この記事では「心血管インターベンション技師(ITE)制度」について解説しようと思います。
私Moegiも取得している資格ですが、申請に必要な書類など一体どのようにしたら取得できるのか解説していきます。
心カテ業務に従事されている方で、ITEの取得を考えていらっしゃる方は是非参考にしていただけると幸いです。
非常に面倒な書類が1つあるため、受験資格である満3年を経過するまでにしておいた方が良いことも説明しております。
心血管インターベンション技師(ITE)制度とは
心血管インターベンション技師制度(Intervention Technical Expert:ITE, 以下ITEとする)は、日本心血管インターベーション治療学会(CVIT:Japanese association of Cardiovascular Intervention and Therapeutics, 以下CVIT)独自の資格認定制度です。
ITE制度規約から、ITEは専門知識と技術を備えてカテ室で積極的に従事している臨床工学技士および臨床検査技師を育成することを目的としているわけです。
ITEの試験スケジュールは?
事前に申請年度までの年会費を納入している必要があります。
5〜7月頃受付開始(※)
10月初旬に申請受付開始
3月初旬に試験
4月中旬以降合否発表
といった流れとなっています。
(※)ITE試験の申請受付は10月からですが、受験要件であるITE講習会の受付が締め切られているケースが多々あるため注意が必要です。
ITE講習会の受付は年によってバラバラなので、5月ぐらいから毎月確認しておいた方がいいでしょう。
少なくとも6月中に一度は見ておくことをお勧めします。
最新の受験情報は公式ページをご参照ください。
https://www.cvit.jp/_assets/expert/ite/exam/manual.pdf
ITE取得までにかかる諸費用
ITE取得までにはいくつかの諸費用が必要です。順番に解説していきます。
- CVIT年会費
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ITE取得には、まずCVITの会員になる必要性があります。
年会費として2,000円かかりますが、他の学会より良心的な年会費かと思われます。
- ITE講習会 講習費
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現在はCVIT e-ラーニングシステムにて、受講料4,000円(+システム料金200円)で受講可能です。
講習会はCOVID19が流行る前までは、名古屋や神戸など毎年会場が変わっており、先着順で受講料は6,000円(+システム料金200円)でした。
MoegiCOVID19情勢が落ち着いてきたら、また現地受講となるのでしょうか・・・。
- ITE試験 受験料
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受験料は6,000円になります。
書類審査が通過すると受験料請求書が郵送されます。
- 認定登録料
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認定登録に2,000円要します。
ITE試験合格し、認定されれば請求書が郵送されます。
- 更新費用(習得後の維持費)
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認定更新審査料6,000円、認定更新登録料2,000円がかかります。
ITE認定条件
- 必要国家資格
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臨床工学技士免許または臨床検査技師免許を有すること。
看護師と診療放射線技師は資格対象外です。
ただし、看護師は「インターベンションエキスパートナース(INE)」、
診療放射線技師は「日本血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師(JAPIR)」
という認定制度があります。 - 必要経験
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1. 臨床工学技士免許または臨床検査技師の職務経験が満3年以上(合算OK)
2. CVIT専門医or認定医の下で5年間に200例以上の心血管インターベーション治療補助経験を有する
ただし、過半数の100例以上はPCIの治療補助経験が必須です。
- ITE講習会受講
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ITE講習会を申請前の2年間で1回以上受講していること
- CVIT入会
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CVITコメディカル会員であり、申請年度までの年会費を納入していること
【ITE制度細則 資格の認定】
認定を受ける条件はこちらへ
ITE 認定審査
認定審査内容は至ってシンプルです。
①申請資格を満たしていること。
②十分な内容の経験を有すること。
③資格試験において、一定の評価が認められること。
ITE 提出書類について
以下が提出で必要な書類となります。
提出書類ごとにファイル形式が指定されていますので、よく確認しましょう。
それぞれについて簡単に説明します。
- ① 心血管インターベンション技師 新規申請書
- ② 経験症例証明書
- ③ 証明者証明書
- ④ 臨床工学技士もしくは臨床検査技師の資格免許証
- ⑤ ITE講習会受講証
ITE 新規申請書
認定試験の申請書とチェックリストです。
チェックリストがあるので、最後にアップロードします。
私の時は両方を1つのPDFファイルで提出と指定されていました。
経験症例証明書
記入項目は下画像のピンク枠部分になります。
画像左上には氏名、会員番号、所属施設を記入します。
画面左側は症例実施施設と証明者会員番号を入力します。
最も重要なのが画像右側列の経験した心血管カテーテル治療の記入欄です。
経験症例の記入についてもう少し詳しく説明します。
経験症例証明書記入内容は?
