【特集】新学期に向けた「学生にオススメの参考書22選」

血漿交換療法 Part2 ― 処理量の計算 ―

この記事を読まれる前に、「血漿交換療法 Part1 ― PEの基本知識 ―」を先に読まれることをお勧めします。

Part1ではPEの基礎知識と置換液について解説しました。
今回は、「置換液の量は?」といったところを解説します。

ただし、条件設定は施設毎に異なることが予想されますので、あくまでも一例ということをご了承ください。

なお、筆者Moegiはアフェレシス経験は今や新人の指導がほとんどですが、PEとDFPP、その他LDL-A、IAPPなど合わせたら年間数十例程度は関わっていると思います。

目次

置換液量の設定

PEの置換液量は、患者の循環血漿量を基にして処理量を決めます。
循環血漿量は患者の体重(Bwt)及びHct値(ヘマトクリット)から算出します。

アルブミン置換ではアルブミン製剤の量を決めなければならないのでALB値(血清アルブミン濃度)も計算に使用します。

推定血漿量 (EPV:estimated plasma volume)

PEの処理量、つまり置換液量は「循環血漿量の何倍にするか」で決めていきます。

患者の推定血漿量(EPV)を求める計算式より算出するのですが、そう難しくはありません。
医療系養成校で最初に学習するであろう解剖生理の基礎知識になります。
患者の体重(Bwt[kg])及びHct[%](ヘマトクリット)から算出します。

\begin{align}
EPV[mL]=Bwt\times\frac {1}{13}\times(1-Hct)\times1000
\end{align}

ここは新人に指導すると最初に躓くポイントなので丁寧に解説します。

①「Bwt×1/13」

まず、「Bwt×1/13」について、これは循環器領域でよく使用されるのですが、体重を13で割ってあげると「循環血液量」を求めることが出来ます。

②「(1 – Hct)」

Hct値は血液中体積における赤血球の割合でしたね。全体100[%]からHctを差し引くと、白血球や血小板などの細胞成分は含まれますが割合的には僅かなため、ほぼ血漿となります。
つまりは赤血球成分を除く計算式となります。

③「×1000」

これは完全な筆者の好みなのですが、血漿量を[L]から[mL]へ単位変換をするためです。
どうせFFPを1単位120[mL]で計算しますので。

※補足
13で割るなんて暗算面倒だな…と思ったそこのアナタ、暗算で出来る方法があります。
こちらも学生の頃に授業で習ったと思うのですが、循環血液量は体重当たり7080[mL]という指標があります(※1/13=0.0769)。
そうすると70と80どちらを掛けたらいいの?となると思いますが安心してください、両方使います笑。
成人は70小児は80としてください。
単純に小児の方が体表面積当たりの代謝量が多いのでそうしています。

\begin{align}
成人 EPV&=Bwt\times70 \times{(1-Hct)\times}1000\\
小児 EPV&=Bwt\times70 \times{(1-Hct)\times}1000\\
\end{align}

処理量の設定

さて、患者の循環血漿量は求まりました。次は1回の治療での処理量=置換液量を決めます。

ここも初学者や新人が悩むところですね。
まあ、実際悩ませる理由が「患者の疾患・病態に合わせて倍率を調整する」、「同じ疾患でも病態/重症度によって倍率を調節する」、あとは「経験的な微妙なノウハウ」ですからね……。
そこをこの記事で伝えられたら良いなとは思います。

まず、アルブミン置換とFFP置換で基本的な置換液量が異なります。同じ体重の2人の患者でアルブミン置換とFFP置換とそれぞれ治療する場合、置換液量はFFP > アルブミンとなります。
では、それぞれの置換液について分けて考えます。

置換液の選択についてはpart1をご参照ください。

除去率について

置換液量の計算の前に、ターゲット物質の除去率について先に触れておきます。
一応確認で、当然といえば当然なのですが、循環血漿量(以下、PV:plasma volume)と同等量(=等倍)を置換すれば全ての血漿を入れ換えられるわけではありません。
何故ならば、1分間に15〜30[mL]ずつ常に捨てては補充してを繰り返しているため、患者の血漿と新しい血漿は混ざり合っているためです。
もちろん、患者の血漿全て抜き出して、同等量の置換液を補充すれば除去率100[%]です。

では、本題へ。以下がPVに対する倍率と除去率を示します。
あくまでも目安ですので、患者の状態、使用機器、治療条件など様々な因子で変動します。

処理量と除去率

PV × 0.8  →  50 [%]
PV × 1.0  →  60 [%]
PV × 1.2  →  70 [%]
PV × 1.5  →  80 [%]

上記の通り、循環血漿量と同等量の処理量では60[%]程度の除去率となります。
倍率の選択は患者の病態、重症度から決めます。
それでは置換液別に説明します。

アルブミン置換

置換液量は?

