ー国家試験対策特集ー

下肢虚血の分類を理解する—Fontaine, Rutherford, WIfI—

CEじゃーなるではこれまでに、PAD(末梢動脈疾患)やレオカーナなど下肢虚血に関する記事を執筆してきました。

下肢虚血に関する分類はいくつも存在しますが、その中でも”Fontaine分類“や”Rutherford分類“に関しては、執筆してきた記事内でも何度か登場しています。

カテーテル業務で下肢EVT(末梢血管治療)に携わられている方では、患者カルテでも見かける分類でもありますので、下肢分類を理解することは重要と考えます

今回は、Fontaine分類やRutherford分類、そして2022年の『末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン』が改訂されてCLTIを考える上で重要となる”WIfI分類”について説明したいと思います

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目次

下肢虚血の分類について

下肢虚血や関連する重要な重症度分類を提唱年と共に以下に示します。

Fontaine分類、Rutherford分類、WIfI分類の3つ以外は、虚血肢の評価というよりも閉塞部位の解剖学的分類や糖尿病足病変の分類となります。

本記事では、虚血肢に関わるFontaine分類、Rutherford分類、WIfI分類の3つを中心に説明します。

  • Fontaine分類(1954年)
  • Rutherford分類(1986年, revised 1997年)
  • WIfI分類(2014年)
  • TASC分類(2000年, reviesed 2007 → TASC II)
  • GLASS分類(2019年)
  • Wagner 分類(1976年)
  • UT 分類(1982年)
  • PEDIS分類(2004年)
  • 神戸分類(2011年)
Moegi

その他の分類は、余裕があれば別記事に・・・。

Fontaine分類

Fontaine分類とは

Fontaine分類は、名の通りドイツのR. Fontain先生1954年に提唱された下肢虚血の重症度を評価する際に用いられるスケールとなります。

提唱された時代も時代なだけあり、非常にsimpleな分類となっています。

Fontaine分類簡易版
Moegi

非常にシンプルですね。

Fontaine分類詳細

非常にsimpleではありますが、現在もカルテに記載されるくらい使用度は高い分類となっています

実はFontaine分類II度は、間歇的跛行の程度によりIIaとIIbにさらに分類されます
治療例も含めて、もう少し詳しい表を示します。

Fontaine分類詳細版

ABIとの関連

LEADの診断では、足関節上腕血圧比ABI:ankle-brachial index)が有用でかつ簡便であるために利用されています

正常値を1.00以上〜1.40未満としており、0.90以下では主幹動脈の狭窄や閉塞を、1.40以上では動脈の高度石灰化の存在が疑われます

透析導入期LEAD合併患者では、約70%のLEAD患者が無症候だったということですが、間歇性跛行が無く、無症状のLEADとなればABI 0.90以下をFontaine分類I度としては良いのではないでしょうか

一応、相当ABI > 0.70がFontaine分類I度の範囲となるようです。

間歇性跛行との関連

IIaとIIbでは間歇性跛行の程度によって分類されており、そのborder lineは200mの歩行で間歇性跛行が生じるかどうかとなっています。

Fontaine分類は、有名でかつ簡便であり、側副血行路の機能を考慮された下肢虚血重症度分類であり、今でもなお利用されていますが、虚血の客観的及び定量的診断基準が定められていないのが欠点です。

というのも、重症な虚血肢でも症状が乏しい症例もあるからです。

Fontaine分類 IIaとIIbのborder line
  • IIa ・・・ 歩行距離200m以下では無症状(上限は難しいところだが、1000m)
  • IIb ・・・ 歩行距離200m以下疼痛出現
Fontaine分類における相当ABI
  • I   ・・・ 0.9〜0.7
  • II  ・・・ 0.7〜0.4
  • III ・・・ 0.4〜0.0
  • IV ・・・ 0.2〜0.0

【間歇性跛行】
間歇性跛行とはLEAD患者ではよく訴えのある症状で、一定の歩行距離によって、動脈の狭窄または閉塞部位によって臀部や大腿部、腓腹部に疼痛や腓返りのような症状が出現し、休息により症状が消失することが特徴です。

間歇性跛行を生じる患者は、安静時下肢血流は側副血行路(collateral flow)により正常に保たれているものの、運動負荷により下肢筋肉の酸素需要が増加状態では、狭窄や閉塞により酸素需要不足により疼痛が生じるのです。

Fontaine R, Kim M, Kieny R. Surgical treatment of peripheral circulation disorders.
Helv Chir Acta 1954; 21: 499–533.

