タイトルの通りですが、日本臨床工学技士会(以下日臨工とする)が2024年5月28日にe-プリバドにて「【予告】ICT分野の国家資格取得における奨励金制度について」という表題で、奨励金制度が開始されることが発表されました。
元々、奨励金制度が出されるという話は出ていたのですが、ようやくといったところです。
本記事では、臨床工学技士を対象にした奨励金制度の概要と対象資格についていち早く触れていきます。
日臨工による奨励金制度について
奨励金制度の目的
「ICT分野の国家資格取得における奨励金制度」ということですが、e-プレバドのお知らせには以下のように記載されています。
この奨励金制度は、医療機関におけるサイバーセキュリティー対策をはじめ医療DX に寄与できる⼈材を育成するために、ICT 分野の資格取得を奨励とするとともに、その知識を活かして臨床⼯学分野の発展に貢献することを⽬的としております。
e-プレバドより:https://e-privado.ja-ces.or.jp/information/01HYY78YQVMV8785HNRY7DWR99
要約すると、「医療DXにおいて、臨床工学技士が貢献できるよう人材を育成する手伝いをします。とりあえず、情報通信に関わる国家資格取得の補助をしますね〜。」といった感じですね。
臨床工学技士と情報通信技術の関わり
「ICT:information and communication technology」とは、”情報通信技術“のことを示しています。
私達、臨床工学技士(CE:clinical engineer, 以下CEとする。)は、養成校で情報通信の分野をほんの一部分ですが勉強をしています。
施設によっては、情報通信部のような電子カルテや通信システムを扱う部署で勤務しているCEもいらっしゃいます。
現在、日本では医療分野に限りませんが「DX」を進めようと取り組んでおり、内閣にも「医療DX推進本部」まで設置されています。
医療DXの”DX”とは”digital transformation(デジタル・トランスフォーメーション)”の略ですが、要は診察、治療、処方箋、診断書、地域連携、研究開発、etc…と医療に関わるあらゆる情報をデジタル技術を活用して、医療の効率化とクオリティを向上させようとする取り組みです。
医療DXにCEが進出できるように準備を進めているというわけですね。
奨励金対象の国家資格
奨励金制度の対象となる国家資格は以下の4つです。
- ITパスポート試験(IP:information technology passport examination)
- 情報セキュリティマネジメント試験(SG:information security management examination)
- 基本情報処理技術者試験(FE:fundamental information technology engineer examination)
- 医療情報技師能⼒検定試験(医療情報技師:healthcare information technologist)
日臨工による奨励金制度の詳細
実施期間
奨励金制度の実施期間は以下の通りです。
2024年度〜2026年度の3年間
ただし、各年度の予算が消化された時点で、その年度の支給は終了となるようなのでご注意ください。
支給対象者
奨励金の支給対象者および支給対象となる条件は以下の通りです。
- 実施期間中に臨床⼯学技⼠国家資格を有する者
- 実施期間中に臨床工学技士養成校に属する者
実施期間中に取得した合格証明書(証明書の発行日)
→2024年度〜2026年度中
支給額
支給額は以下の通りです。
なお、支給方法はAmazonギフトカードのEメールタイプを用い、電子メールでの送付をされます。
- 奨励金は1資格に対して、正会員には10,000円を支給
- 非会員には5,000円を支給
- 各資格に対して、1人1回のみ支給
奨励金を非会員にも支給するというのは意外でした。
減額されているとは言え日臨工の本気度が伺えます。
申請受付期間と申請方法
2024年度分は8月1日より、e-プリバドで申請受付を開始されるようです。
申請方法は、所定のフォームに必要事項を入力し、資格合格証書の電子データ(PDF・写真)を添付して申請します。
具体的な申請方法は7月中旬に案内されるようです。
奨励金の対象となる各国家資格の概要
実は、以前に執筆した「臨床工学技士に役立つプラスの資格22選」という記事の中で、ITパスポート、基本情報処理技術者、医療情報技師の3つの国家資格については触れていたのです。
やはり、所有していた方が役に立つ時が来るのでは・・・?とより一層思いが強くなった気がします。
これらの試験は、ICT分野では基礎の土台となる試験です。
というわけで、改めて4つの対象資格について概要を説明したいと思います。
情報処理推進機構 試験区分:https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/list.html
対象資格名 | 受験資格 | 受験手数料 | 合格率 |
ITパスポート試験 | なし | 7500円(税込) | 50%程度 |
情報セキュリティマネジメント試験 | なし | 7500円(税込) | 75%程度 |
基本情報処理技術者試験 | なし(ただし上記2つの取得を推奨) | 7500円(税込) | 40~50%程度 |
医療情報技師能⼒検定試験 | なし | 15000円(税込) | 40%程度 |
ITパスポート試験(IP:information technology passport examination)
ITパスポートは、ITに関する基礎的知識を証明する経済産業省認定の国家試験です。
IT系の国家試験では初歩の初歩レベルですが、合格率は50%程度とさほど難しくはないと思われます。
臨床工学技士がIT関連、情報管理部門で勤務されているところはあるでしょう。
PC情報に詳しいと結構看護師さんに引っ張りだこだったりしますよ?
