前回の記事では、大腿膝窩動脈(FPA)高度石灰化病変の治療方法として新たに登場した、アテローム切除アブレーション式血管形成術用カテーテル「JETSTREAM」の概要と適正使用指針について解説していきました。
JETSTREAMの【適正使用指針】についてはこちら
本記事ではJEATSTREAMのデバイスの構成・カテーテルスペック・必要物品・セットアップの内容など、より臨床使用に即した内容を解説したいと思います。
JETSTREAMシステム構成
JETSTREAMのシステム構成は以下の通りになっております。
JETSTREAMシステム構成:Boston社提供資料
デバイス形状及び構造
カテーテル先端はfront cuuutingを採用されており、5枚のカッターが1分間に約7万回転することで狭い石灰化病変でも切削することを可能にしています。
また、注入ポートより生食を灌流させ治療部位の粘性を下げ、吸引ポートにより能動的に吸引を同時に行うことにより切削片を吸引することで切削片によるdistal emboli(末梢塞栓)を生じにくくさせます。
デバイス形状及び構造:Boston社提供資料
カテーテルは2種類存在し、エクスパンダブルブレードが搭載されて1本のカテーテルで切削サイズの変更が可能なXCカテーテル(eXpandable Cutter)と、エクスパンダブルブレードが搭載されていない細径カテーテルであるSCカテーテル(single Cutter)があります。
XCカテーテルとSCカテーテル:Boston社提供資料
エクスパンダブルブレード:Boston社提供資料
エクスパンダブルブレードが収納/展開可能な構造はいいですねー。
カテーテルのスペックとサイズ選択
カテスペック
以下にカテスペックを示します。
ディスタルカッター径とエクスパンダブルブレード径:Boston社提供資料
XCカテーテルとSCカテーテルスペック:添付文書参照
カテサイズ選択
病変近位側の対照血管径によってカテのサイズ選択をします。
カッタータイプ及びサイズにより適合する対照血管径が異なりますので、各モデルにおける「病変近位側の対照血管径」を下回る血管径へ使用しないよう注意してください。
病変近位側の対照血管径:添付文書参照
メーカー指定の必要物品
コンソールとXCカテまたはSCカテ以外の必要物品について、メーカー指定のものががあります。
併用医療機器
- Thruway 0.014in(0.36mm)×300cm
Thruway .014パッケージ:Medical ecart.comより
必要医療機器
灌流液
ヘパリン無添加生理食塩液(室温調整に限る)
※推奨サイズ:1000mLバッグ
シースイントロデューサ
7Fr以上(内径2.5mm)
トイボーストバルブ(回転式止血バルブ)をシースイントロデューサと併用しないこと。
バルブによる固い締め付けにより、カテーテルがキンクし、灌流液の注入が止まるおそれ及びアウターシースが破損するおそれがあります。
造影剤
推奨:50/50の生食/造影剤
治験などで安全性が確認されている組み合わせということですね。
コンソール概要
コンソール本体はRota proとDiamondbackを合わせたような構造ですね。
コンソール各部名称です。
コンソール各部名称:Boston社提供資料
ディスプレイ部名称:Boston社提供資料
カテーテルセット概要
カテーテルセットの各部名称を示します。
カテーテルセット各部名称:Boston社提供資料
コントロールハンドル詳細
コントロールハンドルは、XCカテとSCかてとではボタンの有無で異なります。
コントロールハンドル詳細:Boston社提供資料
セットアップの流れ
では、簡単にdebulkingまでのセットアップについて説明します。
①コンソール準備
コンソール背面のクランプを用いて、点滴スタンドにコンソールを取り付ける。
転倒する恐れがあるため、コンソールは床から 1.5mを超える位置に取り付けないように
コンソール取り付け:Boston社提供資料
②電源on、コネクタ接続
コンソール前面右上の電源ボタンを押して主電源をオンにする。
電源on:Boston社提供資料
清潔野よりカテーテルセットとコンソールの接続コネクタ部を受け取り、上の赤い点の位置を合わせ接続する。
コネクタ接続:Boston社提供資料
