はじめに 呼吸療法シリーズについて
ブログを始めるにあたり、当サイトは「臨床工学技士による医療従事者のためのブログマガジン」を銘打って、ブログを開設することにいたしました。
そのため臨床工学技士だけでなく幅広い業種にとって必要となる自分達の専門分野はなんだろうと自問自答した際、候補にあがったのは人工呼吸器や酸素療法のことでした。
そのためブログ開設をして初めの投稿はこれらを中心に取り上げたいと思っております。
「呼吸療法シリーズ」と名付けましたが、このシリーズでは、人工呼吸器領域を苦手意識をしていたり、これから人工呼吸器の勉強を始める学生や看護師、経験年数の浅い臨床工学技士向けの内容を記載していきたいと考えています。
是非、参考にして勉強していただければと思います。
最終的には、筆者も「3学会合同呼吸療法認定士」を目指しても良いのではと思っています(もっとも、他領域の認定士との兼ね合いで、迷っているところではありますが・・・)。
これから予定している題材を下記に記載します。
- 陽圧/陰圧換気
- 回路構成
- PEEP
- モード
- 設定
- アラーム
- 加温加湿器
- HFNC
- NPPV
- weaning
いかがでしょうか。略語も含め見覚えがある単語が並んでいたのではないかと思われます。
まだまだ際限なく題材は存在するため、まずはbasicな内容から、そして徐々にadvancedな内容を織り交ぜたいと思います。
「〇〇についてまとめて欲しい」、「〇〇について書いて下さい」といったものは受け付けますので、問い合せフォームよりお願い致します。
呼吸療法における臨床工学技士、呼吸療法認定士の役割
まず、臨床工学技士の業務は「医師の指示の下に生命維持管理装置の操作および保守点検を行うことを業とする者」と定義されています。
人工呼吸器も生命維持管理装置の一つです。呼吸療法の分野では臨床工学技士は人工呼吸器、酸素療法機器、医療用ガス設備、電気設備に精通している職種です。
その役目は、チーム医療の一員として、人工呼吸器(またその他関連機器)の適切な条件設定、日常点検や定期点検の実施、トラブルシューティングの迅速な対応を求められます。
機器が苦手な看護師さん、理論は理解していても実際に人工呼吸器に向かってみると分からない先生などたくさんいらっしゃいますので、是非とも臨床工学技士を頼っていただいて、臨床工学技士の存在意義を高めたいものです。
呼吸とは(外呼吸と内呼吸)
ではまず手始めに、呼吸とは一体何でしょうか。私達は、呼吸によって、生命活動を維持する必要なエネルギーの大半をミトコンドリアの代謝活動によって得ています。
一般的にイメージされるのは、普段から無意識にしている、息を吸って、息を吐いてを繰り返して肺に空気を出し入れして酸素を体内に取り込む・・・といったところでしょうか。
もちろんその通りですが、今この記事を見に来ている学生さんはそんなこと求めていないでしょう。
呼吸には「外呼吸」と「内呼吸」の2種類が存在します。
皆さんが思い浮かべる、空気を吸って吐くというのは外呼吸になります。
肺に取り込んだ空気内の酸素を肺胞で血液中の二酸化炭素と交換し、体外へ二酸化炭素を排出することを言います。
つまり、空気と血液との間で酸素と二酸化炭素のガス交換です。
内呼吸とは、血液から運搬されてきた肺から取り込んだ酸素を体内の各組織細胞から産生された二酸化炭素と交換することを言います。
つまり、血液と細胞とのガス交換です。
その別名を組織呼吸とも言います。
呼吸療法で用いられる記号及び略記号
人工呼吸器の勉強を始めて、苦手意識を持つ理由の一つに、数多くの単語や略語が出てくることが原因かと思われます。
ここでは、頻出の略記号を紹介します。呼吸療法で使用される略記号は、パズルのように考えることができ、ルールといくつかの単語を覚えればすぐに覚えられるかと思います。
ここでルール説明のために「PaO2」を例にします。「PaO2」は1次記号、2次記号、3次記号の3つの記号に分解できます。
「圧力、容量、濃度」など物理的指標を表します。大文字のアルファベットで示します。
「動脈、呼気、動脈血」など、1次記号で表されたものの存在場所を示します。
気体は大文字のアルファベット、液体は小文字のアルファベットで示します。
酸素、二酸化炭素、窒素といったガスの種類を分子式で示します。
「PaO2」は「動脈血酸素分圧」を表しています。
上記のルールに基づくと、左から「P」は「分圧」、「a」は「動脈血」、「O2」は「酸素」となり、「PaO2」は「動脈血酸素分圧」となります。
他にも「・(ドット)」や「-(バー)」などが付いたりして様々な意味を成します。
以下に、1次記号、2次記号、3次記号の頻出記号をまとめましたので丸暗記してください。
記号 | 意味 | 英語 |
P | 圧力、分圧 | pressure |
V | 容量、体積 | volume |
F | ガス濃度 | fraction |
C | 含量 | content |
S | 飽和度 | saturation |
D | 拡散能 | diffusion capacity |
Q | 血流量 | – |
・(ドット) | 1分あたりの量 | – |
記号 | 意味 | 英語 | |
気体 | I | 吸気 | inspiration |
E | 呼気 | expiratory | |
A | 肺胞気 | alveolar | |
T | 一回換気 | tidal | |
B | 大気 | barometric | |
D | 死腔 | dead space | |
液体 | a | 動脈血 | arterial |
v | 静脈血 | venous | |
c | 毛細血管 | capillary | |
ー(バー) | 混合 or 平均 | – |
記号 | 意味 | 英語 |
O2 | 酸素 | oxygen |
CO2 | 二酸化炭素 | carbon dioxide |
N2 | 窒素 | nirogen |
呼吸療法に登場する略記号は、3つに分けて考え、上記の表を覚えると良いでしょう。
編集後記
今回は、「呼吸療法シリーズ」の初回のため、記事の紹介、呼吸療法における臨床工学技士の役割、呼吸とは・・・という、序論の記事となりました。
呼吸療法の分野は、その必要性が非常にあるにも関わらず苦手な方が多いですし、いざ勉強しようにも参考書は高価で、なかなか自分に合った参考書に出会えません。
はたまた、先輩、上司は忙しそうにされてなかなか質問できず、探した論文も難しいことが多いです
この呼吸療法シリーズでは、皆さんの勉強するためのきっかけとなることを願います。
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