前回は、DFPPの概要と血漿成分分画器(2次膜)について解説しました。
本記事では、DFPPの処理量と置換液についての解説をします。
患者さんの抗体価の下がり度合いに影響するであろうDFPPのメインとなるパートとなる予感がします。
数値ばかり登場しますので、覚えるのは大変かと思いますがよろしくお願いします。

処理量について
では、処理量について説明します。
処理量の算出方法、基本的なターゲットとなるIgGの除去率などについて解説します。
処理量の算出方法
処理量の算出方法については、PEと同様で置換液量は、患者の循環血漿量を基にして処理量を決めます。
循環血漿量は患者の体重(Bwt)及びHct値(ヘマトクリット)から算出します。
算出された循環血漿量(PV:plasma volume)に1.0〜2.0の範囲で除去したい量に合わせて倍率をかけて処理量を決めます。
具体的な算出方法は、PEの処理量算出の記事を参考にしていただきたいと思いますので、申し訳ありませんが割愛させていただきます。

除去率の考え方
DFPPの除去率というと、基本的にはIgGを基に話を進めます。
PEは分離した血漿を全量破棄するのに対し、DFPPでは2次膜である程度体内へ戻ってきますので、DFPPの除去率に関しては1段階PEよりも劣ると思っていただければ結構です。
少し古いのですが、DFPPの処理量と置換液のベースとなる文献が出されていますので、1から勉強を希望される方はご参考にしていただければと思います。
私はそれらを噛み砕いてわかりやすくまとめる作業をさせていただいております。
「二重濾過血漿交換療法(DFPP)における至適置換液量・置換液アルブミン濃度」
君川 正昭, 江口 圭, 峰島 三千男, 寺岡 慧, 透析会誌 34 (9): 1227~1232, 2001
「置換液の使用方法と至適濃度設定法」
江口 圭, 日本アフェレシス学会雑誌 30(3); 234−242, 2011
では、PEの除去率から復習しましょう。
PEの処理量と除去率の関係は以下の通りです。
![]() |
DFPPの除去率はPEより1段階落ちる・・・と先程申し上げましたが、イメージとしては下の表となります。
PV×1.5倍からは除去率はあまり上がらないことにご注意ください。
つまり、PV×1.8やPV×2.0でのDFPPはあまりされないという認識で結構です。
![]() |
DFPPでは、1回あたりPV×1.2〜1.5倍の除去率60〜70%を目標に実施されることがほとんどのように思われます。
私としてもPV×1.5倍の処理量で先生へ条件を提示させていただくことが多いです。
Moegi提示させていただいた文献では、置換液とIgGの除去率の関連性が述べられています。
置換液の項で説明しようと思います。
処理量決定における注意点① — PEと同様に考える —
PEとの比較については次の記事で説明させいただくのですが、DFPPの処理量を決定する上での注意点をPEの処理量を決定する際と比較して説明したいと思います。
先程提示したDFPPの処理量とIgG除去率の関係性についてですが、あくまでDFPPの方が少し効率が落ちるというイメージですので、処理量の決定という観点ではPEと同様に考えていただければ良いです。
SePEではPEやDFPPよりは処理量を多めに設定しないといけないので、SePEの処理量の決定時と考え方が混同しないように注意していただきたいと思います。
処理量の計算は、PEと同等量で決定する。
処理量決定における注意点② — 凝固因子の損失 —
DFPPはPEと比較して、圧倒的に置換液量が少なくて済み、コストの面でPEより優位となります。
では、DFPPの最大のデメリットは何でしょうか。
それは、凝固因子の損失があることです。
具体的には、フィブリノゲンは体内に還元されず除去されてしまうのです。
以下がCascadeflo ECにおける分画曲線にフィブリノゲン(分子量:34万[Da])のライン(赤)を引いたものです。
Cascadefloの分画曲線とフィブリノゲン:旭化成社HPより改変,
https://www.am-blood-purif.com/product/cascadeflo/
分子量としましては、IgG(分子量:15万[Da])より大きく、IgM(分子量:95万[Da])よりは小さくなります。
上図の分画曲線よりフィブリノゲンの除去率は以下の通りとなります。
- EC-20W ・・・ 約95%
- EC-30W ・・・ 約90%
- EC-40W ・・・ 約85%
- EC-50W ・・・ 約70%
これを参考にすると、EC-20Wが主流のDFPPでは、分離した血漿中のフィブリノゲンはほぼ全てが破棄されることがわかります。
DFPP後はフィブリノゲンがかなり損失するので、出血傾向に注意します。
私はDFPP終了後に、患者さんへ「とても出血しやすい状態になっています。腕や脚を何かにぶつけると、内出血しやすいのでご注意ください。」と毎回説明しています。
また、DFPPは腎移植や肝移植前に実施することが多いので、術中の出血などを危惧される場合は、凝固因子の補充目的に病棟でのFFP投与を考慮していただきます。



