本記事では、カテーテル業務中に先生が話されている略語、英語など、よく耳にするものをピックアップして解説していきます。
SNSにて「カテーテルと内視鏡業務での略語」ついて触れましたがそれなりの方の目に届いたようです。
カテーテル検査や治療の名称に関する略語に関しては「カテーテル業務について ―頻出の略語と概略―」をご参照ください。
カテ業務は略語や英語が多い!!
カテ業務で大変なことと言えば、覚えるデバイスの種類が多いこと、そして覚える略語や用語が多いことが挙げられます。
しかも英単語のこともあれば、英単語そのものを略されていることがあるなど多彩です。
余程ゆとりのある症例でない限り、先生は手技に集中されているため、なかなかその場で質問することも難しいことが多いです。
一緒にカテ担当している先輩に質問しようにも、聞き慣れない単語のために正確に聞き取れなくてメモができず、質問することが困難で、自分で調べることになることも・・・。
でも結局、検索しても自分の欲しい検索結果が出てこないことも度々あります。
そもそも英語のサイトしかヒットしないことも・・・。
しかし、循環器の先生は略語、英語大好きなため、会話やカルテの中でもバンバン英語が組み込まれます。
これらについて行けるとカテ業務が楽しくなるのは間違いありません。
カテ業務を始めた方、経験が浅い方を主な対象としますので、カテ業務を担当していない方には役に立たないかもしれませんがご了承ください。
まずは解剖など基本的な用語から徐々に専門的な用語へ記事ごとにレベルアップしますね。
心臓
まずは循環器の勉強において、基本である解剖の略語から確認しましょう。
心臓の解剖:看護roo! フリー素材
https://www.kango-roo.com/ki/image_541/
心房・心室
- 心室:ventricle(ヴェントゥリクル) 派生:ventricular(ヴェントリキュラ)
- 心房:atrium(エイトゥリアム) 派生:atrial(エイトゥリアル)
- 右心房 RA:right atrium
- 右心室 RV:right ventricle
- 左心房 LA:left atrium
- 左心室 LV:left Ventricle
赤字で強調されている文字でやり取りされると考えてください。
心臓弁
心臓弁:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス
- 大動脈弁 aortic valve(アオルティック、エイオーティック) 【通称:A弁】
- 僧帽弁 mitral valve(マイトゥラル) 【通称:M弁】
- 三尖弁 ricuspid valve(トゥライカスピド) 【通称:T弁】
- 肺動脈弁 pulmonary valve(パルモナリ) 【通称:P弁】
- valve:バルブ
会話上は単純に「A弁(エー弁)」、「M弁(エム弁)」…という感じに使用します。
心臓周囲の血管
- 上大静脈 SVC:superior vena cava(スーペアリア ヴィーナ ケイヴァ)
- 下大静脈 IVC:inferior vena cava(インフィアリア ヴィーナ ケイヴァ )
- 肺動脈 PA:pulmonary artery
- 肺静脈 PV:pulmonary vein
- 冠状静脈洞 CS:coronary sinus
- artery:アーテリ
- vein:ヴェイン
- sinus:サイナス
冠動脈
AHA分類の画像を掲載させていただきますが、本記事ではカテ中に発言するcoronaryを主に扱います。
左:←冠動脈:看護roo!DL用イラスト、右:→冠動脈分類「循環器内科.COM」https://xn--v6qx2jexjd1vw1f.com/cag/
- 冠動脈 coronary artery 【通称:coronary】
- 右冠動脈 RCA:right coronary artery
- 左冠動脈 LCA:right coronary artery
- 左冠動脈主幹部 LMT:left main trunk 【通称:LM】
- 左前下行枝 LAD:left Anterior descending branch
- 左回旋枝 LCx:left circumflex branch 【通称:Cx、サーカム】
- trunk:トゥランク
- circumflex:サーカムフレクス
上記が本幹に関する略語です。以下は良く先生がカテ中に発言される血管です。
- 円錐枝 CB:conus branch 【通称:コーナス】
- 右室枝 RVB:right ventricular branch 【通称:RVブランチ】
- 房室結節枝 AVN:atrioventricular node branch(#4AV)
- 後下行枝 PD:posterior descending branch(#4PD)
- 後側壁枝 PL:posterolateral branch(#4PL)
- 対角枝 D:diagonal branch 【通称:ダイアゴ】
- 中隔枝 SB:septal branch 【通称:セプタル】
- 鈍角枝 OM:obtuse marginal branch
- posterior:ポステアリア
- posterolateral:ポステロラテラル
- diagonal:ダイアゴナル
- obtuse marginal:オブチュース マージナル
