本記事では「IMPELLAによる治療目標と効果」を解説したいと思います。
IMPELLAが循環動態にどのように影響を及ぼすのかを解説していきたいと思います。
IMPELLAの簡易的な説明についてはこちらをご参照ください。
基本的にはABIOMED社提供の「IMPELLAテキスト」を解りやすく説明するといった内容とし、あとはMoegi自身の経験を踏まえた内容にまとめます。
IMPELLAガイドブック:ABIOMED社提供
IMPELLAの治療目標
IMPELLAはカテーテルを用いて導入するので、低侵襲かつ迅速に挿入が可能であるため、心原性ショック発症から心拍出量が低下し、それにより臓器灌流の低下から臓器障害(多臓器不全:MOF)へ進展するといった負のスパイラルに早期介入が可能です。
また、IMPELLAは循環補助をするとともに左室補助も同時に担うため、循環動態の安定化を図ると共に心負荷軽減と心筋保護による心機能回復を期待できます。
IMPELLAの治療目標:ABIOMED社提供
IMPELLAの循環動態への影響
IMPELLAはインペラの回転速度によって補助流量を調整しますが、心周期に関わらず定常流で流量補助をします。そのため、単純に血流量(Flow)が増加し、平均動脈圧(MAP:mean arterial pressure)の上昇が期待できます。
同時に左室からポンプから脱血を行って上行大動脈へ送血していることから、左室拡張末期容量(LVEDV)及び左室拡張末期圧(LVEDP)を低下させ、その結果心負荷を軽減する効果を期待できます。
IMPELLAの機械的補助デバイスとしてユニークな点として、循環補助と左室補助を迅速に、低侵襲に導入できるところですね。
- Flow↑
- MAP↑
- LVEDV↓
- LVEDP↓
IMPELLAの影響:ABIOMED社提供
IMPELLA補助で期待される効果
上記でIMPELLAが循環動態への影響について述べましたが、さらに深く掘り下げていきましょう。
末梢臓器還流改善
IMPELLAの流量補助により、FlowおよびMAPが上昇することによって心拍出力(CPO:Cardiac Power Output)が改善されます。CPO改善に伴い、末梢臓器灌流が改善されます。
IMPELLAではこのCPOが重要な指標となります。
【CPO:Cardiac Power Output】
「心拍出力」と言われており、心拍出量(CO)と平均動脈血圧(MAP)より算出します。
CPO[W] = CO × MAP / 451
単位[W]を見ていただければお分かりとは思いますが、CPOは心臓のポンプ機能を示す指標となっています。
特に左室CPOの低下に関しては心不全の予後不良因子として知られていますが、右室CPOなどはまだまだ明らかになっていない部分もあるようです。
O2供給↑
LVEDP及びLVEDVの低下により、心筋壁張力が低下し、心筋微小血管抵抗が低下することより、心筋灌流が上昇することでO2供給量が増加します。
また別で、LVEDP及びLVEDVの低下により、左房圧(LAP)が低下し、肺鬱血が改善することによってもO2供給量が増加します。
O2需要↓
同じくLVEDP及びLVEDVの低下により、前負荷を軽減することができ、圧容積面積(PVA:pressure vplume area)を減少させることが可能ですので、心筋仕事量を軽減することができます。
心筋仕事量が軽減されるとO2需要が減少します。
心筋へのO2供給↑、O2需要↓により、心筋回復のunloadingが可能というわけですね。
PVAに関して、あのPV loopの内容となります。
今回は詳細な解説はしませんが、後々必要となる考えのため後々記事にしたいと考えます。
(Guyton心筋能曲線とか難しいんですよね・・・。)
IMPELLA補助で期待される効果:ABIOMED社提供
シミュレータによる例示
以下に示す図は、「急性心筋梗塞(AMI)に続発する心原性ショック」を模したシミュレーション結果のようです。想定している所見も一緒に示しますね。
身体所見:皮膚蒼白、冷汗、頻脈
血行動態:CO 3.3[L/min]、PCWP 22[mmHg]、MAP 51[mmHg]、LVEDP 28[mmHg]
冠動脈造影(CAG):LMT 75%狭窄
IMPELLAのシミュレーション:ABIOMED社提供
①まず、シミュレーション結果の通り、AMI発症に伴い心原性ショックへ進行したため、MAPが低下し、LVEDPが上昇しています。
②そしてIMPELLA開始と共に循環補助によりMAPが上昇しています。
③左室補助により経時的にLVEDPが漸減しているのが確認できます。
さいごに
補助循環用ポンプカテーテル マスターガイド - Impella A to Z
IMPELLAに関して専門的に書かれている唯一といっていい参考書です。
当然私も所持しています。
以上にて、IMPELLAの補助循環による治療目標でした。
この記事でIMPELLAが何のために使用されているかを理解していただければと思います。
次回は、カテーテルスペックのお話です。
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