では、ITパスポート試験の情報を説明していきます。
受験資格
受験資格は特に条件はありません。
どなたでも受験することが可能です。
試験日
試験方式によって大きく変わります。
- CBT(computer based testing)方式
会場のPCを使用しての試験です。都道府県によりますが、概ね毎週土日のどちらか1日は開催されています。 - 特別措置試験
身体の不自由などによりCBT方式で受験できない方向けの筆記試験となります。
春期(4月)と秋期(10月)の年2回の開催となっております。
試験会場
各都道府県に数箇所会場が設置されており、CBT方式の空席がある限り受験が可能です。
ただし、同時に複数箇所を申し込むことは不可能のようです。
受験手数料
7,500円(税込)です。
技士会の正会員だと10,000円の奨励金支給のため、テキスト代、もしくは交通費を加味したらイーブンくらいでしょうか。
試験時間
会場によりますが、午前、午後、夕方の時間帯のどれかを選択可能で、試験時間は100問120分です。
出題範囲
出題範囲はサイトにて公開されています。
対策テキスト
やはり困った時の定番は”みんなが欲しかった!シリーズの”「ITパスポート みんなが欲しかった! ITパスポートの教科書&問題集 」でしょうか。
しかし、私のおすすめは、短期攻略できそうな「いちばんやさしい ITパスポート 絶対合格の教科書+出る順問題集」です。
理解度を深めながら覚えたい方は、読みやすさの「イメージ&クレバー方式でよくわかる かやのき先生のITパスポート教室」、スマホを利用できる「[令和6年度]ITパスポート 超効率の教科書+よく出る問題集」もオススメです。
情報セキュリティマネジメント試験(SG:information security management Examination)
情報セキュリティマネジメント試験は、”情報セキュリティマネジメントの計画・運用・評価・改善を通して組織の情報セキュリティ確保に貢献し、脅威から継続的に組織を守るための基本的なスキルを認定する試験“とされています。
ネット環境の普及、ITの高度化により社会は便利になってきましたが、一方で詐欺やサイバー攻撃などの脅威は複雑化及び巧妙化してきています。
まずはセキュリティのために適切な情報処理を扱うことができる人材を確保するのかが重要となってきます。
情報セキュリティマネジメント試験は、これらのニーズの高まりから平成28年(2016年)創設された比較的新しい国家試験となります。
試験方式が変更された令和5年度より合格率が高くなってきており、現状の合格率は75%程度です。
受験資格
受験資格は特に条件はありません。
どなたでも受験することが可能です。
試験日
ITパスポート同様にCBT方式で、随時開催されています。
特別措置試験も同様です。
試験会場
同様に各都道府県に数箇所会場が設置されており、CBT方式の空席がある限り受験が可能です。
受験手数料
7,500円(税込)
試験時間
60問120分で、同一試験時間内で科目A試験(四肢択一)と科目B試験(多肢選択式)をまとめて実施となります。
出題範囲
出題範囲はこちらから確認いただけます。
対策テキスト
売れ筋は下記3冊ですが、どれでも良いと思いますが、オールカラー図解の読みやすさの観点から「ニュースペックテキスト 情報セキュリティマネジメント」を、もしくは出題される箇所がまとめられている「情報処理教科書 出るとこだけ!情報セキュリティマネジメント テキスト&問題集」をオススメします。
ただ、一方の「徹底攻略 情報セキュリティマネジメント教科書」は、全文PDFデータ付きなので、こちらも捨てがたいです。
基本情報処理技術者試験(FE:fundamental information technology engineer examination)
ITエンジニアの登竜門ともいえる国家資格であり、ITパスポートを取得したら受験したい資格です。
IT技術者としての適性・能力を証明する資格で、システムの開発・運用・設計など、IT全般の知識が問われます。
合格率は40~50%です。難易度的にもちょうどME2種の科目を情報科学に全振りしたような感じでしょうか。
受験資格
受験資格は特に条件はありません。
