前回は臨床工学技士養成校に通う学生さん向けた、臨床実習についての記事を取り上げました。
今回は、TwitterのCE達の間でも話題になっている「実習指導」についてお話ししたいと考えています。
「臨床工学技士学校養成所指定規則」が定められているのですが、令和4年3月31日に改正・公布され、臨床実習の実施施設に配置している「臨床実習指導者」への条件に「臨床実習指導者講習会」の受講を求められることなりました。
そのため、TwitterのCE達の間で「臨床実習指導者」や「臨床実習指導者講習会」について話題が上がったわけですね。
この記事で、指定規則の改定に伴う臨床実習に関する変更内容など、資料が多岐に渡るためにまとめさせていただこうと思っています。
臨床工学技士学校養成所指定規則とは
臨床工学技士学校養成所指定規則(以下、指定規則)は、臨床工学技士養成校の指定を受けるための条件や養成校での必要単位数、臨床実習の実施内容といったことを定めている規則です。
この指定規則は昭和63年に制定されたもので、さらに昭和62年の臨床工学技士法を基準に定められたもので、現在にとってはかなり古い基準で教育内容を規定しているものになります。
臨床工学技士学校養成所指定規則についてはこちら
指定規則改定の趣旨
昨今、医療界の国民のニーズが増大と多様化が進んでおり、医学の技術が進歩したことで臨床工学技士業務においても、業務拡大をしたり、医療機器や術式・手技が複雑化かつ高度化されてきたりと、私達CEを取り巻く環境が日々変化しています。
そのため、CEに求められる知識や役割等も変化してきており、当時の指定規則や技士法制定時とは環境が異なります。
また、臨床実習の実施方法や指導環境、実習期間などが養成校や臨床実習施設で多様化しているため、CEのクオリティ向上、臨床実習の意義の見直し、そしてCEの卵の教育のクオリティを向上させることが求められるようになりました。
このニーズや知識、役割の変化に対応するために「臨床工学技士養成所カリキュラム等改善検討会」が実施されていました。
当検討会では、臨床工学技士養成所における教育内容の見直し検討がされ、令和3年に報告書が取りまとめられました。
この報告書を基に指定規則の改定が実施されたというわけです。
大学病院ということもありますが、年々先端医療、最新機器を取り入られ、当然のように年々業務拡大を実施されています。
・・・人員もっと欲しいです。
【今回の件で参照にしている文書等はこちら】
臨床工学技士教育施設協議会
指定規則改定のポイントは?
さて、カリキュラムなどが変更となって養成校の先生や学生さんが騒ぐのは分かりますが、一体何故、指導者クラスのCEの間で騒がれているのか・・・。
それは、指定規則第4条第1項第10号に「臨床実習を行うのに適当な病院を実習施設として利用しうること及び当該実習について適当な実習指導者の指導が行われること。」とあります。
この「適当な実習指導者」の臨床実習指導者の要件として、「臨床実習指導者講習会を修了した者」と定められてしまったことが始まりです。
【臨床実習の実施施設要件】
改めて確認するまでもありませんが、指定規則の改定に伴い、臨床実習の実施施設の要件として、「厚生労働省が指定した臨床実習指導者講習会を修了した者が在籍すること」となっています。
臨床実習指導者講習会受講条件
臨床実習指導者講習会を受講するための要件は以下の2点です。
①受講申し込みの時点で、臨床経験が4年以上のCE
②今後、実際に臨床実習指導を担当され、少なくとも3年以上は退職の予定が無い方
(各施設2人目以上は2025年度以降の会期への参加となるため)
・・・おっと、まだ同一施設では臨床実習指導者の認定は1人ずつなんですね。
【実習指導者に求められる能力は?】
臨床実習指導者講習会の受講条件は臨床経験が4年以上となっていますが、具体的にどのような人を選定すれば良いのでしょうか。
実は「臨床工学技士養成所指導ガイドライン」というものがあります。
そこには「実習指導者は、各指導内容に対する専門的な知識に優れ、医師又は臨床工学技士として5年以上の実務経験及び業績を有し、十分な指導能力を有する者であること。」と記載されていますが、指導者は医師でも良いんですね。
今回の改定されたガイドラインからは削除修正されているのですが、改訂前は「十分な指導能力を有する者」、具体的に「実習指導者は経験と実績を備えた教育者でなければならない」ということで、以下の学会認定資格を有することが望ましいとされていました。
◇ 透析技術認定士
◇ 体外循環技術認定士
◇ 呼吸療法認定士
◇ 臨床ME専門認定士 etc…
・・・とまぁ、施設には何かしら取得されている方はいらっしゃいそうですね。
【臨床工学技士臨床実習指導者講習会の開催指針について】
今後の開催
現時点(2023年7月)では、実習指導者講習会は2023年の1月、2月、3月開催されておりません。Zoom meetingによる完全オンライン開催となっており、各回50人程度の定員で、2023年1月〜2025年3月までは臨床実習施設ごとに1名のみ受講可能となっております。
なんと、現在は受講費は無料ですが、2025年4月以降は受講費が発生するようです。
日本臨床工学技士学会では2023年分の開催案内が出されております。
各回50人程度の定員ですので、早めに申し込むことをお勧めします。
日本臨床工学技士学会
今後の展開
現時点では「実習指導者講習」、「認定臨床実習指導者」との名称が使用されていますが、2025年以降ではそれぞれ「臨床実習指導技術研修会」、「公認臨床実習指導者」と変更されるようです。
また、「公認臨床実習指導者 」が在籍する医療施設を「公認臨床実習施設」として認定されるようです。
そして、この認定は「テクニカルスキルに関しましては医療技術の進歩とともに定期的なスキルのアップデートが必 要となることから、これまで同様 5 年ごとの更新といたします。」とのことですので、認定資格同様に更新が必要となります。