VAがシャントの患者の場合は、止血にかなり時間を要することがあります。DFPP終了時ACTが300sec以上とかありますね。
置換液について
置換液量の理論
さて、置換液量の設定方法について、結論をパッと提示するのは簡単なのですが、少し遠回りですが置換液量の考え方について説明したいと思います。
文献提示
そこで登場するのが、先程提示させていただいた2つのDFPPに関する文献です。
これらの文献でDFPPの基本的な理論を学ぶことができます。
「二重濾過血漿交換療法(DFPP)における至適置換液量・置換液アルブミン濃度」
君川 正昭, 江口 圭, 峰島 三千男, 寺岡 慧, 透析会誌 34 (9): 1227~1232, 2001
「置換液の使用方法と至適濃度設定法」
江口 圭, 日本アフェレシス学会雑誌 30(3); 234−242, 2011
置換液量とIgG除去率の関係性
まず、DFPPの治療において鍵を握るのは、何と言っても”置換液量”です。
文献によると、IgG除去率と置換液量/体重比には、下図のような相関関係があります。
グラフより、IgG除去率50%、60%、70%、80%における置換液量/体重比が算出されます。
IgG除去率と体重あたりの置換液量の関係
江口 圭, 置換液の使用方法と至適濃度設定法, 日本アフェレシス学会雑誌 30(3); 234−242, 2011
- 除去率50% ・・・ 0.08[dL/kg]
- 除去率60% ・・・ 0.11[dL/kg]
- 除去率70% ・・・ 0.14[dL/kg]
- 除去率80% ・・・ 0.19[dL/kg]
文献中にも例が挙げられていますが、体重50[kg]の患者でIgG除去率70%を目標とするとき、置換液量は0.14[dL/kg]必要とされるので、
置換液量 = 0.14[dL/kg] × 50[kg]
= 7[dL]
= 700[mL]
となります。
ちなみに少しネタバレですが、50[kg]の患者でPV×1.5倍での処理量は、Hct 40%とした時、
処理量 = 50 / 13 ×(1 − 0.4)× 1.5
= 3.46[L]
≒ 3500[mL]
ですので、50[kg]の患者でIgG除去70%を目標とした時、処理量はPV×1.5の3500[mL]、置換液量700[mL]という設定なるのです。この時、置換液量は処理量の20%となります。



IgG除去率70%を得るためには、処理量はPV×1.5倍が必要という証明にもなりました。
置換液量早見表
文献より置換液量早見表というものが作成されており、体重、目標IgG除去率から置換液量を算出する便利な表です。
置換液早見表
江口 圭, 置換液の使用方法と至適濃度設定法, 日本アフェレシス学会雑誌 30(3); 234−242, 2011
先程の体重50[kg]、目標IgG除去率70%から置換液量が700[mL]ということで、体重あたりの置換液量0.14[dL/kg](IgG除去率70%時)に50[kg]を乗じて・・・という手間がなくなりました。
積極的に利用したい表ですが、私はこの表を一度も利用したことはないのです。
なぜなら、置換液量を先に決定するのではなく、処理量を先に決定してから置換液量を算出しているからです。
また、この早見表では患者のHct値を反映できないのです。



