもあり、子育て情報も発信していけたらと思います。

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