呼吸療法シリーズ「呼吸療法に必要な解剖生理①」

呼吸療法において、まず必要なのは基本の「き」の解剖です。

このシリーズのコンセプトは看護師さんや学生さんのためではありますが、解剖学は正に基本事項となりますのでしっかり記載していき、参考書の余計な文章をカットしてまとめ、国家試験、呼吸療法認定士対策にできる内容とします。

すなわち、必要なことしか記載しません!! 

非常に覚えることが多いですが頑張りましょう。基本的内容となりますので、ベテランの方、認定士取得者には物足りない、説明不足な内容となりますがご容赦ください。

目次

気道

呼吸器系は、口及び鼻から咽頭、喉頭(輪状軟骨)までの上気道と、気管から終末細気管支までの下気道肺胞及び胸膜から構成されます。
口及び鼻から終末細気管支、すなわち上気道と下気道を総じて気道と言います。
この気道は呼吸療法においてガス交換に関与しないため、解剖学的死腔と呼ばれ、成人男性で150mLです。肺胞死腔と合わせて生理学的死腔と呼ばれ、肺胞死腔は生理学的死腔の20%以下となっています。

上気道の解剖
山口 修「臨床工学技士のための呼吸療法ガイドブック」p.12, メジカルビュー社, 2014

下気道の解剖
山口 修「臨床工学技士のための呼吸療法ガイドブック」p.12, メジカルビュー社, 2014

気管

気管は第6頸椎下縁の輪状軟骨の下端より始まり、第4-5胸椎の高さで左右の主気管支分岐部までの部分となります(図:下気道の解剖参照)。気管の太さ、長さは認定試験によく出題されます。
気管の断面は馬蹄形をしており前面にあります。気管軟骨と輪状靭帯が交互に連結しており、輪状軟骨は幅3-4mmで16-20個あります。気管切開は第2-3輪状軟骨上にされます。


太さ長さ
成人16.5mm10-12cm
乳幼児9.4-10.8mm4.5-5cm
新生児5mm4cm
気管の太さと長さ

門歯-気管支分岐部長さ
成人男性26cm
成人女性23cm
乳幼児10cm
門歯-気管支分岐部長さ

気管断面
山口 修「臨床工学技士のための呼吸療法ガイドブック」p.13, メジカルビュー社, 2014
FioreAC、etal.:Surgical treatment of pulmonary artery sling and tracheal stenosis. Ann Thorac Surg, 75:38-46.2005.

主気管支

左右気管支が成している角度は約70度で、右25度、左45度となっており、右主気管支の方が太く短い形状をしています。したがって、より垂直な右主気管支にて誤嚥が生じやすく、深く挿入し過ぎた挿管チューブの先端は右主気管支へ入りやすいです。

主気管支分岐
3学会合同呼吸療法認定士認定委員会, [第15回3学会合同呼吸療法認定士] 認定講習会テキスト, p.17

右主気管支は上葉、中葉、下葉の3つに、左主気管支は上葉と下葉の2つに分岐します。肺の容積はやや右肺の方が大きいです。

区域分類と分岐

肺は区域分類され、右肺は10個(上葉はS1, S2, S3、中葉はS4, S5、下葉はS6, S7, S8, S9, S10)、左肺は8個(上葉はS1+2, S3, S4, S5、下葉はS6, S8, S9, S10)となります。肺の最小単位を細葉と言います。

気管支は約16-20回程度分岐します。終末細気管支より末梢がガス交換に関与します。

気管→主気管支→肺葉気管支→区域気管支→小葉気管支→細気管支→終末細気管支→呼吸細気管支→肺胞管→肺胞嚢→肺胞

気管の分岐
山口 修「臨床工学技士のための呼吸療法ガイドブック」p.12, メジカルビュー社, 2014

ここまで、大まかな気管支の分類と主気管支について記載しました。特に主気管支の内容は特に頻出となります。筆者もここまではすんなりと頭に入ってきましたが・・・ここからが苦手とする人が多いかと思います。では、後半も頑張りましょう。

細気管支

細気管支は表1の小気管支、細気管支、終末細気管支にあたります。

  • 単層円柱線毛上皮
  • 気管支腺及び杯細胞は無く、クララ細胞からなる
  • クララ細胞:無線毛細胞で表面に短い微絨毛をもち、サーファクタントを産生
  • ガス交換に関与しない