経験症例の記入欄は大きく分けると以下の3つです。
経験症例記入項目
◇ 症例施行日(西暦/月/日)
◇ 診断名
◇ 手技の種類
診断名と手技の種類はプルダウンリストとなっており、その他を選んだら自分で入力しなければなりません。
診断名と手技の種類はプルダウンリストは以下の通りです。
◆ 診断名 ・・・ ACS、OMI、AP、SMI、PAD、その他
◆ 手技の種類 ・・・ PCI、EVT、SHD、その他
ITE制度細則より抜粋 こちらへ
治療補助として認められるのは以下の手技です。
- PCI(経皮的冠動脈インターベンション)
- EVT(末梢血管インターベンション)
- 大動脈ステントグラフト(EVAR、TEVAR)
- Structural Intervention(構造的インターベンション)
- 小児先天性心疾患に対する医インターベンション
不整脈に対するアブレーション、IVCフィルター留置及び抜去、tPM留置など一時的な予防的カテーテル手技は認められません。
経験症例入力例
先程も言いましたが、この書類の入力が1番時間のかかる面倒な書類です。
自分が心カテに従事した勤務記録を調べること、対応した200例分を電子カルテで一人一人の患者さんの診断名、症例実施日と治療内容を調べる必要があります。
PCIだけでも、ACS、OMI、AP、SMIのどれなのか、カルテの診断を見る必要がありました。
もちろん、心カテ用のデータベースを作成されているならば、まだ作業時間は短縮されるでしょう。
私は当直日の空き時間を利用して、半日くらいで入力を完了させました。
幸い、CE用のカテ記録データベースがありましたので、治療だけソートすれば良かったのです。
200例の治療補助経験を入力するにあたっての注意点は、過半数の100例以上はPCIであることです。
私の場合ですが、2年目の時点で既に余裕で200例を経験していたので、患者調べはスムーズでした。
記入内容の割合ですが、日付順に記載すると7割がPCI、2割がEVT、残りがBAVやASDOなどで自然と埋まりました。
PCIやEVT以外の症例を記入使用として、どう記載したらわからない場合は、悩むくらいなら無難にPCIやEVTを記入すれば良いと思います。
私が記入した例を抜粋して記入したものを画像でアップしておきます(日付は適当です。)。
参考にしてください。
現在なら、TAVIやMitraClipなどもカウントできそうですね。
証明者証明書
証明者とは、経験した症例を証明してもらうCVIT認定医、専門医、名誉専門医の先生から会員番号を教えていただき、直筆サインと捺印をいただきます。
注意点は、症例施行日が先生の認定期間内であるということです。
PDFファイルにてアップロードします。
えっ?わざわざスキャンしてPDFにしないといけないの?と最初は思いました。
臨床工学技士もしくは臨床検査技師の資格免許証
臨床工学技士 or 臨床検査技師の免許証をスキャンします。
PDFでアップロードです。
ITE講習会受講証
現在は自動的にe-ラーニングで紐づいているのでしょうか?
