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「呼吸不全① ―呼吸不全の定義と原因― 」

本記事では「呼吸不全」を解説したいと思います。。
この記事では呼吸不全の定義や呼吸不全の原因などを解説したいと思います。
呼吸不全のテーマは何記事かに渡っての解説になるかと思います。
呼吸器疾患の基礎になり、呼吸療法の土台になるはずです。

筆者の記事では、何度も繰り返し調べて欲しい、反復して覚えて欲しいという思いから、略語などは一度だけ正式名称と共に記載するだけで、その記事内では以降は略語表記のみとします。

目次

呼吸不全の定義

室内気吸入時の動脈血酸素分圧\(P_aO_2\)が60[mmHg]以下となる呼吸障害、またはそれに相当する呼吸障害を呈する異常状態を呼吸不全と診断されます。

呼吸不全を動脈血二酸化炭素分圧\(P_aCO_2\)が45[mmHg]をボーダーラインI型II型に分類します。

ここで重要なのはPaCO2は呼吸不全の分類には使用されるが、診断基準にPaCO2は関係ないということです。

I型呼吸不全

\(P_aO_2\) 60[mmHg]以下 かつ \(P_aCO_2\) ≦ 45[mmHg]

II型呼吸不全

\(P_aO_2\) 60[mmHg]以下 かつ \(P_aCO_2\) > 45[mmHg]

では、急性呼吸不全慢性呼吸不全ではどうでしょうか。

急性呼吸不全

以下が、急性呼吸不全の原因となる呼吸器疾患です。

  • 慢性呼吸不全の急性増悪:COPDが最も頻度が多い
  • ARDS(急性呼吸促拍症候群):重要な呼吸器疾患です。ICUの患者はARDS多いです・・・。
  • 呼吸中枢の急性障害、呼吸筋麻痺:ギランバレー症候群やポリオなど。
  • 肺血栓症、肺塞栓症:DVT(下肢静脈血栓症)が原因であることが多い。
  • 自然気胸
  • その他肺炎など重症呼吸器疾患

慢性呼吸不全

急性呼吸不全と異なり、定義が存在します。

呼吸不全状態が少なくとも1ヶ月間持続するものを慢性呼吸不全と定義されています。

余談ではありますが、呼吸不全とは診断されませんが、\(P_aO_2\)が60[mmHg]から70[mmHg]以下であり、呼吸不全に陥る可能性のある状態準呼吸不全と言います。

高\(CO_2\)血症に対し、腎機能による代償作用が働き\(HCO_3^-\)上昇を伴う呼吸性アシドーシスを呈します。

以下が慢性呼吸不全の原因となる呼吸器疾患です。

  • COPD:最も頻度が高い
  • 結核後遺症
  • 突発性間質性肺炎
  • その他、あらゆる進行性呼吸器疾患

呼吸不全の合併症

多臓器不全(MOF:multiorgan failure)

呼吸不全により低酸素血症を生じます。そして、低酸素血症は全身の臓器障害を引き起こし、多臓器不全(MOF:multiorgan failure)へ移行してしまうおそれがあります。

肺性心

低酸素血症や高CO2血症により肺血管抵抗が上昇し、肺高血圧症(PH)を引き起こし、右室肥大を生じます。肺性心は予後に非常に影響を与えるため、この管理と予防は非常に重要となります。

その他低酸素血症による臓器障害

  • 腎機能障害
  • 肝機能障害
  • 十二指腸潰瘍 etc・・・

PaO2の規定因子について

換気血流比(\(\dot{V}/\dot{Q}\))

呼吸療法に必要な解剖生理③」にて簡単に説明していますのでそちらをご参照ください。

換気血流比が高いと血流量に比して換気量が多いため、\(O_2\)が多く取り込まれ、\(CO_2\)が吐けます。つまりは、\(P_aO_2\)は高値、\(P_aCO_2\)は低値になります。

逆に換気血流比が低いと血流量に比して換気量が少ないため、\(O_2\)供給が少なく、\(CO_2\)が吐きにくくなります。つまりは、\(P_aO_2\)は低値、\(P_aCO_2\)は高値になります。

肺全体の換気血流比が均一の際に\(P_aO_2\)が最も高く、\(P_aCO_2\)は最も低くなります。

しかしながら、実際には換気血流比不均等分布が存在し、換気血流比不均等分布が増加するにつれまず\(P_aO_2\)が低下し、次に\(P_aCO_2\)が高くなってくる。