Rutherford分類

Rutherford分類とは

Rutherford分類は、Robert B. Rutherford先生1986年に提唱され、 現在のものは1997年に改訂されたものです。

Fontaine分類と比較して、少しですが細分化されています。

Rutherford分類

【運動負荷試験】
いわゆる「トレッドミルテストTMT:treadmill test)」ですが、負荷強度が定められているようです。

“勾配12%、2[mile/h]を5分間歩行”という負荷強度となっています。

※1マイル=1.6km

Fontaine分類との違い

Fontaine分類の後半で述べましたが、臨床所見のみで下肢虚血を評価するFontaine分類は実際には重症虚血状態でも症状が乏しい症例もあります

Rutherford分類には客観的評価に基づく虚血重症度の 数値が定義されていますので、Fontaine 分類の欠点を補っている分類となっており、間歇性跛行や組織欠損例についてもより詳細に分類されています。

なお、Fontaine分類とRutherford分類を合わせて古典的虚血肢症候分類と呼ばれています

客観的基準として、以下の項目が用いられています。

Rutherford 分類の客観的評価項目
  • 足関節圧AP:ankle pressure)
  • 趾動脈圧TP:toe pressure)
  • 肺血管抵抗PVR:pulmonary vascular resistance)
  • 運動負荷試験による歩行距離

【皮膚灌流 圧(SPP:skin perfusion pressure)】
近年では、TPよりは皮膚灌流 圧(SPP)の方が検査としては用いられることが多いと思われます。

測定したい部位にレーザーセンサーとカフを装着し、皮膚表面から約1mmの深さの灌流圧を測定するというのが原理です。

SPPは虚血の診断、虚血性潰瘍や切断端における創傷治癒の可能性の評価にも有用であるとされており、SPPが30〜40mmHg未満では創傷治癒の可能性は低いとされています

SPP40mmHg以上であれば、その周辺の潰瘍治癒率は98%以上とも推定されています

Rutherford RB, Flanigan DP, Gupta SK, et al. Suggested standards for reports dealing with lower extremity ischemia. J Vasc Surg 1986; 4: 80–94.

Rutherford RB, Baker JD, Ernst C, et al. Recommended standards for reports dealing with lower extremity ischemia: revised version.J Vasc Surg 1997; 26: 517–538.

Fontaine分類とRutherford分類の対比

Fontaine分類とRutherford分類は、客観的指標の有無を除けば、非常に類似したGrade分けされています。

Fontaine分類とRutherford分類を対応させるように組み合わせることが可能です。

覚える際の参考にしていただければ幸いです。

Fontaine分類とRutherford分類の対応表

SVS WIfI分類

SVS WIfI分類とは

SVS WIfI分類は、アメリカ血管外科学会SVS:society for vascular surgery)が2014年に提唱された下肢予後推定と至適治療方針を”組織欠損(wound)“、”虚血(ischemia)“、”足部感染(foot infection)“の3つの観点から評価するためのスケールです。

通称、【ワイファイ分類】と呼び、”f”だけが小文字なのが正式であり、変換忘れではないことに留意してください。

2022年に『末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン』が改訂されたことにより、”CLI”が”CLTI”へと名称が変更になったことを受けて、CLTIの評価にWIfI分類を用いることになったのです。

そうです、とても重要な分類となっているのです。

Joseph L. Mills Sr et al, The Society for Vascular Surgery Lower Extremity Threatened Limb Classification System: Risk stratification based on Wound, Ischemia, and foot Infection (WIfI). J Vasc Surg. 2014;59:220-34.

