ー国家試験対策特集ー

【心不全】ステージA〜Dと代償性・非代償性の違い

皆さん、循環器内科医や心臓血管外科医、集中治療医との会話で、「何か、知らない単語出てきたぞ」、「さっきの略語分からなかった・・・。」ということはありませんか?

会話はともかく、カルテを読んでも「これ、どういう意味?」と思いつつも放置していることはありませんか?

そして今の時代、どこの病院にも心不全患者で溢れていることでしょう。

今回は、心不全のステージ分類と関連用語を解説していきたいと思います。

Moegi

今回は、皆さんが苦戦する略語の登場は少ないかもしれません。
用語の定義や説明重視で進めていきます。

心不全に関わる記事はこちら↓
目次

心不全とは

心不全とは、

⼼臓の構造・機能的な異常により、うっ⾎⼼内圧上昇、および/あるいは⼼拍出量低下組織低灌流をきたし、呼吸困難、浮腫、倦怠感などの症状や運動耐容能低下を呈する症候群

と定義されています。

心不全患者は、どの病院やクリニック・・・どこにでもいますが、患者の症状や他の疾患との合併など病態は様々でもあることから循環器内科医のみでは対応しきれなくなってきています。

ステージ分類(ACC/AHA stage分類)

心不全の分類は多岐に渡りますが、その最も基本となるのがACC/AHA stage分類となります。

ACC/AHA stage分類では、心不全は4つのステージに分類されます

ACC/AHA stage分類
  • ステージA ・・・ 心不全リスク
  • ステージB ・・・ 前心不全
  • ステージC ・・・ 症候性心不全
  • ステージD ・・・ 治療抵抗性心不全

【ACC】:米国心臓病学会

【AHA】:米国心臓協会

心不全の治療を考えるにあたり、⼼不全の早期発⾒、適切な治療介⼊をしていく上で、⼼不全病期の進⾏の全体を軌跡として捉えることが重要となります。

下記図が心不全のトラジェクトリーカーブとなります。

心不全ステージのトラジェクトリーカーブ, 心不全診療ガイドライン, p20より

ステージA  心不全リスク(At Risk)

心不全ステージAは、

⼼不全の危険因⼦を有しているものの症状や構造的・機能的異常を伴う⼼疾患⼼筋障害のバイオマーカーの⾼値がない状態

となっています。

⼼不全の危険因⼦は以下の通りです。

⼼不全の危険因⼦
  • 高血圧
  • 動脈硬化性疾患
  • 糖尿病
  • 慢性腎臓病
  • 肥満
  • 心筋症の遺伝子変異
  • 心筋症の家族歴
  • 心毒性物質への曝露  ・・・etc

ステージB 前心不全(Pre HF)

心不全ステージBは、

現在も過去にも⼼不全の症状や徴候がないが、下記の1つを有する

となっていますので条件を見てみましょう。

心不全ステージB条件
  •  構造的/機能的⼼疾患
  • 安静時および負荷時の⼼内圧上昇の所⾒
  • 危険因⼦があり、他の原因のない
    • ナトリウム利尿ペプチドの上昇
           または
    • ⼼筋トロポニンの持続的上昇

上記3つ目の「危険因⼦があり、他の原因のないナトリウム利尿ペプチドの上昇または⼼筋トロポニンの持続的上昇」について深掘りしていきます。

ステージAの心不全危険因子を有しており、ACS(急性冠症候群)CKD肺動脈塞栓症心筋炎がない状態

かつ

BNP/NT-proBNP または 心筋トロポニン の持続的高値がある状態

ということがステージBの条件となります。

Moegi

今回、詳細な説明はしませんが、ステージBの目安となるデータを掲載しておきます。

心不全ステージBにおける構造的心疾患および左室内圧上昇の目安
【形態】
  • 左房容積係数(LAVI) > 34 [mL/m2]
  • 左室⼼筋重量係数(LVMI) > 115/95[g/m2](男性/⼥性)
  • 相対的壁厚(RWT) > 0.42
  • 左室壁厚  ≧ 12[mm]
【左室収縮能】
  • 左室駆出率(EF) <  50[%]
  • Global longitudinal strain < 16[%]
【左室拡張能】
  • E /e’ > 14
  • 中隔 e’ < 7[ cm/s]
  • 側壁 e’ < 10 [cm/s]
  • 三尖弁逆流速度 > 2.8 [m/s]
  • 推定収縮期肺動脈圧 > 35 [mmHg]
【バイオマーカー】
  • BNP ≧ 35 [pg/mL]
  • NT -proBNP ≧ 125 [pg/mL]

ステージC 症候性心不全(HF)