特に立位にて換気血流比不均等分布が最大となり、肺胞気-動脈血酸素分圧格差(A-a DO2)は増加します。

A-aDO2

A-aDO2 についてはガス分圧の基本 A-aDO2やP/F比とは?を参照ください。

正常値は10[mmHg]以下です。A-aDO2は換気血流比不均等分布、右左シャント、拡散障害によって大きくなります。低酸素血症の環境下では拡散障害によって最も影響を受けます。

呼吸不全の基礎病態

\(P_aO_2\)は年齢と共にその正常値は低下してきます。目安は次式です。

\begin{align}
P_aO_2=104-年齢\times0.4(臥位)\\
P_aO_2=104-年齢\times0.3(坐位)
\end{align}

年齢を考慮しない\(P_aO_2\)の理論値は途中式は省略させていただきますが、肺胞気方程式によって求められます。

\begin{align}
P_aO_2=150-\frac {0.8}{P_aCO_2}-A\textrm-a DO2
\end{align}

上記式より、低酸素血症は以下によって生じます。

①\(P_aCO_2\)の増加(>45[mmHg])=肺胞低換気
②\(A\textrm-a DO_2\)の増加(>15[mmHg])=肺胞ガス交換障害
③上記①+②の合併

呼吸不全の病態に合わせた呼吸療法

肺胞低換気

肺胞低換気のみであれば、換気補助 or 強制換気をします。
→ 自発呼吸や換気障害の程度に合わせて、挿管管理 or NPPV(非侵襲的陽圧換気)

肺胞ガス交換障害

まず、酸素投与をし、必要時換気補助を追加します。

肺胞低換気+肺胞ガス交換障害

同様にまず酸素投与をし、必要時換気補助を追加します。
ただし、酸素投与のみの治療の場合は\(CO_2\)ナルコーシスに注意します。

CO2ナルコーシス

肺胞換気量の低下するII型呼吸不全の場合にですが、換気補助なく高濃度の酸素投与を行うと高\(CO_2\)血症が増悪し、意識障害や痙攣を引き起こすことがあります。

呼吸不全の呼吸療法

上記よりもう少し実践的な内容としてみます。

I型呼吸不全であれば、酸素解離曲線(リンク)より\(P_aO_2\)を60[mmHg]以上または\(S_pO_2\) 90%以上を維持できるようにネーザルカニューレや酸素マスクにて酸素投与を行います。

II型呼吸不全であれば、ネーザルカニューレを1[L/min]前後の低流量で投与開始し、必要時にベンチュリマスク等で\(CO_2\)ナルコーシスに注意しながら\(P_aO_2\)を60[mmHg]以上または\(S_pO_2\) 90%以上を維持します。

換気補助は特にII型呼吸不全にて酸素吸入だけでは改善が認められない場合にNPPVを用います。

挿管管理は酸素吸入やNPPVで目標の酸素化を維持できない場合に人工呼吸器を使用します。

呼吸不全の原因となる呼吸器疾患

呼吸不全の原因となる呼吸器疾患をご紹介します。国家試験では臨床医学総論にて個別に出題されることもあり、別記事にて疾患別に執筆したいと考えております。今回は疾患名の紹介のみです。

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 気管喘息
  • 肺炎(呼吸器感染症)
  • 肺結核
  • びまん性肺疾患(間質性肺炎や突発性肺線維症など)
  • ARDS
  • 肺癌
  • 気胸
  • 急性肺血栓塞栓症

さいごに

以上で呼吸不全の解説でした。呼吸不全までくると、本格的な呼吸療法の範囲に来たなと思いますね。この範囲は臨床医学総論の呼吸器疾患で出題されるでしょうか。

その他呼吸療法シリーズについてはこちらからどうぞ

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この記事を書いた人

職歴
現大学病院勤務
取得資格
臨床工学技士(CE)、ITE 心血管インターベンション技師、ME1種検定試験

得意領域
カテーテル、アフェレシス、内視鏡、機器管理

大学病院での幅広い勤務実績をもとに、臨床工学技士業務全般執筆しております。
1児のパパでもあり、子育て情報も発信していけたらと思います。

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