前回のECMO①では、簡単なECMOの説明とECMO、PCPS、ECPRなどの用語に関しての説明をしました。
本記事では、ECMOのシステム構成とECMOの周辺機器、それぞれの役割について説明していきます。

ECMOシステム構成
ECMOのシステム構成を下に示します。
- 膜型人工肺
- 遠心ポンプ
- 遠心ポンプコントローラ
- 冷温水槽
- ガスブレンダ
- 流量計
- その他(手回しハンドル、圧用モニタ、流量計用ゲル、etc…)
膜型人工肺
肺の機能を代行するのが膜型人工肺です。
酸素と二酸化炭素のガス交換を担っています。
原理は・・・分かりやすくいうと、透析のダイアライザと同様で中空糸を使用しており、拡散の原理を利用しています。
膜型人工肺, 左:BIOCUBE(ニプロ社HPより), 右:TERUMO社製(Moegi撮影)
中空糸内にガス相、中空糸外部に血液相という血液外部灌流型のものが一般的となっています。
中空糸内に血液を流すと一定方向にしか流れませんが、中空糸外に流すことで血液が攪拌効果によりガス交換効率が内部灌流型よりも向上します。
ハイ、学生さん、ここテストに頻出ですよ!!。
・・・私の就活の面接時に口頭試験で「膜型人工肺の血液は外部灌流と内部灌流どちらが主流ですか?また、その理由を答えてください。」という問題が出題されたのを覚えています。
人工肺の内部構造:日本人工臓器学会, https://www.jsao.org/public/what/what01/
遠心ポンプ
遠心ポンプは、内部の回転子が回転することによる遠心力で血液を送り出します。
ポンプ揚程というやつですね。
遠心ポンプは前負荷、後負荷の影響で流量が変化します。
小児領域では、遠心ポンプによる低流量が保証されないことからローラーポンプで管理されている施設様があります。
なお、Moegiの施設ではECMOは小児でも遠心ポンプですね。
遠心ポンプ:(左)MERA社HPより, https://www.mera.co.jp/medical/product-info/535/#
(右)Moegi撮影
遠心ポンプコントローラ
遠心ポンプコントローラですが、要はECMOシステムの本体・・・ですのでECMOの心臓部とでもいいましょうか(補助循環だけに・・・)。
遠心ポンプの回転数の調整、流量の表示、タイマー、アラーム設定などを操作するコンソールです。
圧や温度のモニタリングも可能な機種もあります。
当然、CT搬送や転院の院外搬送、最悪の場合は停電も想定されますので、バッテリーが搭載されています。
ECMO 遠心ポンプコントローラ:TERUMO社 キャピオックスEBS カタログより
冷温水槽
冷温水槽は膜型人工肺に加温した水を灌流させて、血液を冷却・加温する機器です。
ECMOの体外循環により基本的には血液は室温に冷却される傾向にあり体温が下がってしまいますので、主に体温維持のために加温する目的で使用します。
特に指定がなければ基本温度を37.0℃として、低体温療法を実施する場合には設定温度を下げれば容易に体温調整が可能となります。
導入をしている緊急時には必要ありませんが、ICUなどに移動後や小児ECMOの場合は速やかに装着します。
冷温水槽:MERA社HPより https://www.mera.co.jp/medical/product-info/499/
ガスブレンダ
ガスブレンダは、膜型人工肺の中空内へ酸素と空気の混合ガスを流すことで血液中のガス交換をします。
ガスブレンダで実施可能なことは、吹送ガス(sweep gas)の流量調整、酸素濃度(FIO2)の調整です。
基本的に酸素の緑配管と空気の黄色配管の2種類が必須ですが、酸素ボンベの使用に限り配管無しで使用が可能となります。
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流量計(フローセンサー)
遠心ポンプを使用する場合は、必ず流量計(フローセンサー)が必要です。
ローラーポンプでは回転数に比例して算出できますが、遠心ポンプでは前負荷/後負荷の影響でflowが変動するためです。
主流は超音波式ですが、電磁式もあります。
メーカーによりゼロキャリブレーションが必要なものと不要なものがありますので注意します。
下左図のTERUMO社製の「FLOW→」のように向きも指定されているものもありますので、しっかりと確認して装着してください。
フローセンサー:(左) TERUMO社製,Moegi撮影
(右)GETINGE社製, https://www.getinge.com/jp/products/rotaflow-2-system/
folw表示:(左) TERUMO社製 キャピオックスEBS カタログより
(右)GETINGE社製, https://www.getinge.com/jp/products/rotaflow-2-system/
その他
挙げ出したらキリがありませんが、ECMO周辺機器も紹介します。
どこまで使用されているかは施設ごとに異なると思いますのでご注意ください。
圧力用モニタ
ECMOのトラブル対応のためにモニタリングするものとして、脱血圧、膜型人工肺入口圧(前圧)、膜型人工肺出口圧(後圧)があります。
