タイトルの通りですが、いよいよ来月に迫った臨床工学技士国家試験の直前対策の記事となります。
内容としては当サイトでこれまで扱った、あるいはこれから扱うであろう血液浄化の知識の中で、特に毎年3月に行われる臨床工学技士国家試験に頻出の内容について、基礎的な内容から難しい内容までざっと復習しようといったものがテーマです。
私やMoegiが現役時代よく目にしていた問題についての関連知識をまとめていきます。内容的には「生体機能代行装置学」と「臨床医学総論」が混ざった感じでしょうか。
この記事は普段の記事と違い、解説というよりはまとめノート風にポイントを絞って解説しています。
またキーワードが出てきたら、そのキーワードに沿ったキーワードに飛ぶみたいな構成にしてあります。
どれも国試には出る内容なので、体系的に一挙に網羅したいという方向けです。
国試対策の体裁を取りましたが、ACE阻害薬と陰性荷電膜の話とか、現役の方にも普通に復習になる内容になったかも知れません。。。
レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系(RAA系)
RA・RAA系の作用機序およびキーワード
なんらかの要因(薬剤性・生理的要因)での血圧の低下が作用機序となります。
血液透析患者の場合、透析中の過度の除水などもリスク因子として挙げられます。
- 輸入細動脈の灌流圧低下
- 遠位尿細管緻密班領域の尿流量減少(Cl– 濃度低下)
- 交感神経活性化
⇨輸入細動脈の傍糸球体細胞によるレニン分泌が亢進
※アンジオテンシノーゲンは主に肝臓でつくられますが、脂肪細胞でもつくられており、内臓脂肪の増加に伴ってその産生・分泌が高まり、血中濃度が増加します。
アンジオテンシノーゲン e-ヘルスネット
- ACE:アンジオテンシン変換酵素
-
ACEは血管内皮細胞(肺血管ほか)で合成される
※この記事にて後述しています
アンジオテンシンⅡは最終的に血圧上昇と循環血漿量増加を引き起こします
アンジオテンシンⅡは強力な末梢血管収縮作用をもつほか、副腎皮質でつくられるアルドステロンの分泌を促します
アンジオテンシノーゲン e-ヘルスネット
作用箇所 | 効果 |
---|---|
全身の血管 | 全身の血管を収縮させる |
脳(視床下部) | 下垂体後葉からのバソプレシンの分泌を促進する 口渇を増強して飲水行動をとらせる |
副腎皮質 | アルドステロン分泌を促進 |
腎臓ー近位尿細管ー | Naと水の再吸収を促進 |
腎臓ー輸出細動脈ー | 輸出細動脈を収縮させGFRを正常値に保つ |
表に示した通り、アンジオテンシンⅡの作用は多彩です。
上記の作用のうち、全身の血管を収縮させる作用は即効性がありますが、その他の作用は遅効性です。
特に次に示す副腎皮質からアルドステロンが分泌され腎臓で作用するまでには数時間以上を要します。
ここまでのレニン分泌からアンジオテンシンⅡ分泌に至る過程や、アンジオテンシンⅡの作用をレニン・アンジオテンシン(RA)系と呼びます
- アルドステロンとは
-
副腎皮質から合成・分泌されるステロイドホルモン
- アルドステロンの合成・分泌について
-
- RAA系
-
RA系によって産生されたアンジオテンシンⅡの作用により亢進
- 非RAA系
-
血漿カリウム濃度の上昇により亢進
- アルドステロンの作用
-
上皮型Na +チャネル(ENaC)を増加させ、ナトリウム再吸収と二次的な水の再吸収を促進
レニン・アンジオテンシン(RA)系からアルドステロンが腎集合管に作用するまでの一連の過程をレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系と呼びます。
ACE(アンジオテンシン変換酵素)・ACE阻害薬
ACEについて
ACEは血管内皮細胞(肺血管ほか)で合成される
先に述べた通り、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)系においてアンギオテンシンⅠをⅡに変換する際に必要な酵素である
またカリクレインーキニン(KX)系においてブラジキニンを分解する
ブラジキニンは血管拡張作用により降圧をもたらす
ACE(アンジオテンシン変換酵素)は総じて血圧を上昇させる効果を持つ
RAA系はともかくKX系は踏み込んだ内容なのであまり出ないかも知れませんが、後述の理由からブラジキニンは覚えておきましょう。
ACE阻害薬について
ACEを阻害することにより、RAA系が亢進しなくなる
⇨血圧の上昇を抑えることができる
また同時にブラジキニンの分解を抑制する
⇨血圧の上昇を抑えることができる
ACE阻害薬の適応症は「高血圧」と「心不全」である
陰性荷電膜との関係
積層型ダイアライザでお馴染みのPAN膜は強い陰性荷電を持つため、ACE阻害薬との併用は禁忌である。
陰性荷電膜について
積層型ダイアライザの特徴
ポリアクリロニトリル(PAN)膜は陰性荷電が強いことが特徴である。
陰性荷電の効能について
膜の陰性荷電によって炎症性サイトカインの吸着性能をもつ。
分子量が2万程度と大きいため、通常のHD・OHDF等では除去が難しいとされる(条件による)。
が選択されることが多い(AN69ST膜)
特定積層型であるPAN膜は維持透析下でサイトカインを吸着除去する有用な手段である
禁忌事項
繰り返しになりますが何度も言っておきます
陰性荷電を持つ膜と、ACE阻害薬との併用は禁忌である。
先ほどまでに述べたことの復習となりますが、まとめるとこうです。
- 陰性荷電膜と血液が接触することで、先述のカリクレインーキニン系によるブラジキニン産生が起きる
- 先述の通り本来であればACEがブラジキニンを分解する
- ACE阻害薬はブラジキニン分解を抑制してしまう
- 血管内にブラジキニンが増加、ブラジキニンの強力な血管拡張作用でショック状態に陥る
国試を問わず、臨床に出てからも必須の知識ですので、押さえておきましょう。
陰性荷電膜とACE阻害薬のアクシデント事例
PMDAでも数々のアクシデント事例の報告があります。
記事執筆時点の2024年2月に最新の報告がありましたので、周知しておきます。
一般的名称 | 販売名 | 製造販売業者 |
---|---|---|
積層型透析器 | H12ヘモダイアライザー | バクスター株式会社 |
選択式血漿成分吸着器 | イムソーバ | 旭化成メディカル株式会社 |
イムソーバTR | ||
吸着型血漿浄化器 | セレソーブ | 株式会社カネカ |
リポソーバー(LA-S) | ||
リポソーバーLA-15 | ||
吸着型血液浄化器 | レオカーナ |
出典:PMDA 2024年2月 ACE阻害薬服用患者に禁忌の血液浄化器の使用.PDFより
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