基本的にはPV×1.0〜1.2であり、PV×1.2で治療をすることが多いです。重症症例ではPV×1.5にすることはあります。しかし、除去率としては1回当たり70[%]で充分効果が得られると感じています。

アルブミン置換で治療するにあたって気をつけなければならないことがあります。
それは凝固因子が補充されないため、大量置換や頻回治療をすると出血傾向となります。
それ故にFFP置換より少なめの処理量となります。

アルブミン置換をする前日や当時治療前の凝固系採血をオーダーしてもらい、フィブリノゲン(FIb)の値が100[mg/dL]以下である時は延期にしていただいてます。

治療間隔は?

当院での実際の治療は、PV×1.2の場合は隔日週3回、PV×1.5の場合は週2回またはフィブリノゲンの回復が早ければ隔日週3回にしています。
アルブミン置換の患者さんは基本的には自己免疫疾患であり、4回前後で効果が出てくることが多いように思えます。一連治療で7回程度PEをします(保険適応上、1月7回まで)

経験的なノウハウは?

あとは経験的なところになるのですが、PV×1.2でおおよそ処理量は2500前後になると思われます。
アルブミン置換で3500[mL]を超えてくると、凝固因子の損失の観点から処理量を抑えようかなと考慮します。
例えば、PV×1.5でオーダーされ、処理量が4500[mL]と算出された際に、4000[mL](PV×1.33)などへ下げさせてもらうこともあります。
これは出血傾向など安全性を考慮したものです。もちろん、どうしてもPV×1.5でお願いしますと押されれば医師指示の責任の下、オーダー通り治療を行います。

また、アルブミン置換では組成的にはNa+濃度が生体正常値よりやや低いので、置換液が多いほど治療中の血圧低下が起こりやすいので注意が必要です。

FFP置換

置換液量は?

基本的にはPV×1.2〜1.5であり、PV×1.5で治療をすることが多いように思えます。
というのも、アルブミン置換をする患者より、圧倒的に重症度が高いことが多いことと、Na+クエン酸Naを添加されている影響もあり、Na+負荷となるので、その面では血圧の低下は生じにくいです。
ただし、アレルギー反応などの副作用はそれなりの頻度で発生し、血中Ca濃度の管理も必要です。

治療間隔は?

アルブミン置換の際はフィブリノゲン値を気にする必要がありましたが、FFPでは治療間隔を特に気にする必要がありません。むしろ、連日実施することは多いです。

また、劇症肝炎など常にFFP投与を必要とするような症例ではPV×2.0で毎日PEをします。
なんなら、PE単独よりPE + on-line HDFまたはPE + CHDFの並列の方がbetterでしょうか。

さいごに

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ICU従事者必携の「リアル血液浄化」の続編です。CHF・CHD・CHDFの効率の正しい理解やECUM、PEについて触れられています。

以上でPEの処理量の算出方法についての解説を終わります。
思ったよりもボリュームがあったため、アルブミン置換のアルブミン製剤の本数やFFP製剤の本数についての計算方法はPart3で例題を交えて解説したいと思います。

Part3はこちらからどうぞ。

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Moegi

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この記事を書いた人

職歴
現大学病院勤務
取得資格
臨床工学技士(CE)、ITE 心血管インターベンション技師、ME1種検定試験

得意領域
カテーテル、アフェレシス、内視鏡、機器管理

大学病院での幅広い勤務実績をもとに、臨床工学技士業務全般執筆しております。
1児のパパでもあり、子育て情報も発信していけたらと思います。

コメント

コメント一覧 (3件)

  • Moegiさん初めまして。
    いつも楽しく読ませていただいています。

    処理量について
    ビリルビン吸着では、どのように判断されていますか?
    PEに比べエビデンスが少ないように思います。
    工夫されていること等ありましたらご教示いただけると幸いです。
    よろしくお願いいたします。

    • ご質問いただきありがとうございます。
      処理量をお話しする前に、ビリルビン吸着は基本的には実施してませんね。仰っる通りエビデンスといいますか、実施が少ないと考えます。
      ビリルビン吸着の依頼が来ても、神経障害を来していない場合は実施を見送っていただいています。そもそも劇症肝炎や肝不全ではPE+on-line HDF(or CHF, CHDF)の選択/提案になるかと思います。

      では本題の処理量ですが、私としては滅多に使用しないプラソーバを含めPMXなどDHPはできるだけ回すという考えを持っています。
      アフェレシス学会の出すガイドラインでは3000-5000[mL]となっていますが、私なら4000[mL]または5000[mL]にします。
      古いデータですが、4000[mL]くらいから吸着率は落ちていると思われます(吸着率20-25%へ低下)。
      ガイドラインの注釈には「7000[mL]でも吸着能力はある」となっていますし、アルブミン等は吸着されませんので、できるだけ処理するというのが私の考えですね。

  • ご返信ありがとうございます。

    勉強になりました。
    肝不全に対してはPEが基本。たしかに、そうなのかもしれません。

    また、質問させていただきます。
    ブログ投稿応援してます!ありがとうございました。

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