どなたでも受験することが可能です。
ですが、先にITパスポートおよび情報セキュリティマネジメントの合格をすることをオススメします。
試験日
ITパスポート、情報セキュリティマネジメント同様にCBT方式で、随時開催されています。
特別措置試験も同様です。
試験会場
同様に各都道府県に数箇所会場が設置されており、CBT方式の空席がある限り受験が可能です。
受験手数料
7,500円(税込)
試験時間
- 基本情報技術者試験(FE)科目A:60問 90分, 四肢択一(CBT方式)
- 基本情報技術者試験(FE)科目B:20問 100分, 多肢選択式(CBT方式)
※途中休憩:10分
出題範囲
出題範囲はこちらから確認いただけます。
対策テキスト
基本的にはITパスポートや情報セキュリティマネジメントと同一著作のものをオススメします。
私のオススメは「いちばんやさしい 基本情報技術者 絶対合格の教科書+出る順問題集」です。
医療情報技師能⼒検定試験(医療情報技師:healthcare information technologist)
日本医療情報学会の資格である医療情報技師ですが、簡単に言いますと医療情報に関する専門職となります。
カルテなどの運用、薬剤の処方、検査/治療の予約や会計などを管理するといった、病院内の情報システムの企画、運用、導入、保守管理を行う資格です。
合格率は40%程度です。
受験資格
受験資格は特に条件はありません。
どなたでも受験することが可能です。
試験日
第22回 2024年8月25日(日)
試験会場
北海道、宮城県、東京都、新潟県、石川県、愛知県、大阪府、岡山県、広島県、香川県、福岡県、鹿児島県、沖縄県
受験手数料
15,000円(税込)
ここまでの資格の倍の受験料を要します。
試験時間
マークシート方式による多肢選択式試験
- 医学・医療系:50問 60分
- 情報処理技術系:60問 90分
- 医療情報システム系:50問 60分
出題範囲
対策テキスト
各科目の対策テキストと毎年新しい問題集が出版されています。
余談:何故、”DT”ではなく”DX”なの?
言語的側面 — trams —
さて、DXは”digital transformation”を示すのですが、何故”DX”と表記するのかという疑問を解決します。
“transformation”の”trans-“部分に注目します。
“trans-“の接頭辞に「横切る」や「超える」といった意味がありますが、私の身近な用語で言うと、横行結腸を”トランス(transverse colon)”が一番分かりやすいのですが、まさに”横切っている結腸”ですね。
そして、類義語として”cross(交差する)“という単語がありますが、”cross”・・・つまり視覚的に”X”となるのです。
英語圏では、この”trans”をよく”X”と表現するのです。 ※ex:XMIT→ transmit(トランスミット)
Digital Trans-formation
⇩
Digital X-formation
⇩
DX
戦略的側面 — X —
また、“X“とは「未知なるもの」といった不確定要素のイメージを表す際に良く使用されますね。
テクノロジー分野において、先端技術や未来的志向といった未知的要素、先進的で革新的なイメージを与える戦略的側面を持っていると考えます。
つまり、”DT”ではなく、”DX”としているのでは、単に言語的な意味合いだけではなく、デジタル技術を発展させて、可能性を連想させる戦略的側面を併せ持つのです。
さいごに
以上でICT分野の国家資格取得における奨励金制度についての概要の説明としました。
今回対象である資格で取得が大変そうなのは、基本情報処理技術者でしょうか。
テキストが3分野の3冊に分かれていることもあり、出題範囲が一番広そうです。
それに比べて残りの3資格は、開催回数も多いこともあり、傾向の対策はし尽くされた感じはあり、いかに効率よく勉強できるかがポイントとなります。
要領の良い方は、短期間で3資格を取得される方が出てくるかも・・・。
私も編集部も取得を考えていますので、一緒に頑張りましょう。
転職等にも有利・・・かもしれません。
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