coronaryのみの記事では、viewによって入れ替わるLADとLCxの見分け方などを執筆できたらなと考えています。
の中には、参考書にもなかなか掲載されておらず、AHA分類でも分類されていない血管があります。
「高位側壁枝(HL:high lateral branch)」といい、20%の方にこのHLが存在していると言われています。
このHLは通称で「ハイラテ」と呼んでいます。
走行箇所としては、LADとLCxの間から走行しています。
つまりは、LMTから3本分岐して観察されます。
少しでもLAD側から分岐すればD1に、LCx側から分岐すればOMと判断されます。
かなり供給領域が広そうで、HLに狭窄あればPCIすることも、CABGする場合もあります。
HL:【解剖・グラフトの理解】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助②, オペナースねず子
大動脈
血管の略語で最初に手を付けがちなのが大動脈系の英略語ですね。
大動脈の分類
大動脈分類:日本医科大学千葉北総病院心臓血管外科HP
http://www.nmschiba-cvs.com/about/special.html
- 上行大動脈 Asc.Ao:ascending aorta 【通称:アセンディング】
- 弓部大動脈 AA:arch of aorta, aortic arch 【通称:アーチ】
- 下行大動脈 Des.Ao:descending aorta 【通称:ディセンディング】
- 胸部大動脈 thoracic aorta
- 腹部大動脈 abdominal aorta
- 大動脈終末部 terminal aorta 【通称:ターミナル】
- ascending:アセンディング
- descending:ディセンディング
- thoracic:ソラスィク
- abdominal:アブドミナル
- terminal:ターミナル
弓部大動脈分枝
弓部からの3分枝は必ず押さえます。
弓部大動脈分枝:グレイの解剖学
- 腕頭動脈 BCA:brachiocephalic artery
- 総頸動脈 CCA:common carotid artery 【通称:コモン】
- 鎖骨下動脈 SCA:subclavian artery 【通称:サブクラ】
- brachiocephalic:ブレイキアスィファリク
- common carotid:コモン カラティド
- subclavian:サブクレイヴィアン
3分枝だと、BCA、Lt.CCA、Lt.SCAですね。
腹部大動脈
腹部大動脈の分岐は、私達医療従事者が覚えるのに苦労する解剖の一つではないでしょうか。
記憶するには苦労するのに、重要な血管が多いのが困りものです。
しかし、必ず押さえたい腹部大動脈の分岐がありますので、ポイントだけ覚えましょう。
腹部大動脈分岐:視覚解剖学Visual Anatomyの改変
https://visual-anatomy-data.net/circulatory-system/artery/detail-abdominal-aorta.html
分枝はいくつもありますがまずは以下4つの血管を覚えます。
- 腹腔動脈 CA:celiac artery, celiac trunk 【通称:セリアック】
- 腎動脈 RA:renal artery 【通称:リーナル】
- 上腸間膜動脈 SMA:superior mesenteric artery
- 下腸間膜動脈 IMA:inferior mesenteric artery
- celiac:スィリアク
- mesenteric:メズンテリク
ついでに、どの椎体レベルで分枝しているか覚えましょう。
腹部大動脈分岐の椎体レベル:視覚解剖学Visual Anatomyの改変
https://visual-anatomy-data.net/circulatory-system/artery/detail-abdominal-aorta.html
透視では石灰化やステントが無い限りは血管は映りません。
そのため、胸椎や腰椎を目印にしてカテーテルやガイドワイヤを挿入します。
- Ceriac → Th12(第12胸椎)から分枝
- SMA, RA → L1(第1腰椎)から分枝
- IMA → L3(第3腰椎)から分枝
各種臓器へ分岐している腹部の動脈ですが、上記以外に重要な血管があります。
冠動脈バイパス術(CABG:Coronary artery bypass graft)では、内胸動脈(ITA:internal thoracic artery)、大伏在静脈グラフト(SVG:Saphenous vein graft)が主に使用されますが、右胃大網動脈(GEA:gastroepiploic artery)も使用されていることもあります。
頭の片隅にでも入れておいても良いかもしれません。
腹部の分岐血管:大谷 修, 堀尾 嘉幸「カラー図解 人体の正常構造と機能II 循環器」, p52
参考にした書物
心臓や血管に関する解剖が図表で分かりやすく解説されています。
また、心電図の起源や心収縮の原理、心臓の発生なども解説されています。
さいごに
以上で、心臓や血管関連の英語/略語や呼称の記事でした。
手技中の略語も大事ですが、まずは基本の解剖についての略語から進めていきたいと思います。
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