呼吸細気管支

  • 単層立方上皮
  • 線毛を持たない
  • ガス交換に関与する

肺胞

  • 肺胞嚢は数十個の肺胞から成る
  • 左右の肺で3~5億個
  • 総面積80~120㎡(テニスコート1面分と良く表現されますね)
  • 線毛は無い
  • 95% I型肺胞上皮細胞:扁平で酸素を通過させやすくする細胞
  • 5% II型肺胞上皮細胞:球状立方形で肺サーファクタント(表面活性物質)を分泌する

    ※サーファクタント・・・表面張力を弱め、肺胞虚脱を防ぐ働きを持つ。

気管の組織について

①軟骨の分布
 細気管支及び細気管支より末梢の気道には存在しなくなります。細気管支より末梢は、平滑筋及び弾力線維より構成される。

②平滑筋の分布
 気管から細気管支へかけて分布し、肺胞周囲にも分布します。

③粘膜上皮及び粘液腺の分布
・気管及び気管支内面は主に線毛円柱上皮に覆われ、杯細胞より粘液を産生する
・細気管支:中枢側は単層線毛円柱上皮、末梢側程単層立方上皮へ移行し杯細胞が消失していく
・細気管支からは粘液腺が存在しなくなる(軟骨と粘液腺分布はほぼ一致すると覚えましょう)
・細気管支の粘液腺である腺房は杯細胞と漿液細胞から成る
 →呼吸細気管支は杯細胞と線毛が存在しないため、炎症を生じやすい場所と言えますね。

オススメの参考書

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新呼吸療法テキスト

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まとめ

本記事を簡単にまとめます。

  1. 気道
    • 上気道:口及び鼻から咽頭、喉頭(輪状軟骨)
    • 下気道:気管から終末細気管支
    • 解剖学的死腔はガス交換に関与せず、成人男性で150mL
  2. 気管
    • 始点:第6頸椎下縁の輪状軟骨の下端
    • 終点:第4-5胸椎の高さで主気管支分岐部
    • 気管の断面は馬蹄形をしており前面にある
    • 輪状軟骨は幅3-4mmで16-20個
  3. 主気管支
    • 右主気管支:25度で太く短い。左側より誤嚥しやすく、挿管チューブが入りやすい
    • 左主気管支:45度で細く長い
    • 右肺は3つ、左肺は2つに分かれる
    • 右肺の方が大きい
  4. 区域分類と分枝
    • 右肺は10区域
    • 左肺は8区域
    • 気管支は約16~20回程度分岐する
    • ガス交換は終末細気管支より末梢にて行う
  5. 細気管支
    • 単層円柱線毛上皮
    • ガス交換に関与しない
  6. 呼吸細気管支
    • 単層立方上皮
    • 線毛を持たない
    • ガス交換に関与する
  7. 肺胞
    • 左右の肺で3~5億個
    • 総面積80~120㎡
    • 線毛は無い
    • 95% I型肺胞上皮細胞、5% II型肺胞上皮細胞で構成
  8. 気管の組織について
    • 軟骨の分布:細気管支及び細気管支より末梢の気道には存在なし
    • 平滑筋の分布:気管から細気管支へかけて分布し、肺胞周囲にも分布
    • 粘膜上皮及び粘液腺の分布
      • 気管及び気管支:線毛円柱上皮
      • 細気管支:中枢側は単層線毛円柱上皮、末梢側程単層立方上皮
      • 細気管支からは粘液腺が存在しなくなる

以上で主に肺の内部についての解剖をまとめました。あらためてまとめてみると、国試の呼吸療法の範囲の頻出単語ばかりでしたね。次の記事も呼吸器の解剖となりますが、こちらは主に肺の外側の内容となります。

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この記事を書いた人

職歴
現大学病院勤務
取得資格
臨床工学技士(CE)、ITE 心血管インターベンション技師、ME1種検定試験

得意領域
カテーテル、アフェレシス、内視鏡、機器管理

大学病院での幅広い勤務実績をもとに、臨床工学技士業務全般執筆しております。
1児のパパでもあり、子育て情報も発信していけたらと思います。

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