この記事では透析業務に初めて関わる臨床工学技士や看護師向けに、血液浄化(アフェレシスは除く)の簡単な原理や治療モード、患者さんに合わせた治療計画とはどういった例があるのかを解説したいと思います。
血液浄化のモードに関する記事なんて、そこら中にありふれているとは思いますが、いつも通りわかりやすく解説できれば良いなという思いで執筆したいと思います。
内容的には学生、初学者向けとなります。
要点だけをまとめていきますので、国試対策としてもご利用いただける内容と思います。
血液浄化療法の種類
まずはモードの説明から。
血液浄化に関わるなら、まず覚えるべき内容の1つですね。
ただし、アフェレシスを除きます。
- 血液透析:HD(hemodialysis)
- 血液濾過:HF(hemofiltration)
- 血液透析濾過:HDF(hemodiafiltration)
- on-line HDF
- off-line HDF
- I-HDF
- 体外限外濾過法:ECUM(extracorponeal ultrafiltration method)
- 腹膜透析:PD(peritoneal dialysis)
- CAPD
- APD
- CCPD …etc
血液透析:HD(hemodialysis)
透析療法の基本となり、治療の選択としてもスタンダードなのが血液透析(HD:hemodialysis)ですね。
HDの原理は、「拡散」、「限外濾過」、「吸着」です。
特に拡散による小分子領域の除去を目的とします。
吸着に関しては、使用するダイアライザによっては、サイトカインやβ2-MGなどを吸着能を有するものがあります。
ただし、短時間であるintermittentでは吸着量は知れていますので、CHDやCHDFなどのcontinuousでこその原理かと思われます。
「吸着」は国試でも第3の選択肢として出題されますので、困惑しないようにしっかりと覚えておきましょう。
体外限外濾過法:ECUM(extracorponeal ultrafiltration method)
HFやHDFの紹介の前に、先に体外限外濾過法:ECUM(extracorponeal ultrafiltration method)、または単独限外濾過法(isolated ultrafiltration)について触れたいと思います。
ECUMは通称【イーカム】と呼んでいますが、原理は日本語名に示される通り「限外濾過」となります。
物質除去はそれほど必要が無いが、体液貯留が多い(=除水が多い)患者さんに対して選択されるモードです。
要は浄化は不要だけども、除水だけしたいときに使用するモードですね。
3h HDを実施した後に1h ECUM・・・といった感じで併用されることが多いです。
ただし、HDの前後どちらでECUMをするのが良いか?と言うのは時折議論されるところです。
血液濾過:HF(hemofiltration)
血液濾過(HF:hemofiltration)は、実臨床ではほとんど選択されることはない治療法です。
HFの原理は限外濾過となります。
・・・ん?
それだと「ECUM」と原理は同じじゃないですか?
と、よく実習生や新人に質問されるところです。
ECUMと異なる点は、端的に言えば補液をするということです。
もう少し掘り下げますと、HFは設定している予定除水量に加えて補液分も除水(限外濾過)しています。
拡散が利用できないので、ターゲットは中分子〜大分子領域となります。
余程の理由がない限りHFが選択されることは、まず無いと考えて良いと思われます。
私もon-line HFの経験が2名程度です。
血液透析濾過:HDF(hemodiafiltration)
さて、学生さんや初学者の方でも耳にしたことがあると思いますが、on-line HDFの「HDF」です。
血液透析濾過(HDF:hemodiafiltration)ですが、小分子領域の除去が得意なHDと中分子〜大分子領域の除去が得意なHFの併せ技ですね。
拡散で小分子領域を除去しつつ、補液をして限外濾過で中分子〜大分子領域の除去が可能となっています。
補液の方式には2種類あり、補液をヘモダイアフィルタの前(Aチャンバ)で実施するのを前希釈(pre-dilution)、後(Vチャンバ)でするのを後希釈(post-dilution)と言います。
HDFはいくつかの方式がありますが、主流はon-line HDFです。
on-line HDF(OHDF)、off-line HDF、I-HDFとありますが、簡単に説明します。
on-line HDF
現在のHDFの主流となる方式です。
透析液を補液として利用するのがポイントです。
透析液の清浄化を厳密に管理する必要があります。
希釈方式は前希釈(pre-dilution)が主流です。
off-line HDF
on-line HDFは透析液を補液として利用していましたが、off-line HDFはサブラッドなどを補液として利用するボトル式のモードとなっています。
on-line HDFが主流の現在、オプションの補液用ポートが無いなど、コンソールの都合でon-line HDFができない際にoff-line HDFを利用します。
希釈方式は後希釈(post-dilution)が主流です。
I-HDF
正式名称を「間歇補充型血液透析濾過(I-HDF:intermittent infusion hemodiafiltration)」といい、その名の通り、一定間隔で補液を実施する方式のHDFとなります。
on-line HDFでの補液は持続的ですが、I-HDFの補液は例えば30分ごとに設定した補液を実施するといったモードとなります。もちろん、補液分は除水します。
間歇的な補液が有効な患者さんはそれなりにいらっしゃるので、結構見かけるモードですね。
「間歇」と「間欠」ですがどちらでも大丈夫です。
それよりも「間欠透析」と言った際に、「I-HDF」なのか、「IHD(intermittent)」のことなのかを混同しないように気をつけましょう。
腹膜透析:PD(peritoneal dialysis)
腹膜透析(PD:peritoneal dialysis)はシャントなどのVA(バスキュラアクセス)を利用せずに、自身の腹膜内に透析液を貯留させ、腹膜を利用して透析を実施する透析療法です。
VAは不要といっても、腹膜内に透析液を注入させるためのポートを留置する手術は必要となります。
本格的なHDの導入までは不要な方、HDを導入を拒む方、仕事はこれまで通りしたい方など様々な理由でHDではなくPDを導入している患者さんがいます。
PDにも様々な治療方式があります。
詳細に説明すると1記事かけてしまうボリュームとなりますので、簡単な説明とさせていただきます。
連続携行式腹膜透析(CAPD:continuous ambulatoryy peritoneal dialysis)
透析液の交換を1日に4回程度実施します。
起きている時も、寝ている時も交換時以外は腹腔内には透析液が常に貯留されています。
そのため、透析が持続的に行われているPDとなります。
自動腹膜透析(APD:automated peritonial dialysis)
自動腹膜灌流装置(サイクラー)を使用し、基本的には夜間に透析液の交換を実施する方式です。
日中の透析液の交換を気にする必要がないので、CAPDよりはQOLは向上を期待できます。
連続周期的腹膜透析(CCPD:continuous cyclic peritoneal dialysis)
PDは透析液の交換頻度、貯留の時間帯は患者ごとの生活スタイルに合わせてプランを立てることができます。
CCPDは、基本的に夜間にサイクラーで透析を実施し、日中は透析液貯留するパターン、貯留しないパターン、日中に交換をするパターン、しないパターン・・・と、バリエーションは様々です。
患者さんの状態、生活スタイル、かかりつけ医、施設など総合的に判断してPDの治療計画を立てます。
さいごに
以上で透析療法の種類についての解説でした。
学生さん、初学者向けに、透析療法とはどういった種類があるのかというザックリとした内容でしたので、今後それぞれについて深く解説していきいたいと思います。
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