呼吸療法シリーズ 呼吸機能検査②

本記事は前回に引き続き「呼吸機能検査」パート2です。
前回は基準値などを紹介しましたが、今回は検査法や各検査項目の説明となります。それなりに国家試験に出題されます。

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コンパクトにまとめており、内容がハードになるため呼吸療法認定士の出題範囲は敢えてカバーしておりません。

筆者の記事では、何度も繰り返し調べて欲しい、反復して覚えて欲しいという思いから、略語などは一度だけ正式名称と共に記載するだけで、その記事内では以降は略語表記のみとします。

目次

スパイロメトリ

スパイロメトリとは、患者さんの口元における気量を測定し、肺気量分画や努力呼出曲線を測定する検査です。図は努力呼気曲線です。スパイロメータを用い、スパイログラムを測定します。

スパイロメータでは、機能的残気量と残気量、全肺気量は測定できません。

廣瀬稔, 生駒俊和「臨床工学講座 生体機能代行装置学 呼吸療法装置」p.32, 医歯薬出版
スパイログラム

努力呼気曲線
廣瀬稔, 生駒俊和「臨床工学講座 生体機能代行装置学 呼吸療法装置」p.32, 医歯薬出版

スパイロメータ

スパイログラムを得るための機器となり、測定原理より2種類に分類されます。

気量型

気量(ボリューム)を実測し、微分することにより気速(フロー)を求めます。
ベネディクト・ロス型ローリングシール型があります。

気速型

気速(フロー)を実測し、積分することにより気量(ボリューム)を求めます。
ニューモタコ式熱線式があります。

スパイロメトリの検査項目

1回換気量(Vt:tidal volume)

体格によりますが通常500[mL]です。
過換気症候群や代謝性アシドーシスの際は、極端に高値を示します。

肺活量(VC:vital capacity)

年齢、身長から予測値が求められ、%肺活量(%VC)により判定します。
正常値は80[%]で、%VC=実測VC/予測VC×100[%]から求めます。

努力肺活量(FVC:force vital capacity)

努力呼気曲線で、最大吸気位から最大呼気位までの呼出した時の気量をいいます。
正常値は%FVC80[%]以上となります。

1秒量(FEV1:forced expiratory volume in one second)

努力呼気曲線で、呼出開始点から1秒間の呼出した気量をいいます。

1秒率(FEV1%)

一般に(ゲンスラー)の式 FEV1/FVC×100[%]にて求められます。
正常値は70[%]以上です。

換気障害分類

今回の記事で一番重要な項目です。

スパイロメータから得られたデータから換気障害パターンを4つに分類することが出来ます。
その図を示します。横軸に%VC縦軸にFVE1%となり、ボーダーは%VC 80%、FEV1% 70%となります。

4つのゾーンに分類され、それぞれ以下に分類されます。

  1. 正常
  2. 閉塞性障害
  3. 拘束性障害
  4. 混合性障害

換気障害パターン分類
3学会合同呼吸療法認定士認定委員会, [第15回3学会合同呼吸療法認定士] 認定講習会テキスト, p.80

以下にスパイロメーターで得られた1秒量%VCと1秒率FVE1%による分類です。

正常

%VC 80[%]以上 かつ FEV1% 70[%]以上

閉塞性障害

%VC 80[%]以上 かつ FEV1% 70[%]未満

拘束性障害

%VC 80[%]未満 かつ FEV1% 70[%]以上

混合性障害

%VC 80[%]未満 かつ FEV1% 70[%]未満

代表疾患

それぞれの換気障害別の代表疾患です。

閉塞性障害

肺気腫慢性閉塞性肺疾患COPD)、気管支喘息

拘束性障害

間質性肺炎肺線維症、神経筋疾患、胸郭形成術後、妊娠、肥満

混合性障害

早期のものはなく、閉塞性障害、拘束性障害の疾患が進行したもの

フローボリューム曲線

フローボリューム曲線は最大呼気努力曲線から得られた肺気量と気流速度から得られるグラフです。
横軸に気量(ボリューム)、縦軸に気速(フロー)をとります。

最大努力呼気曲線では判読しにくい換気障害パターンが容易に判読できるので、日常臨床でも良く用いられまます。

フローボリューム曲線パターン
廣瀬稔, 生駒俊和「臨床工学講座 生体機能代行装置学 呼吸療法装置」p.32, 医歯薬出版

PEFR
3学会合同呼吸療法認定士認定委員会, [第15回3学会合同呼吸療法認定士] 認定講習会テキスト, p.81

※定量的に上図のようにPEFR(peak expiratory flow)などが表示されます。

PEFR

ピークフローのことですが、気管支喘息の呼吸機能モニタリングのために外来患者に使用されています。

まとめ

①スパイロメトリ

  • 患者さんの口元の気量を測定し、肺気量分画や努力呼出曲線を測定
  • スパイロメータを用い、スパイログラムを測定
  • 機能的残気量、残気量、全肺気量は測定できない

②スパイロメータ

  • 気量型:気量を実測し、微分することにより気速を求める
        ベネディクト・ロス型、ローリングシール型がある
  • 気速型:気速を実測し、積分することにより気量を求める
        ニューモタコ式、熱線式がある

③スパイロメトリの検査項目

  • 1回換気量:体格によるが通常500[mL]
  • 肺活量:年齢、身長から予測値が求められ、%肺活量により判定します。正常値は80[%]
  • 努力肺活量:正常値は%FVC80[%]以上
  • 1秒量:努力呼気曲線で、呼出開始点から1秒間の呼出した気量
  • 1秒率:正常値は70[%]以上

④換気障害分類

  • 正常:%VC ≧ 80[%] かつ FEV1% ≧ 70[%]
  • 閉塞性障害:%VC ≧ 80[%] かつ FEV1% < 70[%]
    代表疾患:肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 拘束性障害:%VC < 80[%] かつ FEV1% ≧ 70[%]
    代表疾患:間質性肺炎、肺線維症
  • 混合性障害:%VC < 80[%] かつ FEV1% < 70[%]

⑤フローボリューム曲線:最大呼気努力曲線から得られた肺気量と気流速度から得られるグラフ

さいごに

以上で、国試レベルの内容ですが、呼吸機能検査について終わります。
いつになるかわかりませんが、呼吸療法認定士に出題される検査内容についての記事をまとめようと思います。

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この記事を書いた人

職歴
現大学病院勤務
取得資格
臨床工学技士(CE)、ITE 心血管インターベンション技師、ME1種検定試験

得意領域
カテーテル、アフェレシス、内視鏡、機器管理

大学病院での幅広い勤務実績をもとに、臨床工学技士業務全般執筆しております。
1児のパパでもあり、子育て情報も発信していけたらと思います。

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