心肺停止(Cardiopulmonary Arrest, CPA)が発生したとき、迅速かつ適切な救命措置を取ることが命を救う鍵となります。本記事では、CPAとは何か、そしてBLS(一次救命処置)やACLS(二次救命処置)の役割と実践方法について、詳しく解説します。
一時は大学病院に勤めておきながら、入職当初これらの略語が分かっておらず色々とやらかす寸前だった経験が元になっています・・・。
- CPA
- PEA
- BLS
- CPR
- AED
- ACLS
- ROSC
- H’s & T’s(5H5T)
心肺停止(CPA)とは?その定義とリスク
CPAの定義
心肺停止(Cardiopulmonary arrest:CPA)とは、心臓が突然止まり、全身に血液を送り出せなくなる状態を指します。この結果、酸素供給が遮断され、わずか数分で脳やその他の重要な臓器に損傷が及びます。
主な症状
- 意識がない
- 呼吸がない、または異常な呼吸(喘ぎ呼吸など)
- 脈が触知できない
CPAのリスク要因
心肺停止の原因にはさまざまな要因がありますが、主に以下のものが挙げられます。
- 心臓疾患:心筋梗塞や不整脈
- 呼吸器疾患:窒息や重篤な喘息
- 外的要因:溺水、感電、外傷
- その他:低体温症や薬物中毒
CPAよりPEAと書こうかと思ったのですが、無脈静電気活動についてこの記事だけではまとめきれないので別にします。
BLSとは?一次救命処置の基本
BLSの目的
BLS(Basic Life Support)は、心肺停止が発生した際に、医療従事者でなくても行える基本的な救命措置です。その目的は、血液循環と酸素供給を維持することです。
自動車免許取得の際必須科目になっているアレです。
医療資格(臨床工学技士)持ちですが応急救護処置の教習が免除される資格じゃないので受けてました・・・。
BLSの手順
BLSは一般市民でも習得可能であり、以下の手順を順番に行います。
- 安全確認と全身の観察、意識の確認
- 周囲の安全を確認し、患者に出血等がないか、反応するかを声かけや軽く肩を叩いて確認します。
- 助けを呼ぶ、救急車の手配
- 周囲に助けを求めたのち119番に通報し、AED(自動体外式除細動器)を周囲の人に持ってきてもらいます。
- 呼吸の確認
- 普段通りの呼吸があるかを10秒程度確認します。
- 心肺蘇生法(CardioPulmonary Resuscitation:CPR)
- 呼吸が不整や確認できない場合、胸骨圧迫を行います。
患者を仰向けに寝かせ、胸の中央を1分間に100~120回のペースで押します。 - 深さは約5~6cmを目安にします。
- 呼吸が不整や確認できない場合、胸骨圧迫を行います。
- 気道確保と人工呼吸(必要に応じて)
- 気道を確保するために、頭部後屈あご先挙上法を使用します。
- 訓練を受けている場合は、胸骨圧迫30回ごとに人工呼吸を2回行います。
(訓練を受けていない場合や人工呼吸に抵抗がある場合は、胸骨圧迫のみでも構いません。)
- AEDの使用
- AEDを装着し、音声ガイドに従って電気ショックを行います。
- 音声ガイドに従って胸骨圧迫を再開します。
- 救急隊・医師に引き継ぐまでパッドはそのままで電源を切らないようにしましょう。
出血量によっては止血を優先すべき場合があります。
また基本は「反応なし→助けを呼ぶ→通報→心肺蘇生」です。
人工呼吸に関しては基本的には無しで良いという意見もあります(感染などのトラブル防止のため)。
百聞は一見にしかず。
文字に起こすより動画のほうがわかりやすいです。。。
ACLSとは?医療従事者向けの二次救命処置
ACLSの目的
ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)は、BLSに続く高度な医療処置で、主に医療従事者が実施します。CPAの原因に応じた治療を行い、患者の心拍再開を目指します。
ACLSの具体的な内容
- 心電図(ECG)の解析
- 心肺停止のタイプを診断(例:心室細動、無脈性電気活動)。
- 薬剤投与
- アドレナリンやアミオダロンなどを使用して心拍再開を促します。
- 気道確保
- 気管挿管やバッグバルブマスクを用いて人工呼吸を行います。
- 除細動
- VF・無脈性VTに対し初回150J、2回目200J(二相性・成人)のショックを与え正常心拍再開を促します。
- 原因の特定と治療(H’s & T’s)
- 低酸素や高カリウム、冠動脈疾患などの根本的な原因を特定し、治療します。
「アドレナリン」は血管収縮を促し、心臓への血流を増加させることで蘇生をサポートします。
「アミオダロン」は、心室細動や頻拍性不整脈の抑制を目的として使用されます。
これらの薬剤は、心肺停止の原因に応じた治療として、ACLSプロトコルに従って投与されます。
これも手技を動画で確認してみましょう。
(リアルすぎて声出た)
ACLSが必要な場面
- 病院内での心肺停止
- 救急搬送中の患者
- 術中や術後に発生する緊急事態
BLSとACLSの違いと関係性
話がややこしくなる前に一旦まとめると以下の通りです。
BLSとACLSの違い
BLS | ACLS | |
---|---|---|
対象者 | 一般市民・医療従事者 | 医療従事者 |
内容 | CPRとAEDの基本的な操作 | 心電図解析、薬剤投与、気道確保 |
目的 | 心肺機能の一時的維持 | 心拍再開と原因の治療 |
循環器系の略語がどうしても覚えられない方へ。
BLSもACLSも末尾はLS(Life Support)であることに注目しましょう。そして、
BがBasic
ACがAdvanced Cardio-vascular
です。もう忘れませんね。
両者の連携が鍵
BLSはCPA発生直後の対応として不可欠であり、ACLSはその後の高度な治療を担います。
特に、BLSの迅速な開始がACLSの効果を最大化させます。
BLSを迅速に開始するためにもCPR、そしてAEDの手技をしっかりと押さえておきましょう。
略語の意味が読めない?