TERUMO社製のようにコンソールでモニタリングできるものがあれば、MERA社製の人工心肺用のモニタなどがあります。
少なくとも2系統、可能なら3系統圧モニタリングができるようにしておきたいです。
また、小型のベッドサイドモニタを備え付けるという方法もあります。
日本光電社製のBSM-1700シリーズは小型ですが、3波形までモニタリングすることが可能です。
圧モニタリング表示:(左) TERUMO社製 キャピオックスEBS カタログより
(右)MERA社製, https://www.getinge.com/jp/products/rotaflow-2-system/
日本光電社製 小型ベッドサイドモニタ BSM-1700 シリーズ ライフスコープPT
https://medical.nihonkohden.co.jp/iryo/products/monitor/01_bedside/bsm1700.html
手回しハンドル(ハンドクランク)
手回しハンドル(ハンドクランク)は、遠心ポンプを手動で回転させるためのデバイスです。
基本的には緊急用で、コンソールのバッテリーが切れた時、突然バッテリー駆動ができなくなった時などに使用します。
私はハンドクランクを使用した経験を2度遭遇しております。
1度目は、搬送のために電源プラグを抜いた瞬間、コンソールの電源が落ちた事例です。
2度目は、転院のための搬送で搬送車へ積み込む際に、どうしても回路の取り回しが厳しいということで、搬送車乗り込み時限定でハンドクランクを使用しました。
・・・いつ使うかわかりませんので、動作の感覚を掴むために触っておきましょう。
ハンドクランク:(左)TERUMO社HPより, https://www.terumo.co.jp/medical/equipment/me174.html
(右)Rotaflow用, Moegi撮影
流量計用ゲル(グリス)
超音波式フローセンサーは、センサー部にゼリーやグリスを必要とします。
エコー用ゼリーやホワイトグリスなどを用意しておきます。
エコー用ゼリー:アクアソニック100, https://axel.as-1.co.jp/asone/g/NC7-6808-01/
ホワイトグリス:https://www.ebay.co.uk/itm/134917344655
ベアハガー
ベアハガーそのものは、患者さんの体温を維持するための機器です。
膜型人工肺に温風を吹き付けることで、結露発生を防止することでwet lung(ウエットラング)対策のために使用します。
ベアハガー:3M社HPより, https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/bair-hugger-jp/pw/unit/
rSO2モニタ, O3モニタ
rSO2は局所脳酸素飽和度、O3は脳オキシメータといい、元々は脳の組織酸素飽和度の指標となりますが、最近ではECMOやTAVIの管理で下肢血流評価にも使用されています。
特にECMO管理中は送血側の下肢虚血をモニタリングして、必要時は分枝送血(下肢送血)を実施します。
Medtoronic社のINVOSやMasimo社のRoot with O3が使用されています。
・・・ほとんどがINBOSだとは思います。
Medtronic社資料より, https://www.jsicm.org/meeting/jsicm48/web_ex/company/09_7.pdf
INVOS
Root with O3:Masimo社HPより, https://www.masimo.co.jp/root/O3.htm
血行動態モニタ
補助循環管理中は、サーモダイリューションカテーテル(スワン・ガンツカテーテル)を留置し、血行動態をモニタリングすることが大半です。
主にCVP(中心静脈圧)、PAP(肺動脈圧)、SV-O2(混合静脈血酸素飽和度)、CI(心係数)、CO(心拍出量)などをモニタリングし、離脱の指標にします。
Edwardsのモニタが使用されていることがほとんどではないでしょうか。
ヘモスフィア(左), Vigilance II(右):Edwards社HPより
https://www.edwards.com/jp/healthcare-professionals/products-services/hemodynamic-monitoring/hemosphere
https://manuals.plus/ja/edwards/vigilance-ii-lifesciences-vigilance-1-2-monitor-manual
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ECMOに関するおすすめの参考書です。ぜひご一読を。




さいごに
以上でECMOシステム構成とECMO周辺機器の説明を終わります。
ここまでで関連用語とシステム構成の話をしてきましたので、いよいよ本編に入る感じです。
まずは、V-A ECMOからスタートします。
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