臨床工学技士 臨床実習に向けた心構えとレポートの書き方

本記事は、臨床工学技士(CE)の臨床実習へ向けた準備/対策すべきことをまとめた記事となります。

事前準備の内容は臨床工学技士の範囲ですが、実習に対しての心構えや姿勢というのは、臨床工学技士養成校の学生さんだけではなく、看護師、放射線技師、PT、OTといった方へも是非とも読んでいただきたい内容です。

質問を受ける割に学生さんの臨床実習のためのブログは全然見かけないな・・・ということで触れてみることにしました。

目次

はじめに

この記事の読者様はきっとこれから臨床実習を受けようとされている学生さんがほとんどかと思います実習前にすべきことは何か?ということがとてもとても気になって、さらに実習を乗り切れるかが不安かと思われます。

臨床実習で事前準備しておく内容や実習でこういうこと気になるのですが・・・といったところを私の実習指導経験と、実習初日のオリエンテーションで学生さんから質問のあった内容などを踏まえて実習対策記事とさせていただこうと思います。

実際、実習前に何をすべきか?という問い合わせもありました。
実際何を復習&追加の勉強をすれば良いのか困っている学生さんはSNSでそこそこ見かけます。

逆に事前学習をせず、してもサラッとしかせずに頭の中には入っていない、実習態度が悪いなどで怒られる実習生もまた多いのも問題です。

幸いにも筆者は実習生と関わることが多いこと、経験したことのない領域が不整脈くらいということで、各領域の予習ポイントを抑えたいと思います。

今のご時世だからといって、全ての指導者が優しいだとか、事前予習無しで怒られずに乗り切れるだとかそういうのは決してありません。
体罰こそないですが、決して緩い・温いなどということはないので十分に準備をして臨床実習に臨むようにしていください。

臨床実習とは

臨床実習は、臨床工学技士の国家資格を得るために必要なカリキュラムに組み込まれている、・・・簡単に言えば、実際の臨床の現場で行う授業です。

臨床工学技士養成課程における臨床実習について

2023年4月現時点では、養成校によって異なるとは思いますが、「血液浄化実習」、「集中治療室実習(人工呼吸実習を含む)」、「手術室実習(人工心肺実習を含む)」、「機器管理実習」を1単位ずつの計4単位を取得する必要があります。

日数としては、30日間や1単位8日ずつの32日間など、6週間程度の実習期間であると思いますが、後述の臨床工学技士養成所指定規則改訂に伴い、近年は様相が変わっているかもしれません。

臨床工学技士養成所指定規則改訂について】

上記で実習期間が6週間と述べましたが、実はSNS上でも噂になっている通り、「臨床工学技士養成所指定規則」が改定された影響もあり、臨床実習受け入れ施設要件として、「臨床実習指導者」が在籍する必要があることになりました。

この改定により、実習期間も改訂されました。
実習で必要な単位数が4単位から7単位へ変更となっており、約2ヶ月となりそうですね

実習教育内容も変更となっており、「血液浄化実習」が1単位、「呼吸療法実習」及び「循環器実習」が2単位、「治療機器及び医療機器管理業務に関する実習」が2単位です。

臨床実習指導者については別途記事にする予定です。

臨床実習と言いましても、実際に透析で穿刺をしたり、返血をしたり、人工心肺のweaningをさせられたりすることはありません。

基本的には、透析室の1日の流れ、人工心肺を使用する心臓血管外科の手術、心臓カテーテル治療、ICUでの臨床工学技士の動き・・・などを見学を行い、実習終盤になれば実際の血液回路を組み立ててプライミングをしたり、空き時間にIVUSやOCTを操作したり、国試対策のアドバイスを受けたりなどをしてもらうことになります。

臨床実習に対する私見

養成校の座学で基礎を叩き込んで、その机上の学問を実臨床の現場でどのように活かされるかを確認することになります。

国試対策の記事で述べたかもしれませんが、個人的には養成校の座学というのは所詮臨床工学技士として働くための基礎知識を学ぶ場であり、国家資格を取得するために勉強していると私は考えています。