一旦スクロールして戻りましょう😕(太字参考)
ROSC(ロスク)とH’s & T’s(5H5T)
BLS・ACLSが奏功すると自己心拍再開、いわゆるROSC(ロスク)となります。
ROSC後の患者ケアでは、酸素化、血圧管理、経皮的冠動脈インターベンションの評価、目標体温管理、および集学的な神経学的予後予測に対して細心の注意が必要です。
そしてなにより忘れてはいけないのはCPAになった原因の識別です。H’s & T’s(5H5T)といった治療可能な病因を評価して治療に繋げていきましょう。
動画でもROSCを確認した後のシーンでバイタルのチェックや原因探求が結構流れていますね。「気胸じゃない」とか色々確認しているシーンです。
そう言った意味でも色々リアルだなぁと思った動画です。
H’s(5つのH)
- Hypovolemia(低血液量)
- 出血や脱水などにより血液量が減少する状態。
- 治療:輸液や止血処置。
- Hypoxia(低酸素症)
- 酸素供給不足により、組織が酸素欠乏に陥る状態。
- 治療:酸素投与や気道確保。
- Hydrogen ion (Acidosis)(酸性血症)
- 体内のpHバランスが崩れ、血液が酸性になる状態。
- 治療:換気を改善し、必要に応じて重炭酸ナトリウム投与。
- Hyper-/Hypokalemia(高カリウム血症・低カリウム血症)
- 血液中のカリウム濃度が異常になる状態。
- 治療:カリウム補充またはカリウムを排泄させる薬剤の投与。
- Hypothermia(低体温症)
- 体温が極端に低下し、心肺停止を引き起こす可能性がある状態。
- 治療:体温の再加温。
T’s(5つのT)
- Toxins(毒物中毒)
- 薬物や毒物による中毒。
- 治療:解毒剤の投与や中毒物質の除去。
- Tamponade, cardiac(心タンポナーデ)
- 心膜腔に液体が溜まり、心臓の収縮が妨げられる状態。
- 治療:心膜穿刺。
- Tension pneumothorax(緊張性気胸)
- 胸腔内に空気が溜まり、心臓や肺が圧迫される状態。
- 治療:胸腔ドレナージや胸腔穿刺。
- Thrombosis, coronary(冠動脈血栓症)
- 冠動脈が血栓によって詰まり、心筋梗塞を引き起こす状態。
- 治療:血栓溶解療法や冠動脈インターベンション。
- Thrombosis, pulmonary(肺血栓塞栓症)
- 血栓が肺動脈を塞ぎ、血液循環を妨げる状態。
- 治療:血栓溶解療法や抗凝固療法。
診断するのはあくまでお医者さんですが、こう言った原因があるはずだ、こういった治療に移行するんだというのは医療従事者として認識しておきたいですね。
特に臨床工学技士が関わってくるのはここからが大きかったりします。透析やら心カテ、そしてECMOですね。
まとめ:CPAに備えてできること
心肺停止(CPA)は、誰にでも起こり得る緊急事態です。
BLSとACLSの役割を理解し、適切に対応することで、命を救える可能性が高まります。
- BLSのトレーニングを受ける
- AEDの場所を確認しておく
- 医療従事者はACLSの技術を磨く
迅速な対応が命を救う医療現場では、知識と準備が力になります。
ぜひBLSやACLSについて学び、いざというときに備えましょう。
「BLSプロバイダ」や「ACLSプロバイダ」について
そして臨床工学技士ならお馴染みのECMOについて今後詳しく解説していきます。
【2020 アメリカ心臓協会(American Heart Association)
CPRおよびECCのガイドラインガイドライン】
【H’s and T’s of ACLS】
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