2025年3月末時点での最新の臨床工学技士国家試験の合格率、および過去7年の推移をまとめております。

昨年度執筆した記事はこちら

令和7年度:第38回臨床工学技士国家試験 合格率速報
令和7年3月26日(水)に第38回臨床工学技士国家試験の合格発表がありました。
試験期日 | 令和7年3月2日(日) |
---|---|
試験地 | 北海道、東京都、大阪府、福岡県 |
受験者数 | 2,598名 |
合格者数 | 2,049名 |
合格率 | 78.9% |

なんと今年の臨床工学技士国家試験の合格率も8割を割ってしまいました。
後述しますが、合格率が8割を割るのは昨年度に引き続き2年連続です。
配点を1問1点、合計180点満点とし、108点以上を合格とする。
総得点 108点以上 / 180点
※例年通り変わりはありません
今年度は午前:問題23が不適切問題となっています。
今年度の国試の傾向は
全体の傾向としては変わらないのでしょうが、よく考えらせられる問題が増えてきたなぁといった印象を受けます。
また午後の問題は比較的オーソドックスな設問といった印象ですが、午前の問題は全体的に心が折れそうですね。
全体的に工学系の問題の難易度が例年に比べて高いように個人的に感じました。
確実に点を積み重ねていける過去問の踏襲が少しずつ減ってるかもしれないですね。



相方のMoegiや国試を受けた現役生と比べてポンコツなので学生の肌感覚に近い感想なのでは。
実際の国試の問題をいくつか紹介





午前の問63とか思わず声出そうになりました、計算問題は得点源にしやすいといった昔の認識どこいったのか。





(ヒステリシスループってえぇ。。。)
医学系の問題も出題に一工夫加えてるなぁといった印象です。
例えば午前問74、普段ならこの補助循環装置は何かぐらいの設問で終わりそうな問題も、それだと簡単すぎると出題者は思ったのでしょう。さらに追加の知識を求めてきて少し難度を上げつつある印象です。





←2か4で悩んで間違えた人
今後公開する記事の前振りです。
過去年度との国家試験合格率比較
近年の受験者数や合格率は以下のとおりです。
年度 | 受験者数(名) | 合格者数(名) | 合格率(%) |
令和1年度 | 2828 | 2193 | 77.5 |
令和2年度 | 2642 | 2168 | 82.1 |
令和3年度 | 2652 | 2232 | 84.2 |
令和4年度 | 2603 | 2096 | 80.5 |
令和5年度 | 2706 | 2311 | 85.4 |
令和6年度 | 2630 | 2090 | 79.5 |
令和7年度 | 2598 | 2049 | 78.9 |


臨床工学技士国家試験は令和に入って以降受験者数は微減、そして合格率も令和元年に次ぐ78.9%と2番目の低さと徐々にその規模感を落としているといったところでしょうか。
臨床工学技士国家試験 累計合格者数は?
昨年度までの臨床工学技士国家試験合格者数は57002人でした。
今年度2068人が合格したことで、累計の合格者数は59051人となりました。
臨床工学技士として医療機関に登録されているおおよその人数
当サイト調べでは令和2年10月1日の段階で、現在臨床で働いている臨床工学技士の総数は30408名でした。


1988年からの初期に合格した臨床工学技士は定年退職で次々と引退、また一部若い世代を中心に他業種への転向も進んできていますが、現状供給過多なため就業人数は増えていると予想されます。
有効求人倍率に関する資料が見つからないのが残念ですが、R3/R4/R5/R6年度卒が順調に就業しているとするならば現状36000〜37000名程度が医療機関で就業しているものと思われます。
臨床工学技士の今後の展望は
来年ぐらいは今年の反動で易化するかもしれませんが、総合的にみて国家試験は今後難化していくものと予想しています。
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「去年の合格率をみて今年ぐらいは去年の反動で易化するかもしれません」と昨年度言及していましたが、まさかの2年連続合格率8割切りという結果に終わってしまった今回の試験結果に正直驚いています。
合格率8割ということは当ブログでも再三言っていますが、「最低でも3年の勉学に励み学内選抜を乗り切った者のうち最低でも5人に1人が落ちる試験」です。この現実を身をもって体感された読者の方も少なからずいるのではないでしょうか。
しかし私たち二人の共通の友人にも現役時代に国試に落ちながらも国試浪人を乗り切り、今は立派に臨床に立ったり、国家資格を持った上で異業種へ転職をし収入UPと自己実現を達成した強者もいます。
最低でも養成校で3年を費やした年月を無駄にしないためにも、せめて国家試験合格までは成し遂げてもらいたい・・・と個人的には思っています。
そしてこの結果に頭を悩ませているのは臨床工学技士養成校の先生方ではないでしょうか。
最近では少子化なのに相次ぐ養成校の乱立、しかしどこも志望者は伸び悩み、定員割れを起こしている学校も珍しくはなくなってきました。しかもタスクシフトに対応するため教育内容は更なる拡充を迫られそれに対応しつつ、次年度以降の入学者を確保しつづける意味でも、学生の合格率に気を使わなければならないとまさに板挟みの状態だと思います。



母校の先生たちが苦悩するシーンが目に浮かびます・・・
出題範囲が増えた、問題が難化したというのもありますがそもそも医療職を目指す層の質が低下しているのも問題の一つにはなるでしょう。
今は相次ぐインフレ、いや物価だけ上がって賃金が上がらないスタグフレーション下にあると言っていいです。
そんな中で医療職という職は保険点数という病院収入上の壁がある以上簡単に賃上げができる業種ではありません。
さらに相次ぐ物価高騰を価格に転嫁しきれず、そもそも儲からない病院収支は日々悪化の一途を辿っています。
政府も「ベースアップ評価料」など医療従事者の賃上げに向けて動いてはいますが、これもあくまで時限的措置にとどまり大手・民間企業並みの賃上げの波には全く乗れていないというのが現場で働く一個人としての感想です。
賃金もろくに上がらない医療職より、金払いのいい民間・一般企業を目指す、そのために一般の大学に行くと言った流れは今後さらに加速するのではないでしょうか。。。



医療従事者の賃上げは喫緊の課題です。声を大にして言い続けます(怒)
さて、毎度Xにつぶやくが如く私見が長くなってしまいましたが、当記事をご覧になった、臨床工学技士養成校に通う現役の学生、国試浪人される皆様方は気を引き締めて翌年以降の国試に臨んでください。
また現在高校生の皆様は入学後の3、4年後、およびその先10年、20年先を見据えて悔いのない進路決定をしていただけたらと思います。
そして今年度見事国家試験に合格された皆さん、ようこそ臨床工学技士の世界へ。
今後も当サイトでは、臨床工学技士や医療従事者に関する様々なコンテンツを発信していきます。
この記事のようにプラス面ばかりではなく、マイナス面にもきちんと触れることができるのが、個人で発信しているブログの強みです。
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