2024年3月末時点での最新の臨床工学技士国家試験の合格率、および過去6年の推移をまとめております。
単にデータを羅列するだけでなく、現役臨床工学技士の主観的な意見や感想、今後の予想を述べております。
今年度:第37回臨床工学技士国家試験 合格率情報
令和6年3月26日(火)に第37回臨床工学技士国家試験の合格発表がありました。
試験期日 | 令和6年3月3日(日) |
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試験地 | 北海道、東京都、大阪府、福岡県 |
受験者数 | 2,630名 |
合格者数 | 2,068名 |
合格率 | 78.6% |
なんと今年の臨床工学技士国家試験の合格率は8割を割ってしまいました。
後述しますが、合格率が8割を割るのは令和元年度の試験以来5年ぶりです。
配点を1問1点、合計180点満点とし、108点以上を合格とする。
総得点 108点以上 / 180点
※例年通り変わりはありません
昨年度:第36回臨床工学技士国家試験 合格率情報
参考までに昨年度の試験結果を掲載しております。
試験期日 | 令和5年3月5日(日) |
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試験地 | 北海道、東京都、大阪府、福岡県 |
第36回臨床工学技士国家試験は、令和5年3月24日(金)に合格発表がされました。
また一部報道によると全国の新卒合格率は92.8%という結果だったようです。
結果だけで推察するに、昨年度と比較すると令和6年の国試は大幅に難化したと言っていいでしょう。
過去年度との国家試験合格率比較
近年の受験者数や合格率は以下のとおりです。
受験者数(名) | 合格者数(名) | 合格率(%) | |
令和6年度 | 2630 | 2068 | 78.6 |
令和5年度 | 2706 | 2311 | 85.4 |
令和4年度 | 2603 | 2096 | 80.5 |
令和3年度 | 2652 | 2232 | 84.2 |
令和2年度 | 2642 | 2168 | 82.1 |
令和1年度 | 2828 | 2193 | 77.5 |
- 受験者数は2600人程度で安定して推移
- 合格者数も概ね2000人越えが目安
- 合格率に変動はあるが概ね80%が目安
あとこれは個人的な感想ですが、近年の養成校の増加に対して、受験者数に変化があまり見られない点が気になります・・・。
国試取得後の就業状況は?
累計合格者数
昨年度までの臨床工学技士国家試験合格者数は54912人でした。
今年度2068人が合格したことで、累計の合格者数は56980人となりました。
臨床工学技士として医療機関に登録されているおおよその人数
当サイト調べでは令和2年10月1日の段階で、現在臨床で働いている臨床工学技士の総数は30408名でした。
臨床の現場で働く我々からみても、1988年からの初期に合格した臨床工学技士は定年退職で次々と引退をし始めてはいますが、合格者数と就業者数でいうならば妥当か少し少ない印象です。
というのも20代・30代の若い層の一部が給与水準の高い他業種へと転職している印象を抱いているからです。
有効求人倍率に関する資料が見つからないのが残念ですが、R3/R4/R5年度卒が順調に就業しているとするならば現状35000名程度が医療機関で就業しているものと思われます。
今年はある意味節目の年
コロナ禍を超えて
今年度の受験者はコロナの災禍を高校生時代に最初に経験した専門学校生が国試を受験したある意味節目の年です。
(※2020年末〜翌年3月の初期は含まず、国内で流行が広まった時期を高校3年生の間丸一年経験したという定義で)
「ECMO」や「人工呼吸器」などのキーワードで、ある意味臨床工学技士やその業務の認知度が一気に広まることになった「コロナ禍」ですが、受験者数の推移を見る限り少なくともプラスに作用したということはなさそうです。
そして合格率に至っては昨年度85.4%合格の易化の反動を受けたと言っても、国試合格率8割割れは正直異例だと思われます。
現に今月医療界を騒がせた(?)大ニュースがあります。