心不全ステージCは、

構造的および/または機能的な⼼臓の異常を原因とする症状や徴候を呈し、ナトリウム利尿ペプチド⾼値あるいは肺または全⾝性のうっ⾎の客観的証拠が、現在または過去に認められる。

となっています。

ステージCはさらに4分類されます。

ステージCの分類
【新規発症⼼不全(de novo HF)】

⼼不全の既往がなく、新規に診断された⼼不全

【⼼不全症状改善】

症状/徴候の改善した⼼不全

  • 構造的/機能的異常が持続し,過去に症状のあったステージC⼼不全
  • 過去の構造的/機能的⼼疾患が改善し寛解した⼼不全
【⼼不全症状持続 】

症状/徴候/運動耐容能の制限が持続する⼼不全

【⼼不全増悪 ( WHF )】

通常の治療にもかかわらず、悪化をきたす⼀連の軌跡

  • 症状/徴候/運動耐容能の悪化を認める⼼不全
  • 症状悪化の有無にかかわらず臨床的に意義のある他覚所⾒の悪化を認める

ステージD 治療抵抗性心不全(Advanced HF)

心不全ステージDは、

有効性が確⽴しているすべての薬物治療・⾮薬物治療について治療された、ないしは治療が考慮されたにもかかわらず、NYHA ⼼機能分類 III 度より改善せず、⽇常⽣活に⽀障をきたす重度の⼼不全症状を有する状態。

となっています。

⾮代償性⼼不全と代償性⼼不全

本記事のポイントとなる項となります。

心不全の概念図を下に示します。

本記事で覚えて帰って欲しい単語が「⾮代償性⼼不全」となります。

心不全には、症状を認める心不全と症状を認めない心不全がありますが、何かしらの検査で偶然見つかった心不全を除けば、基本的には症状を発症して受診することで心不全が診断されると思います。

症状を発症した心不全をまとめて⾮代償性⼼不全と分類し、後述しますが、その中でも緊急性が高いものが急性⾮代償性⼼不全となります。

また、⾮代償性⼼不全は、新規発症型(de novo HF)心不全増悪型(WHF)に分類されます。

心不全概念図, 心不全診療ガイドライン, p22より
Moegi

⾮代償性⼼不全(DHF)/代償性⼼不全(CHF)ですが、”代償性”という少々聞きなれない単語があるので覚えにくいと思います。
集中治療に関わる方であれば、酸塩基平衡で「代償されている」・・・などと使用しているのでイメージできるかと思います。

非代償性心不全(DHF:decompensated HF)

⾮代償性⼼不全(DHF)とは、

症状・徴候や⾎⾏動態の悪化をきたし、GDMTの導⼊および最適化に加えて、治療強化が必要な状態

と定義されています。

【GDMT ( guideline-directed medical therapy )】:診療ガイドラインに基づいた標準治療

難しく考えずに、心不全症状を認め、治療が必要な状態の心不全ということです。

”decompensated”・・・”デコる”はここから来ています。

代償性⼼不全 ( CHF )

代償性⼼不全(CHF)

⼼不全の基礎疾患を有し⼼機能低下が存在するが、治療により⾎⾏動態と症状が安定し急性増悪をきたしていない状態

とされますが、代償性⼼不全は明確な定義や診断基準がないので、⾮代償性⼼不全とは相反する意味で使用されます

急性非代償性心不全(ADHF)

急性非代償性心不全(ADHF)は⾮代償性⼼不全(DHF)の中でも

緊急の治療強化対応、特に⽣命の危機を回避する治療(救命的な治療)を必要とするもの

と定義されます。

要は急性心不全のことですが、厳密には急性心不全にも種類があります。
次回に急性心不全と慢性心不全の説明をします。

非代償期/代償期

ここで、心不全の非代償期代償期について確認しておきます。

非代償期

代償機構が限界を超え、⼼拍出量低下や肺うっ⾎、末梢浮腫などの症状が顕著になり、安静時でも苦しい状態

代償期

⼼機能は低下しているが、交感神経活性化や⼼拍数増加、前負荷増加などの代償機構によって症状は軽く、⽇常⽣活は⽐較的可能な状態

さいごに

以上で心不全のステージ分類と関連用語の説明を終わります。

まずはジャブ程度ですが、次回、次々回は急性/慢性心不全、左心不全/右心不全と展開していく予定です。

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この記事を書いた人

職歴
現大学病院勤務
取得資格
臨床工学技士(CE)、消化器内視鏡技師、ITE 心血管インターベンション技師、ME1種検定試験

得意領域
カテーテル、アフェレシス、内視鏡、機器管理

大学病院での幅広い勤務実績をもとに、臨床工学技士業務全般執筆しております。
1児のパパでもあり、子育て情報も発信していけたらと思います。

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