③必要品取り付け
吸入ポンプ及び注入ポンプのドアを開き、 チューブをそれぞれのローラに掛けるようにバトンを取り付ける。
バトンを取り付けたらポンプのドアを閉じて、回収バッグをポンプ下のフックに吊るす。
バトン取り付け:Boston社提供資料
④灌流液バッグの取り付け
無菌操作により、注入チューブのスパイクを灌流液バッグに挿入し、点滴スタンドに 灌流液バッグを吊り下げる。
流液バッグ取り付け:Boston社提供資料
⑤注入チューブの取り付け
注入用チューブを気泡検出器に挿入し、上下にフロッシング動作を行いチューブが奥までしっかりと挿入されているかを確認する。
気泡検知器へ装着:Boston社提供資料
⑥プライミング
- カテーテル先端を生理食塩液の入った容器にゆっくりと入れる
- コンソールのプライミングボタンを押す。
プライミング中は、カテーテル先端を 生理食塩液に浸した状態に保つこと。
プライミングが完了するとコンソールから ビープ音が鳴り、コンソールの注入ランプが緑色に点灯する。 - 点灯までXCカテーテルは約50秒、SCカテーテルは約70秒待機する。
- プライミングが終了したら、カテーテル先端部から気泡が出ていないことを確認する。
- プライミングが正常に終了しない場合は、コンソールのプライミングボタンをもう一度押してプライミングを繰り返す。
プライミング開始:Boston社提供資料
プライミング中は作動音がします。
またコントロールポッドの吸気口(下画像赤矢印) から生理食塩液の漏れがありますが異常ではありません。
コントロールポッド水漏れ:Boston社提供資料
⑦体外テスト
- プライミングの終了後、ガイドワイヤをガイドワイヤクランプ(GARD)に差し込む。
- 【SC カテーテルの場合】コンソールのMIN TIPの点灯を確認する。
【XC カテーテルの場合】ブレードアップスイッチを押して、コンソールのMAX TIPの点灯を確認する。
その上で、ブレードダウンスイッチを押してMIN TIPの点灯を確認する。 - カテーテル先端部を生理食塩液に浸した状態で、作動スイッチを押し続ける。
容器内の生理食塩液の動きを観察して、カテーテル先端部が回転していることを確認する。 - 作動スイッチを離して、システム内に気泡が入らないように吸引チューブ内への流れが完全に停止してから カテーテル先端を生理食塩液の容器から取り出す。
ディスプレイ部名称:Boston社提供資料
コントロールハンドル詳細:Boston社提供資料
⑧ワイヤクランプ
- 病変通過したガイドワイヤが血管の真腔内(true)にあることを必ず確認する。
- ガイドワイヤをカテーテル先端部からカテーテル内腔に通す。
- カテーテルをシースイントロデューサに挿入し、標準的なオーバーザワイヤ操作により ガイドワイヤの先端を固定させながら、病変部から約1cm手元側の正常な血管 部位までカテーテル先端部を進める。
- ガイドワイヤをGARDにクランプして治療を開始する。
ワイヤクランプ:Boston社提供資料
クランプ時の注意
- クランプ時はガイドワイヤのループを出来るだけ小さくする。
- ループはカテーテルを前進させると大きくなり後進させると小さくなるが調整は不要。
クランプ時の注意:Boston社提供資料
左:理想のクランプ状態、右:クランプ時のループが大き過ぎる状態
治療方法(コントローラ使用方法)
セッティングの話が終わったので、実際のコントローラパッドの操作を解説します。
Boston社提供資料
Boston社提供資料
より大きな径が必要な場合は、ブレードアップスイッチを押してブレードを 広げます。
Boston社提供資料
Boston社提供資料
この際広がっていたブレードは自動的に折り畳まれます。
カテーテルの作動時間が10分を超える場合、新しいカテーテルに交換してください。
回収バッグが満杯になった場合も同様に交換します。
Boston社提供資料
さいごに
以上で、JETSTREAMのデバイスに関する概要と使用上の注意点の解説でした。
CEとしてのセッティングはさほど難しくはありません。
次回、「安全に使用するためのコツ」と言いう内容でPart3を執筆します。
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