Twitterでプチバズリした透析初心者?向けの問題
Twitterでプチバズリした透析初心者?向けの問題を記事化してしました。
除水量や静脈圧や液圧などが表示されたこの透析コンソールの画面だけであなたはこの問題をどう考えますか。
ツイート後LINEにて私にも同様の質問が来ました。
これみてど思う?次の透析どうしたい?
何でこんな静脈圧低いの、圧低すぎて透析液圧もマイナスに触れちゃってるし
とりあえず直感では、静脈圧どうなってるのってって感じ?
脱血良好すぎてそうなってるw
送脱血良好、回路折れ、閉塞なしって条件下では?
(え、そうは言われてもこのQBでこのV圧なんだこれ・・・)
・・・あとは除水設定がどうなのか位だけど、3Lなんて自分ら(維持透析施設)では当たり前やからな。急性期だと多いとは感じるけどな。
なるほどな、やっぱ情報少ないか
これで膜面積1.1㎡なら?
あーまぁそりゃ除水しすぎやな
流石に条件少なすぎたか
(透析液圧に気づいて欲しかったけど)
流石に1.1㎡の膜でこんな無茶な除水かけること、維持施設ではまずあり得んからな・・・自分も急性期と慢性期の両方の透析経験したから分かるけど、急性期ならではやろ
(・・・これブログの記事にできそうだな)
静脈圧?透析液圧? 波乱を呼んだ問題の解説
という訳で膜面積さえ分れば、問題意図がはっきりしたのですが色々条件隠されてたのでちょっと混乱しましたね。
とはいえ急性期がっつりやってないと多分分からないこの問題は、多分初心者向けじゃないですね(苦笑)
今回の出題の意図は透析液圧が陰圧になってる点に注目して欲しいものでした。
あえて提示していませんでしたが、膜面積1.1㎡でこの除水量では除水ポンプの方が勝ってしまい、膜に負担がかかっている状態です。
臨床上これがどこまで影響するかは未知数ですが、できれば血流量を上げるか膜面積アップを考慮してほしいなという問題でした。
この機種では表示されていませんが、TMPを参考に総合的に判断するのが良いかと思います。
透析膜と除水量があってない? 問題が起きた背景
一連のLINEのやりとり後、これ急性期あるあるだなと経緯がなんとなく分かったので私の方から補足ツイートしておきました。
維持透析期で中二日でも3kgも除水する方は体重の5%を目安としても60kg前後ぐらいの体格の人ですからね。それなら検査データにもよりますが恐らく1.8㎡〜ぐらいの膜を使っているはずですから、3kg除水したところでなんの問題もないはずです。
なのに1.1㎡という小さな膜を使っている、ということはまず導入期で溢水であろうという推測です。
透析導入期なら不均衡症候群があるのであまりQBも上げたくないですよね。
今回のケースで静脈圧が低い理由
それにしてもMoegiはQB180mL/minで静脈圧が5mmHgしかない件に関し「脱血良好すぎてそうなってるw」としか言っていませんでしたが、私はやはり腑に落ちませんでした。
普通QB180mL/minで回してたら、どれだけ送脱血いいシャントでも静脈圧60mmHgぐらいはないとおかしいんじゃね・・・?
色々Twitterのリプライを読んでいく中で、気になるリプがありました
パワートリアライシスってなんだと思って調べて出てきたのがこれです
あ、緊急時バスキュラアクセス(ブラッドアクセス)用留置カテーテル使ってたのね。
大学病院時代はAVF(自己血管内シャント)を作る前に、溢水等で緊急透析導入というケースをよく目にしていましたが、その際使われるのがこういった緊急時バスキュラアクセス用留置カテーテルです。
確かにAVFのような腕に16Gや17G針で穿刺するのに比べて、右内頸静脈等に13Fr(※)なんて極太カテーテル通してるのならそれは静脈圧が低くても当然ですね。
(右内頸静脈のほかには大腿静脈や右内頸静脈を使いますが稀です)
(※このパワートリアライシスは13Frです。通常12Frが多いです。)
私はもはや透析クリニックの方が職歴が長くなってしまって、見ることも聞くことも無くなってしまった代物ですが、この辺を説明もなしに当たり前に使っているあたり、急性期と慢性期の透析の違いを感じますねぇ・・・
うちは透析の導入はできないのはもちろん、自施設でVAIVT(PTA)もできない透析施設なので万が一シャント閉塞してしまったら、シャント再建なり再疎通などの後のことは基幹病院に任せるほかありません。
今回の一件はその辺の知識や想像がだんだん出来なくなっているのを痛感させられました。
Twitterで寄せられた回答
問題意図を汲みにくい出題だったため、このツイートは様々な憶測を呼び、表示回数が1.6万回にもわたるプチバズツイートとなりました。
リプを見ていると、私と同様あまりに低い静脈圧に着眼された方が多かった印象です。
今回は寄せられた回答の中でなるほどなと思ったものをいくつか紹介したいと思います。
