【特集】新学期に向けた「学生にオススメの参考書22選」

【臨床工学技士国試直前対策】RAA系・ACE阻害薬・陰性荷電膜

タイトルの通りですが、いよいよ来月に迫った臨床工学技士国家試験の直前対策の記事となります。

内容としては当サイトでこれまで扱った、あるいはこれから扱うであろう血液浄化の知識の中で、特に毎年3月に行われる臨床工学技士国家試験に頻出の内容について、基礎的な内容から難しい内容までざっと復習しようといったものがテーマです。

編集部

私やMoegiが現役時代よく目にしていた問題についての関連知識をまとめていきます。内容的には「生体機能代行装置学」と「臨床医学総論」が混ざった感じでしょうか。

この記事は普段の記事と違い、解説というよりはまとめノート風ポイントを絞って解説しています。

またキーワードが出てきたら、そのキーワードに沿ったキーワードに飛ぶみたいな構成にしてあります。
どれも国試には出る内容なので、体系的に一挙に網羅したいという方向けです。

編集部

国試対策の体裁を取りましたが、ACE阻害薬と陰性荷電膜の話とか、現役の方にも普通に復習になる内容になったかも知れません。。。

目次

レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系(RAA系)

RA・RAA系の作用機序およびキーワード

STEP
血圧低下・循環血漿量減少

なんらかの要因(薬剤性・生理的要因)での血圧の低下が作用機序となります。
血液透析患者の場合、透析中の過度の除水などもリスク因子として挙げられます。

STEP
腎臓がレニンを分泌
レニンの分泌機構について
  • 輸入細動脈の灌流圧低下
  • 遠位尿細管緻密班領域の尿流量減少(Cl 濃度低下)
  • 交感神経活性化

輸入細動脈の傍糸球体細胞によるレニン分泌が亢進

STEP
アンジオテンシノゲンとレニンが反応、アンジオテンシンⅠとなる
アンギオテンシノーゲンについて

アンジオテンシノーゲンは主に肝臓でつくられますが、脂肪細胞でもつくられており、内臓脂肪の増加に伴ってその産生・分泌が高まり、血中濃度が増加します。

アンジオテンシノーゲン e-ヘルスネット
STEP
アンジオテンシンⅠが肺血管でACEの作用を受けアンジオテンシンⅡとなる
ACEについて
ACE:アンジオテンシン変換酵素

ACEは血管内皮細胞(肺血管ほか)で合成される

※この記事にて後述しています

アンジオテンシンⅡについて

アンジオテンシンⅡは最終的に血圧上昇と循環血漿量増加を引き起こします

アンジオテンシンⅡは強力な末梢血管収縮作用をもつほか、副腎皮質でつくられるアルドステロンの分泌を促します

アンジオテンシノーゲン e-ヘルスネット
作用箇所効果
全身の血管全身の血管を収縮させる
脳(視床下部下垂体後葉からのバソプレシン分泌を促進する
口渇を増強して飲水行動をとらせる
副腎皮質アルドステロン分泌を促進
腎臓ー近位尿細管ーNaと水の再吸収を促進
腎臓ー輸出細動脈ー輸出細動脈を収縮させGFRを正常値に保つ
参考文献:病気がみえる vol.8 腎・泌尿器

表に示した通り、アンジオテンシンⅡの作用は多彩です。

上記の作用のうち、全身の血管を収縮させる作用は即効性がありますが、その他の作用は遅効性です。

特に次に示す副腎皮質からアルドステロンが分泌され腎臓で作用するまでには数時間以上を要します。

ここまでのレニン分泌からアンジオテンシンⅡ分泌に至る過程や、アンジオテンシンⅡの作用をレニン・アンジオテンシン(RA)系と呼びます

STEP
アンジオテンシンⅡが副腎皮質に作用し、アルドステロンを分泌する
アルドステロンについて
アルドステロンとは

副腎皮質から合成・分泌されるステロイドホルモン

アルドステロンの合成・分泌について
RAA系

RA系によって産生されたアンジオテンシンⅡの作用により亢進

非RAA系

血漿カリウム濃度の上昇により亢進

アルドステロンの作用

上皮型Na +チャネル(ENaC)を増加させ、ナトリウム再吸収と二次的な水の再吸収を促進

レニン・アンジオテンシン(RA)系からアルドステロンが腎集合管に作用するまでの一連の過程をレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系と呼びます。