血液透析のように学生の内に学んだ知識がそのまま活かすことのできる領域も存在しますが、基本的には日々新たな勉強必須となります

したがって、私の考える臨床実習の位置付けは、座学で学んだ机上の知識と実臨床で必要とされる知識とのギャップを認識して擦り合わせるためのものと考えています。

あとは、見学実習ですから、実際に臨床工学技士がどのように勤務しているのか、チーム医療として他職種とどのように関わっているのかを確認する場でもあると考えます。

そして、何よりも社会人としても振る舞いといった点も指導されるところも実習の一つかと思います。

実習を受けるにあたって

では、本題へ。
ほぼ私見的な要素は多いかと思いますが、多くの実習指導者が同じことを考えていらっしゃるのではないかと・・・そう思いたいです。

実習指導者が思うこと

実習指導者が実習生へ求めることは様々ですが、実習に来る学生は全て授業で学んできたという前提で実習を進めますので、最低限の知識は持っていると思って実習生と接します。ですから、質問したことにしっかりと返答してもらえる、プライミングなどを教えたらすぐにできる、レポートが綺麗にまとめられており内容もしっかり書けている、言葉遣いなどきっちりできている・・・といったところが「優秀な実習生」として接してもらえます。

指導者としては、通常業務に加えて実習生の指導も加わるため、言い方悪いですが手の掛からない実習生を好みます。

特に「おっ、そんなこと質問してくれるのか!!」といったadvanced的な内容の質問をしてくれる実習生は大好きですね。そういう実習生には、色々と+αで教えたくなります。

「教科書の基礎的な内容の質問だな・・・。」といった質問が多いと、淡々と説明をして終えるといった指導になりがちです。だって、教えても頭に残ってはおらず、レポートの内容も薄いことが多いですからね。

特にメモをあまり取らない実習生とかも印象悪くなりますので、最低限メモは取りましょう。
レポートが良く書けている実習生は好印象なことが多いです。

逆にペアで来ている実習生に質問しているのに、ズケズケと答えてくる実習生もマイナス印象です。
(いや、君がわかっているのは理解しているから、君は答えなくていいよと・・・。)

あと、実習生へ。私達スタッフは質疑応答しているやり取りで大体の模試や国試の点数がわかりますので・・・バレています笑

社会人・医療人として

実習指導者は、実習生が知識を持っているかどうかを観察していますが、やはり社会人・医療人としてしっかりと振る舞いができるかどうか、適性があるかどうかをチェックして、養成校へ評価表を提出しています。

Moegiの病院へ実習へ来る実習生も優秀な子から、ちょっと臨床の現場に出すのは不安があるぞ・・・という子など様々な実習生が来られます。

誰がどう見ても言葉遣いや見学態度が悪くて、私の上司からコテンパンに怒られた実習生もいますし、症例の見学中にいつの間にか居なくなり実は勝手にトイレに行っていました・・・という子もゼロではありませんでした。

そういう子は、やはり養成校へ報告が行き、担任の先生方が謝罪に来られるといった事態にも遭遇したことがあります。

勉強は国試に合格してしまえばいい、とは以前国試対策の記事で述べましたが、社会人としての人間性はきっちりとしておきたいものです。

せっかく国試には問題なく合格できる実力あるのに、臨床実習が酷すぎて単位落とされましたとか勿体無いですからね。

(つい本音と実際起きた事を書いてしまいます・・・。相方のチェックpassできるかな?笑)

編集部

・・・チェックPassしましたw
しかし実習がトラウマと化してる私には胃の痛い内容です

というわけで、以下に社会人としての注意すべき点をまとめます。
まぁ、先生に実習前説明会で散々聞かされる内容ではありますが大事なので!!

社会人としての振る舞いやマナー

遅刻・欠席をしないこと
  万が一、遅刻しそうになった場合は、必ず学校と病院へ連絡すること。

指導者や患者さんに対する立ち振る舞い、言葉遣いに気を付けること。

守秘義務を厳守すること。
  資料や情報を持ち帰る際は、指導者へ確認を。

積極的に質問をして、向上心を見せること。

レポートの提出期限は厳守すること。

愛想良く、明るい態度を取ること。

見学出来て当然というのではなく、学ばせていただいていることを忘れずに。

臨床実習のレポートについて

レポートをどう書けば良いのか、気になっている/困っている実習生は多いかと思います。

まずは、最低限守るべきことを挙げます。

レポートで気を付けること

教科書、参考書、webの丸写しは控えること。
 決して参考にしてはいけないということではなく、自身の文章で書くこと。
 そして、参考文献やURLは記載すること。

手書き、PCは問われないことが多いが最初に確認すること。

字は丁寧に書くこと。
  読んでもらうという意識を忘れずに。

誤字・脱字をしないように

単位が抜けないように
 「QB200」などと書く学生が多過ぎます。

図や表は多めに入れると◎
  手書きスケッチである必要はなく、印刷して貼り付けでも良いです。
  たまにスケッチメチャクチャ上手い実習生も現れますね。
  とても印象が良いです。