何故、CLTI評価ににWIfI分類が採用されたのか?

WIfi分類の説明の前に、少し遠回りをします。

現在、世界の糖尿病人口が爆発的に増加しており、糖尿病時代へ突入しています
同時にPAD患者の糖尿病有病率も増加するのです。

さて、糖尿病の合併症にはどんなものがあったでしょうか。

糖尿病性腎症、②糖尿病性網膜症、そして、③糖尿病性神経症ですね。

糖尿病PAD患者の特徴に関して、以下の特徴があります。

糖尿病PAD患者の特徴
  • 主幹動脈に生じる血管病は、下腿動脈に好発する中膜硬化病変
  • 微小循環障害と伴う
  • 神経障害によって痛みの閾値が高くなって、虚血や創傷の発見の遅れが生じ得る
  • 神経障害を合併する足部変形を伴うことがある
  • 易感染状態となる

「重症下肢虚血の診断・分類 ―その歴史的変遷―」, 東 信良, 日本血管外科学会雑誌 2018; 27:187-195

ということで、糖尿病患者がPAD発症すると、より下肢末梢へ病変が発症しやすくなるとともに、神経障害により気付いた時には潰瘍・壊死が生じているという状況に陥りやすいのです。

そして、一度生じた潰瘍などの組織欠損は治癒が遅く、容易に感染を引き起こす状態になっているというわけで、下肢切断を余儀なくされるか、感染により亡くなられるというケースとなのです。

また、PAD発症から下肢状態の増悪までの経過は、糖尿病の有無で異なります

糖尿病の合併により、Fontaine分類やRutherford分類のように上から順番に増悪するのではなく、間欠性跛行や安静時疼痛を経験せずに、一気に潰瘍・壊死を発症する割合が増加すると言われています。

糖尿病時代の下肢虚血の評価を「組織欠損」、「虚血」、「足部感染」の3要素で評価することになり、社会的背景の変化よりCLIからCLTIへガイドライン改訂が実施され、CLTIの評価に「組織欠損」、「虚血」、「足部感染」の3要素を用いるWIfI分類が用いられることとなったのかもしれません。

Moegi

私が何度も言うように、”透析“と”下肢虚血“、そして”糖尿病“はセットで考えていく必要があるのです。

Wound grading(W分類)

Wound grading(W分類)では、”組織欠損“の評価をします。

“0~3″の4段階のグレードに分類されています。

ポイントは、“潰瘍なし”、”壊死なし”のGrade0であっても、臨床的描写では虚血性の安静時疼痛を認めているという点です。

特に踵の創というのは、治療が難しく予後が不良であるので、Wound gradingでは踵に注目しており、踵の潰瘍や壊死は重症で扱われるようになっています。

Wound grading(W分類)

もし、創傷の状態が2つのグレードに跨る場合には、最終的に”臨床的描写“がどちらのグレードに当てはまるかの決め手となります。

Ischemic grading(I分類)

Ischemic grading(I分類)では、”虚血“の評価をします。

評価項目は、ABI(ankle-brachial index:足関節上腕血圧比)、AP(ankle pressure:足関節血圧)、TP(toe pressure:足趾血圧)、TCPO2(transcutaneous oxygen tension:経皮酸素分圧)となっております。

Grade2や3が以前のCLIに相当します。

虚血の有無ではなく、虚血の重症度が重要であるのですが、例えばAPが正常でも石灰化のためにAPが当てにならないことや、beloew the ankle arterial diseaseの場合もあるので、TP、TCPO2、そしてSSPなどで総合的に評価します。

Ischemic grading(I分類)

SPPをWIFI分類へ対応させられるのか?