何よりも、2025年4月以降は受講費が発生するようです。
【臨床実習指導者および指導施設の認定制度について(お知らせ)】
実習指導者講習内容
実習指導者講習は2日に分けて開催されるようです。
簡単に受講内容を案内所そのままですが、紹介させていただきます。
◇ 講義1 「臨床工学技士養成施設における臨床実習制度の理念と概要」
【概要】臨床実習指導者講習会開催(以下、本講習会)の開催指針と経緯や目的、カリキュラムの改正(令和 4 年 3 月 31 日付)の中で特に臨床実習の概要について説明する。
◇ 講義2 「臨床実習の到達目標と修了基準」
【概要】改正された臨床工学技士養成課程のカリキュラムで、臨床実習に関わる内容の詳細を解説。明確になった到達目標や学生に必ず実施させる行為などを説明し、実際の実習を想定して討論する。
◇ 講義3 「臨床実習施設における臨床実習プログラムの立案」
【概要】教育工学におけるID(インストラクショナルデザイン)の考え方を基に、学生指導のみならず新人指導にも活用いただけるよう「学習者が学びに魅力を感じられる教育設計」および「指導 者が効率的かつ効果的に教授するための教育設計」の手法について解説する。
◇ 講義4 「臨床実習指導者の在り方(職業倫理・その他)」
【概要】臨床工学を取り巻く環境の変遷は社会の変容と関連し、それは他者との関係性の再構築も 求められます。本講義は臨床実習指導においてどのように実習生に相対すべきなのかを考え、新人教 育も含めた日常の指導の一助になることを目標にする。
◇ 講義5 「ハラスメントとその防止」
【概要】ハラスメント防止は、コンプライアンスの遵守、後進の育成、指導者と実習生双方の人権 と地位を守る観点から、非常に重要です。また、ハラスメントに該当する言動は、効果的、合理的な 教育・指導方法にはなりえません。この講義を通じてハラスメントの内容や影響を再確認し、その撲滅に努めましょう。
◇ 講義6 「臨床実習における学生評価」
【概要】診断的評価,形成的評価、総括的評価の3つの観点から臨床実習における学生評価の方法、陥りやすい問題点などについて解説します。後半の演習では,評価のためのチェックリストを実際に作りながら討論を行う予定です。
◇ 講義7 「コミュニュケーションの取り方(学生への配慮)」
【概要】コミュニケーションの取り方には、臨床工学技士を目指す学生の希望と不安に指導者とし て臨む受容性の問題と、医療者として患者にどのような対人態度で接するかを伝える主体性の問題が あります。本講義ではこれらの問題の解決に導くための考え方について解説します。
◇ 講義8 「臨床実習指導者及びプログラムの評価」
【概要】「臨床実習における学生評価」の講義で解説した内容を踏まえ、カークパトリックの4段 階評価モデルやメリルの ID 第一原理を紹介しつつ、実習指導者自身の評価、実習プログラムの評価 手法について解説します。
【講習プログラム内容】
臨床実習で指導する上で留意すること
今回のガイドライン等の改定で、臨床実習において学生に必ず実施させる行為、及び必ず見学させる行為の留意事項が追加になっております。
患者の安全の確保の観点から、学生が点検や組立て・準備などを行なった医療機器をそのまま臨床へ提供することはせず、必ず指導者に当たる者が自らの責任のもとで確認、また再度実施すること。
学生自らが患者に実施する実習内容を行う場合は、臨床実習指導者が患者の同意を得た上で実施すること。
・・・と、当たり前のことが記載されていますが再度周知をしましょう。
留意事項①について
状況として考えられるのは、透析のプライミングでしょうか。
実習生に組ませてそのまま使用するのではなく、通常通りのWチェックをスタッフで実施して、臨床利用しましょうということですね。
留意事項②について
こちらは、状況的には心電図電極の貼り付け、血圧のマンシェットを巻く、パルスオキシメータの装着など、比較的容易な行為をしてもらう際に、患者さんへ「申し訳ありません。学生さんに、勉強のために機器の装着等をさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。」という確認をした上で実施しましょうということですね。
ごくごく当たり前な内容ですが、念の為記載されている感じでしょうか。
カリキュラムの変更点は?
私達現場のスタッフにとっては、もはや関係の無い話かもしれませんが、今回の改定にてカリキュラムの見直しもされています。その内容も確認してみましょう。
一般社団法人日本臨床工学技士教育施設協議会「臨床工学技士学校養成所指定規則の一部を改正する省令の公布について」, 令和4年3月31日医政発0331第62号:https://www.chuohoki.co.jp/correction02/pdf/t_0331rk.pdf
上図から見て取れるように、必要単位数が93単位から101単位へ引き上げられていますね。
そして、一番注目すべきは臨床実習の必要単位数が4単位から7単位へ引き上げられていることです。
この改定により、約30日の1ヶ月だった臨床実習がほぼ倍の約2ヶ月要することになりました。
実習に関しては、期間が延びることで、現場スタッフの負担が増えるのはよろしく無いのですがね…。
さいごに
以上で臨床工学技士学校養成所指定規則の改定に関わる内容でした。
実習生を指導しながら業務をこなすのは、かなり負担となりますが、私は実習生と話ながら勤務をするのは楽しんでいます。
自分達も学生時代は臨床実習でお世話になっているわけですから、面倒臭がらずに今後の臨床工学技士を育てていくためにも、協力していかなければなら無いかと思います。
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