見学したことだけを書かず、必ず考察を入れること

しかし、いつも実習生に対して思うのですが、何のために学内実習があるのかを・・・。
授業でレポートの書き方を学び、提出する度に訂正を日々していると思います。

どうして、同じようにレポートを書くことができないのかが疑問で仕方ないです。
「起承転結」のように、レポートは

  1. 目的
  2. 方法
  3. 結果
  4. 考察

の構成にすれば何ら問題はないはずなのです。

この先は私の考えですが、上記①〜④では②と④がウエイトを占めるかと思います。
①目的、②方法、③結果、④考察ではわかりにくいかもしれないので、言い換えると・・・

  1. 目的:患者の原疾患、既往歴
  2. 方法:手術の術式など治療方法、手技の内容
  3. 結果:実際の管理方法、機器の設定、治療前後でのvitalの変化、(機器点検業務なら)点検結果など
  4. 考察:どうしてその治療方法なのか、どうしてその設定値なのかなどの自分なりの考え(つまりは考察)

の順番でレポートを書けば良いと考えます。

臨床実習のレポート例

少し簡単に例を挙げてみます。

レポート例1(血漿交換(PE)を見学した例)

◯月△日
1. 1日の流れ

2. 本日の実習内容
 血漿交換の見学

3. 患者情報
 Wilson病による肝不全に対する単純血漿交換療法を実施。
 ◯代男性、身長、体重
 【既往】
  高血圧、□□の外科術後

 【Wilson病について】
  実習中は知らない疾患が出てくるはずなので調べます。

4. 単純血漿交換療法(PE)
 実際の回路図やプライミング方法、血漿分離器は何を使用していたか、置換液は何をどれだけ用意していたかなどを記載。

5. 治療の実際、治療後の結果
 バスキュラアクセスはどこから、体外循環開始時に気をつけていたこと、治療中のQBや分離率はどのように管理していたか、治療の副作用やvitalの変化はなかったか、治療前後の検査値の比較などを記載。

6. 考察
 ここが指導者が一番重視しているところです。疑問点などを考えても良いかもしれません。
 今回の例では肝不全のPEを想定していますので、考察内容の例として

 ①どうして置換液はALB置換ではなくFFP置換だったのか、
 ②FFPの置換液はどうして48単位(例として)用意したのか、またその計算方法は?

 ・・・などが考えられますね。

レポート例2(PCIを見学した例)

◯月△日
1. 1日の流れ

2. 本日の実習内容
PCIの見学

3. 患者情報
労作時の胸部絞扼感の自覚あり、心電図異常も認めているため今回冠動脈造影(CAG)を実施。
 ◯代男性、身長、体重
 【既往】
  高血圧、糖尿病、脂質異常症

4. CAG ad hoc PCIの見学
 見学した手技などについて記載↓
【CAG】
 〜
【PCI】
 〜
【ガイドワイヤ】
 〜
【PCIバルーン】
 〜
【ステント】
 〜
【IVUSについて】
 〜

5. 治療の実際、治療後の結果
アプローチ部位は左橈骨動脈(lt.Radial.A)。 
CAGの結果、#5 左主幹部に75%の狭窄を認め、PCIへ移行した。
IVUSは○○、前拡張に◯/△mmのバルーン、ステントは◯/□mmの○◯というステントを留置し、後拡張は◯/△mmのバルーンを使用した。
最終造影では狭窄率はゼロに。血圧等に変化は無かったが、心電図は若干変化があった。

【KBT:Kissing Balloon Technic】
LADとLCxの分岐部へはKBTという手技を実施。

6. 考察
 ①バルーンとステントサイズの決定について
 ②IVUSで確認すべき点
 ③PCIへ移行すると決まった際にCEがIABPやIMPELLAをスタンバイしていた理由について

上記、簡単に例を挙げてみました。実際には1日に複数症例を見学していて、もっとレポートはボリュームあるとは思います。

何度も言いますが、レポートで大事なのは「考察」です。

見学した内容は、メモをしているはずですから書けて当然なのです。
見学内容すら書けなかったら、何をしていたんだとなるわけです。

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しかも臨床工学技士向けのもの。
臨床工学技士として、医療従事者としての自覚と身につけなければならない基本を簡潔にまとめた参考書です。

まとめ

あまりに筆が乗ってしまい、この段階でもすでに6000字を超える記事となってしまったため、一旦ここで区切らせていただきます。

次回の記事では考察を深めるためにも必要となりそうな知識などについて触れていきたいと思います。

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この記事を書いた人

職歴
現大学病院勤務
取得資格
臨床工学技士(CE)、ITE 心血管インターベンション技師、ME1種検定試験

得意領域
カテーテル、アフェレシス、内視鏡、機器管理

大学病院での幅広い勤務実績をもとに、臨床工学技士業務全般執筆しております。
1児のパパでもあり、子育て情報も発信していけたらと思います。

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