なんと、看護師の合格率が4年ぶりに9割を切り(87.8%)、当サイトが調べられた限り過去20年で最低の合格率を記録したそうです。また受験者数も年々減り続けているようです。
世の中看護師不足と言っておきながら、過去最低の合格率。
この現状、国や厚労省は何を考えているのかと邪推してしまいますね。
国が診療報酬や社会保障費(医療費)を減らしたいと感じられるニュースは数多くあります。
無論国の方針なのか、受験生の質が落ちたのかは判断はできかねます。
私個人はどっちもあり得ると考え、この書き方してます。
これから数年は経過を見ないとなんとも言えないでしょうが、少しまずい動きなんじゃないかなと個人的には捉えてます。
賃金が上がりにくい現状、処遇改善を目指して
コロナ後の特需、円安に湧く昨今の好景気、輸出関連企業を中心とした賃上げの流れを見て、「うちにはそんなの関係ないよ」と感じられている方も大勢いるかと思います。
というのも統計的に見て、医療介護と言った分野は賃金上昇が遅れている業界の一つでもあるからです。
デフレ化では雇用も賃金も大体安定しているため一定の魅力があった医療職ですが、これから続くであろうインフレ下では、物価の上昇に賃金の上昇が構造的に追いつきませんからね。
個人レベルでは私のように株や副業でもしないと本当にまずいことになりそうです。
この現状を見ている高校生たちが選ぶ進路はおおかた予想がつきますよね。というか国試取得者でも今転職の流れが。。。
そしてもう一点。
臨床工学技士の主要な業務といっていい「慢性血液浄化(人工透析)」を導入している患者数がついに減少に転じたのもマイナスな要素です。
需要(就職先)があっての雇用(賃金)なので、無視できない流れです。
規模の小さい透析クリニックは今後淘汰されていき統廃合、省人化が進んでCEの雇用的にはマイナスでしょうね。
極め付けはブタの生体腎臓移植も着々と進んでいますし。。。
さっきからマイナスの面ばかり触れてすいません。
一方で大分大学医学部先進医療科学科「臨床医工学コース」のように、悲願であった初の国立大学が2023年に設置されるなどプラスの動きもあります。
またタスクシフトをはじめとした新規業務の開拓なども活発ですね。
医療の高度化には医療機器の進化も欠かせない要素の一つですので、それら機器をこれから最も多く扱うであろう臨床工学技士の需要は高まることも十分に予想されます。
この流れが臨床工学技士としての進路選択にプラスに働くことを願っています。
一部のトップランナーを除き所詮資格職は雇われてなんぼの世界です。
しかも医療職ともなれば国の方針一つで給料の限界は決まってきます。国の政策や、財政、経済に私たちの雇用・賃金は密接に関わり合っているのです(若い人選挙行って政治に圧かけような)。
医療の質の低下は処遇の改善でしか防げないぞと。
臨床工学技士国家試験 今後の見通し予想
先ほど養成校の数は増えている、一方で少子化や先に述べた医療職自体の敬遠の動きなどに触れました。
母校の大学も他大学の乱立により、定員割れで苦戦しているようです。一人一人の教育は手厚くなるかもしれませんが、いずれはどうなることやら・・・。
受験者数はおそらく今後も一定で推移するでしょうが、需要の面からみて合格者数には(このままだと)いずれ頭打ちがくると感じております。
来年ぐらいは今年の反動で易化するかもしれませんが、総合的にみて国家試験は今後難化していくものと予想しています。
当記事をご覧になった、臨床工学技士養成校に通う現役の学生様は気を引き締めて翌年以降の国試に臨んでください。
また現在高校生の皆様は入学後の3、4年後、およびその先10年、20年先を見据えて悔いのない進路決定をしていただけたらと思います。
そして今年度合格された皆さん、ようこそ臨床工学技士の世界へ。
今後も当サイトでは、臨床工学技士や医療従事者に関する様々なコンテンツを発信していきます。
この記事のようにプラス面ばかりではなく、マイナス面にも触れることができるのが、個人で発信しているブログの強みです。
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