ここは不明です。
私の時は、ITE講習会受講証をPDFでアップロードしました。
ITE講習会
先述した通り、COVID19の影響で直近2年(2022年度、2023年度)はe-ラーニングにて講習会を受講することになっています。
もしかすると、COVID19情勢が落ち着いてきたら現地受講になるかもしれませんね。
しかしとてもとても眠い講習会でした・・・。こんなこと言ったら怒られますが、この講習会は個人的には正直無駄な時間でしたので、e-ラーニングで良いと思います。
ITE試験について
さて、ここが一番皆さんが気になるところではないでしょうか。
本番の専門試験ですね。全部で50問が出題されます。
出題範囲
試験内容はITE講習会テキストから出題されます。
ダウンロード方式ですが、パスワードが必要となります。
ITE講習会受講者へパスワードが郵送されます。
内容は広義の意味で「カテーテル」全般に関わる内容です。
以下にITE講習テキストの目次を記載させていただきます。
- ITE の意義と今後の展望
- 心臓の解剖・生理,心臓カテーテル検査と PCI
- 合併症対策~カテ室での危機対応(PCI 合併症)BLS・ALS
- 末梢動脈疾患(Peripheral Artery Disease:PAD)
- 実技編:IABP,補助循環デバイスの基礎
- 実技編:除細動装置・ペースメーカ・ポリグラフの基礎
- 実技編:イメージングデバイスの基礎(IVUS、OCT、血管内視鏡、FFR)
- 実技編:PCI デバイスの基礎
- 実技編:ロータブレーターの基礎
- 放射線被ばく、放射線皮膚障害
過去問は?
どんな問題かわからず、初見勝負!!・・・という風にはならないのでご安心ください。
CVITのサイトには、ITE過去問が第1回からダウンロード可能となっております。
もちろん、パスワード不要で。
【ITE試験過去問】
こちらからCVITの過去問がダウンロードできます。
受験会場
やはり、COVID19の影響で会場受験から自宅受験へと変わりました。
不正防止のWebカメラの準備など環境を整える必要はありそうです。
ITE認定更新
残念ながら認定資格のため、定期的に更新手続きが必要となります。
認定期間は5年ですので、5年ごとに更新します。
更新の申請条件と必要書類は以下の通りです。
- 更新の申請条件
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- CVITのコメディカル会員であること
- ITEスキルアップセミナーを5年間で8講座受講していること
- 5年間でCVITが認定する学会、セミナー、研究会にて50単位を取得すること
- 更新必要書類
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- 更新申請書類一式
- 単位取得を証明する資料
- 諸費用
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- 認定更新審査料 6,000円
- 認定更新登録料 2,000円
CVIT年次学術集会への参加で20単位、地方会参加で10単位ですので、毎年参加さえしていれば普通にクリアしますね。
忘れずに参加証は保管しておきましょう。
ITEを実際に取得して・・・
実際にITEを取得した感想を述べたいと思います。
申し込み期間の確認
認定審査、ITE講習会、ITE試験それぞれ申し込み受付け期間が異なることに注意してください。
全て年1回の開催です。逃したら1年待たないといけません。
経験症例は記録をしておく
説明した通りですが、経験症例証明書の記入は非常に時間がかかります。
もし、ITE取得を考えているのであれば、実務経験3年目の時に慌てて症例を調べるのではなく、症例を経験する度に「日付、診断名、治療法」をその都度記録しておくことをオススメします。
当院のようにカテのデータベースなどがあるならば半日程度で終えられるくらい比較的早く調べられますが、人によればカテ業務を担当した日はいつなのか・・・というところから調べる必要があります。
取得意思があるならば、早い段階から記録をしておきましょう。
試験難易度は?
ぶっちゃけ、簡単です。
先輩方からも、「あの試験で落ちる奴はマズいやろ」、「普通に受かると思うよ!」・・・と聞かされていたのでどうかとは思っていました。
実際過去問を見ても、3年間カテ業務に従事していたらほぼ解答できる難易度です。
強いていうならば、Fontaine分類やRutherford分類、TIMI灌流度分類などの分類、放射線に関する知識、CASなど脳領域の内容は、あやふやになりがちですので、しっかりと勉強しておくのが良いでしょう。
取得して意味あるの?
正直無いと思います。
ただカテの知識ありますよーという証明ですね。
これならITE取得するよりはME1種を取得する方が価値がありそうな気はします。
さいごに
以上、ITE認定制度に関する記事でした。
散々ITEについて持ち上げといて最後のオチはどうかと思いましたが、「資格取得する意思がある」「向上心を示す」といった面では有用かもしれませんね。
私はカテ大好き人間ですので、皆さんにも是非カテ業務に入って欲しいと思っています。
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