処理量を先に決定してから置換液量を算出している理由は後々判明してきます。
置換液量から処理量の算出方法
置換液量早見表で置換液量は早々に決めることができますが、では、処理量はどうしましょうか。
DFPPの条件の中には、「ドレーン率」というのを設定する必要があります(部分廃液法とも言います)。
このドレーン率はDFPPでは10〜20%の範囲に設定するのが教科書的なところでしょうか。
とはいえ、患者ごとに設定するのはかなり大変ですし、ドレーン率を下げると2次膜が詰まりやすくなりますので、実際は20%固定でも良いでしょう。
文献中の条件でも、”Qin= 25[mL/min],Qf=20[mL/min],Qout;Qs=5[mL/min] の部分排液法とする.”とありますので、元となるデータ収集はドレーン率20%でされているのが確認できます。
というわけで、処理量はドレーン率20%から算出可能です。
処理量 = 置換液量 / 0.2
置換液700[mL]ならば・・・
処理量 = 700 / 0.2
= 3500[mL]
となります。
先程、ネタバレしましたが、50[kg]の患者でIgG除去70%を目標とした時、処理量はPV×1.5ですので、
処理量 = 50 / 13 ×(1 − 0.4)× 1.5
= 3.46[L]
≒ 3500[mL]
どちらから計算しても処理量は3500[mL]となりますので辻褄が合います。
置換液の組成
では、置換液の組成はどうしましょうか。
こちらも置換液のALB濃度早見表が作成されております。
治療前アルブミン濃度とIgG除去率より算出する方式となっています。
置換液アルブミン濃度早見表
江口 圭, 置換液の使用方法と至適濃度設定法, 日本アフェレシス学会雑誌 30(3); 234−242, 2011
仮に治療前アルブミン値が3.5[g/dL]の患者で、目標IgG除去量を70%とした時、早見表より約10.0[g/dL]のアルブミン濃度の置換液を作成すれば良いということになります。
ここまでで登場した数値を使用して、置換液の組成を決めます。
必要なものは、リンゲル液と25%ALB製剤(12.5[g]/50[mL])です。
体重50[kg]、治療前アルブミン値が3.5[g/dL]、目標IgG除去量を70%とした時、置換液量は700[mL]、置換液アルブミン濃度は10.0[g/dL]と求められています。
アルブミン濃度10.0[g/dL]の700[mL]中にアルブミンは70[g]含有しているので
必要な25%ALB製剤は、
70 / 12.5 = 5.6[V]
となりますので、25%ALB製剤は切り上げの6[V]必要となります。
25%ALB製剤6[V]で300[mL]となりますので、リンゲル液は400[mL]必要となります。
施設によっては、損失分の電解質などを補充するために、5%Tzやカルチコールを追加しているところがあるかと思われますので、必要に応じて調整してください。
・・・というのが、文献を基にした置換液量の設定方法となります。



私はHct値を反映させるために先に処理量を決定してから置換液量を算出しています。
Hctを反映した処理量とは?
“Hct値を反映した処理量“という意味を説明したいと思います。
患者の条件は患者A:体重50[kg]、Hct 40%と患者B:体重50[kg]、Hct 30%とし、目標IgG除去率を70%にするためPV×1.5としますと、患者Aの処理量は
処理量 = 50 / 13 ×(1 − 0.4)× 1.5
= 3.46[L]
≒ 3500[mL]
となり、患者Bの処理量は
処理量 = 50 / 13 ×(1 − 0.3)× 1.5
= 4.04[L]
≒ 4000[mL]
となってしまうので、Hct値の10%の差で処理量が500[mL]も変わってくるのです。
こうなると置換液量は、患者A:700[mL]、患者B:800[mL]となるので早見表ではHct値を反映した条件とはならないのです。
あくまでも文献で提示されている早見表というのは、Hct値が40%前後の患者に適用されるものと言えるのです。



上記が理由で私は処理量から決定します。
さいごに
以上で、DFPPの処理量と置換液量の決定に関する理論の記事でした。
最後の終わり方を見ての通りなのですが、実は最後には私のDFPPの条件設定方法を執筆する予定でしたが、意外にも文字数が弾んでしまったので、別パートに分けることにしました。
つまり、本記事はDFPPの”治療条件設定の理論”、次回記事は”治療条件設定の決定版”という形式に無理矢理変更となってしまいました。
ですので、実際に私が実践しているDFPP条件設定は次回記事となります。
よろしくお願いします。
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