これらは先に示したような透析用カテで送脱血良好、回路折れ、閉塞なし、膜面積1.1㎡の開示がない段階での回答です。
透析中静脈圧が低い理由について-原因と注意点-
脱血不良なのでは
十分あり得ますね。ですがここまで静脈圧低いとほぼ取れていない状態でしょうから、先にAの気泡センサーや脱血不良アラーム、目視確認で気づけると思います。
膜とVチャンバ間の回路折れでは
個人的にここが折れる印象はあまりないですが、折れていれば確かに静脈圧は下がります。
動脈圧を監視していたら気づきやすいでしょうが、最近では動脈圧ラインのない回路も多いので気をつけたいですね。
血液ポンプの回し忘れでは
十分あり得ますね。この事例だと3分も血液ポンプ回ってなかったら回路内凝固で後が大変でしょうね・・・。
勿論血液ポンプの回し忘れの警報は出るはずですが、誰かが消音押して処置せず放置されたらと思うと身が震えます。
圧トランスデューサ保護フィルタが濡れているのでは
これは素直になるほどなと思いました。最近では自動プライミングが主流ですが、V側チャンバにある薬剤注入部のクランプの締め忘れ等で液面が上がったりすると、静脈圧ラインを逆流して圧トランスデューサ保護フィルタが濡れてしまってモニタリングできなくなりますからね。
個人的には臨床ではこれが一番実例多い気がします。
静脈圧ラインが閉じられていてモニタリングされていないのでは
先に述べた圧フィルターが濡れているのと同じでV圧が感知できていないパターンですね。
その他に考えられる事例
抜針事故による静脈圧の低下
臨床上これは絶対にダメなやつです
脱血側は動脈側の気泡検知器でまだ分かりやすいのですが、静脈側の抜針事故は静脈圧下限警報ぐらいでしか機械では感知できません。
(ブリーディングセンサーなどの特別な対策を除く)
静脈圧警報がなったら針先を見る!
徹底しておきたいですね。
他にも何か思いつくことあればコメント等お待ちしております。参考になりそうであればここに追記していきたいと思います。
さいごに
例えば1.1㎡の膜に対し「3Lは除水しすぎやな」と即答したり、Twitterで寄せられたような数々の回答にしかり、
たったこれだけの透析コンソール画面の画像だけでこれだけの想像ができる。
そう考えるとほんと透析も奥が深いなと思いませんか。
それでも私たちのような臨床工学技士から見た透析の世界なんて、先鋭化はしていますが狭い視点しか持ち得ないとおもっています。例えばですが・・・
うーんまいったな、溢水で緊急透析導入したはいいけど、胸水も下肢もパンパンに腫れてるし、とりあえず除水は進めないといけないなぁ
でも尿毒素も溜まってるからとにかくECUMよりHD回したいんだよね
だけど導入期だから条件は緩徐にしないといけないし
・・・とりあえず膜とQBはこの辺でいいかな
CKD-MBDもボロボロだから投薬考えないとだし
透析導入時の諸々の検査オーダーも出さないといけないしなぁ
そうだ、なんかこの前のECGの波形違和感あったから除水進んだら心エコーとCT撮り直してもらって…
うちは急性期だしひと段落したら維持期の透析施設も決めないとだからな
もし心疾患の既往あったら循環器の診療がある病院がいいだろうし、なかったら近場の透析クリニックでもいいだろうし・・・
※この辺は筆者の経験則に基づいた勝手な想像です。
なんて一コマの中のシーンかもしれませんね。
そこで違和感をもったCEが
あのすいません、この透析条件なんですが除水が多すぎて液圧陰圧かかってしまっていて。
できれば膜面積をもっと大きくするか、QBをもっとあげて欲しいのですが・・・
・・・
・・・・・・・。
なんてことに・・・。
(こんな想像、考えるだけで胃が痛い)
全体の治療計画の中からしたらほんとに些細なことかもしれません。
そして正直この問題に正解もなにもないです。
ですがチーム医療を担う一翼として、気になったことを医師に気軽に相談できる、そういった関係性を普段から築いていきたいですね。
人工透析おすすめ・関連書籍
こうした気づきを得るためにもやはりinputは必要不可欠です。
今回Moegiがこの記事を読んでおすすめの書籍を紹介してくれたので公開しています。
ER・ICU診療を深めるリアル血液浄化 シリーズ
ER・ICUで血液浄化を行う上で、これほど分かりやすいテキストは正直他にないです。理屈やその分野の歴史・背景なども詳細に書かれているため、順序立てて理解しやすいと思います。
編集余談
透析関連の記事は透析技術認定士持ちの私が主に担当する予定ですが、記事化の糸口を見つけられずにいたので、今回のツイートはちょうど良い題材でした。
こういった問題みたいな題材を織り交ぜていくのもいいかもしれませんね。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
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