CLTIの虚血の評価というのは、測定条件により影響を受けるので、AP、TP、TCPO2だけではなく、SPP皮膚灌流 圧:skin perfusion pressure)と組み合わせて虚血重症度判定の精度の向上が期待されます。

しかし、WIFI分類ではSPPによっては定義や分類はされていませんが、SPPは日本では広く普及されているため、日常的にCLTIをWIfIのgradeで評価する上でSPPを利用できないのは不便なのです

TP、TCPO2、そしてSPPは相互に概ね良好な相関を有しており特に足趾レベルで石灰化病変を持つ透析患者では、各種測定法の中でもSPPが最も虚血重症度の診断能が高いとも報告されています

そのため、『末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン』では、SPPに関するエビデンスを集積して、WIfI Ischemic gradingに対するSSP値が提唱されています。合わせて提示させていただきます。

WIfI Ischemic gradingに対するSPP値

Yamada T, Ohta T, Ishibashi H, et al. Clinical reliability and utility of skin perfusion pressure measurement in ischemic limbs ̶Comparison with other noninvasive diagnostic methods.
J Vasc Surg2008; 47: 318-323.

Okamoto K, Oka M, Maesato K, et al. Peripheral arterial occlusive disease is more prevalent in patients with hemodialysis: Comparison with the findings of multidetector-row computed tomography. Am J Kidney Dis 2006; 48: 269-276.

foot Infection grading(fI分類)

最後の3つ目foot Infection grading(fI分類)では、”足部感染“の評価となります。

虚血というのは、感染を複雑にしたり感染を重症化したりすることがあります。

さらに全身性の感染時には、foot Infection grading(fI分類)の表には無い兆候が出現することがあります。
例えば、血圧低下、錯乱、嘔吐、あるいはアシドーシスや低血糖、高窒素血症などの代謝異常などがあります。

foot Infection grading(fI分類)

下肢重症度評価(Limb staging)

CLTIの下肢虚血重症度評価にはWIfI分類の使用が推奨されるようになりました。

ここまでで3つの評価項目でGradeが設けられており、いよいよ3つの評価項目を組み合わせて、下肢重症度をstage化します。

下表は3つの項目の組み合わせで、下肢虚血の重症度の診断1年後の”大切断率“と”血行再建の必要性“が5段階の臨床stageに分類されます。

虚血重症度と血行再建の有効性に関して、大切断のリスクと必ずしも一致しているわけではないため、大切断のリスクとは別に血行再建の有効性の有無がWIfI stageとischemic gradeで層別化されています

予測1年後大切断リスクに基づく米国血管外科学会WIfI 臨床的下肢ステージ:末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
※ガイドラインの引用元:東信良「包括的高度慢性下肢虚血の診療に関する Global Vascular Guidelinesポケットガイド日本語訳版」
WIfI分類のstage化
  • Clinical stage 1 ・・・ Very low risk(非常に低い)
  • Clinical stage 2 ・・・ Low risk(低い)
  • Clinical stage 3 ・・・ Moderate risk(中程度)
  • Clinical stage 4 ・・・ High risk(高い)
  • Clinical stage 5 ・・・ Unsalvageable limb(救肢不可能)

虚血重症度とWIfI stage からみた血行再建の有用性:末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
※ガイドラインの引用元:東信良「包括的高度慢性下肢虚血の診療に関する Global Vascular Guidelinesポケットガイド日本語訳版」

さいごに

以上で、下肢虚血分類の解説となります。

Fontaine分類とRutherford分類は言わずもがな、日本でも広く普及して使用されており、心臓カテーテル業務でEVTに従事する際だけではなく、透析患者の下肢虚血にも大いに関わるので覚えておいて損はありません。

また、ガイドライン改訂でWIfI分類もCLTIの評価する上で重要となったため、こちらも合わせて覚えてみてください。

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この記事を書いた人

職歴
現大学病院勤務
取得資格
臨床工学技士(CE)、ITE 心血管インターベンション技師、ME1種検定試験

得意領域
カテーテル、アフェレシス、内視鏡、機器管理

大学病院での幅広い勤務実績をもとに、臨床工学技士業務全般執筆しております。
1児のパパでもあり、子育て情報も発信していけたらと思います。

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