ACE(アンジオテンシン変換酵素)・ACE阻害薬

ACEについて

ACEは血管内皮細胞(肺血管ほか)で合成される

先に述べた通り、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)系においてアンギオテンシンⅠをⅡに変換する際に必要な酵素である

またカリクレインーキニン(KX)系においてブラジキニンを分解する

ブラジキニンについて

ブラジキニン血管拡張作用により降圧をもたらす

ACE(アンジオテンシン変換酵素)は総じて血圧を上昇させる効果を持つ

編集部

RAA系はともかくKX系は踏み込んだ内容なのであまり出ないかも知れませんが、後述の理由からブラジキニンは覚えておきましょう。

ACE阻害薬について

ACEを阻害することにより、RAA系が亢進しなくなる
血圧の上昇を抑えることができる

また同時にブラジキニンの分解を抑制する

血圧の上昇を抑えることができる

ACE阻害薬の適応症は「高血圧」と「心不全」である

陰性荷電膜との関係

積層型ダイアライザでお馴染みのPAN膜強い陰性荷電を持つため、ACE阻害薬との併用は禁忌である。

陰性荷電膜について

陰性荷電膜の中でも
・維持透析に使用される積層型膜をPAN膜
・CHDF等の急性血液浄化療法に使用されるSepXiris(セプザイリス)のことをAN69ST膜
と当サイトでは表記することとします。

※現状PAN膜(旭化成)は終売し、AN69膜(バクスター社:H12へモダイアライザ)が使用されています。
しかし便宜上、教科書用語としての使用頻度の高いと思われるPAN膜で話を進めます。

積層型ダイアライザの特徴

ポリアクリロニトリル(PAN)膜は陰性荷電が強いことが特徴である。

陰性荷電の効能について

膜の陰性荷電によって炎症性サイトカインの吸着性能をもつ

サイトカインについて

分子量が2万程度と大きいため、通常のHD・OHDF等では除去が難しいとされる(条件による)。

サイトカイン(やミオグロビン)などの中・大分子量領域がターゲット → CHDF or CHF

が選択されることが多い(AN69ST膜)

特定積層型であるPAN膜維持透析下でサイトカインを吸着除去する有用な手段である

禁忌事項

編集部

繰り返しになりますが何度も言っておきます

陰性荷電を持つ膜と、ACE阻害薬との併用は禁忌である。

陰性荷電膜とACE/ACE阻害薬・ブラジキニンの関係について

先ほどまでに述べたことの復習となりますが、まとめるとこうです。

  • 陰性荷電膜と血液が接触することで、先述のカリクレインーキニン系によるブラジキニン産生が起きる
  • 先述の通り本来であればACEがブラジキニンを分解する
  • ACE阻害薬はブラジキニン分解を抑制してしまう
  • 血管内にブラジキニンが増加、ブラジキニンの強力な血管拡張作用でショック状態に陥る

国試を問わず、臨床に出てからも必須の知識ですので、押さえておきましょう。

陰性荷電膜とACE阻害薬のアクシデント事例

PMDAでも数々のアクシデント事例の報告があります。

記事執筆時点の2024年2月に最新の報告がありましたので、周知しておきます。

一般的名称販売名製造販売業者
積層型透析器H12ヘモダイアライザーバクスター株式会社
選択式血漿成分吸着器イムソーバ旭化成メディカル株式会社
イムソーバTR
吸着型血漿浄化器セレソーブ株式会社カネカ
リポソーバー(LA-S)
リポソーバーLA-15
吸着型血液浄化器レオカーナ
ACE阻害薬服用患者に禁忌の血液浄化器(2023年12月31日時点)
出典:PMDA 2024年2月 ACE阻害薬服用患者に禁忌の血液浄化器の使用.PDFより

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Moegi

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この記事を書いた人

CEじゃーなるを陰ながら支える管理人です。
相方のMoegiと二人で当サイトおよびCE LIFEを運営中。
【保有資格】臨床工学技士・透析技術認定士
ブログ運営やら自己啓発・投資やら色々行なっています。

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