2025/3/2(日) 第38回臨床工学技士国家試験特集

ECMO のシステム構成と周辺機器 それぞれの役割

前回のECMO①では、簡単なECMOの説明とECMO、PCPS、ECPRなどの用語に関しての説明をしました。

本記事では、ECMOのシステム構成とECMOの周辺機器、それぞれの役割について説明していきます。

前回の記事はこちら↓

目次

ECMOシステム構成

ECMOのシステム構成を下に示します。

ECMOシステム構成
  • 膜型人工肺
  • 遠心ポンプ
  • 遠心ポンプコントローラ
  • 冷温水槽
  • ガスブレンダ
  • 流量計
  • その他(手回しハンドル、圧用モニタ、流量計用ゲル、etc…)

膜型人工肺

肺の機能を代行するのが膜型人工肺す。

酸素と二酸化炭素のガス交換を担っています。

原理は・・・分かりやすくいうと、透析のダイアライザと同様で中空糸を使用しており、拡散の原理を利用しています。

膜型人工肺, 左:BIOCUBE(ニプロ社HPより), 右:TERUMO社製(Moegi撮影)

中空糸内にガス相、中空糸外部に血液相という血液外部灌流型のものが一般的となっています。

中空糸内に血液を流すと一定方向にしか流れませんが、中空糸外に流すことで血液が攪拌効果によりガス交換効率が内部灌流型よりも向上します

ハイ、学生さん、ここテストに頻出ですよ!!。

・・・私の就活の面接時に口頭試験で「膜型人工肺の血液は外部灌流と内部灌流どちらが主流ですか?また、その理由を答えてください。」という問題が出題されたのを覚えています。

人工肺の内部構造:日本人工臓器学会, https://www.jsao.org/public/what/what01/

遠心ポンプ

遠心ポンプは、内部の回転子が回転することによる遠心力で血液を送り出します。

ポンプ揚程というやつですね。

遠心ポンプは前負荷後負荷の影響で流量が変化します

小児領域では、遠心ポンプによる低流量が保証されないことからローラーポンプで管理されている施設様があります。
なお、Moegiの施設ではECMOは小児でも遠心ポンプですね。

遠心ポンプ:(左)MERA社HPより, https://www.mera.co.jp/medical/product-info/535/#
(右)Moegi撮影

遠心ポンプコントローラ

遠心ポンプコントローラですが、要はECMOシステムの本体・・・ですのでECMOの心臓部とでもいいましょうか(補助循環だけに・・・)。

遠心ポンプの回転数の調整、流量の表示タイマーアラーム設定などを操作するコンソールです
圧や温度のモニタリングも可能な機種もあります。

当然、CT搬送や転院の院外搬送、最悪の場合は停電も想定されますので、バッテリーが搭載されています

ECMO 遠心ポンプコントローラ:TERUMO社 キャピオックスEBS カタログより

冷温水槽

冷温水槽膜型人工肺に加温した水を灌流させて、血液を冷却・加温する機器です。

ECMOの体外循環により基本的には血液は室温に冷却される傾向にあり体温が下がってしまいますので、主に体温維持のために加温する目的で使用します。

特に指定がなければ基本温度を37.0℃として、低体温療法を実施する場合には設定温度を下げれば容易に体温調整が可能となります。

導入をしている緊急時には必要ありませんが、ICUなどに移動後や小児ECMOの場合は速やかに装着します

冷温水槽:MERA社HPより https://www.mera.co.jp/medical/product-info/499/

ガスブレンダ

ガスブレンダは、膜型人工肺の中空内へ酸素と空気の混合ガスを流すことで血液中のガス交換をします。

ガスブレンダで実施可能なことは、吹送ガス(sweep gas)の流量調整酸素濃度(FIO2)の調整です。

基本的に酸素の緑配管空気の黄色配管の2種類が必須ですが、酸素ボンベの使用に限り配管無しで使用が可能となります。

ガスブレンダ

流量計(フローセンサー)

遠心ポンプを使用する場合は、必ず流量計(フローセンサー)が必要です。

ローラーポンプでは回転数に比例して算出できますが、遠心ポンプでは前負荷/後負荷の影響でflowが変動するためです。

主流は超音波式ですが、電磁式もあります。

メーカーによりゼロキャリブレーションが必要なものと不要なものがありますので注意します。

下左図のTERUMO社製の「FLOW→」のように向きも指定されているものもありますので、しっかりと確認して装着してください。

フローセンサー:(左) TERUMO社製,Moegi撮影
(右)GETINGE社製, https://www.getinge.com/jp/products/rotaflow-2-system/
folw表示:(左) TERUMO社製 キャピオックスEBS カタログより
(右)GETINGE社製, https://www.getinge.com/jp/products/rotaflow-2-system/

その他

挙げ出したらキリがありませんが、ECMO周辺機器も紹介します。

どこまで使用されているかは施設ごとに異なると思いますのでご注意ください。

圧力用モニタ

ECMOのトラブル対応のためにモニタリングするものとして、脱血圧膜型人工肺入口圧(前圧)膜型人工肺出口圧(後圧)があります。

TERUMO社製のようにコンソールでモニタリングできるものがあれば、MERA社製の人工心肺用のモニタなどがあります。

少なくとも2系統、可能なら3系統圧モニタリングができるようにしておきたいです。

また、小型のベッドサイドモニタを備え付けるという方法もあります。
日本光電社製のBSM-1700シリーズは小型ですが、3波形までモニタリングすることが可能です。

圧モニタリング表示:(左) TERUMO社製 キャピオックスEBS カタログより
(右)MERA社製, https://www.getinge.com/jp/products/rotaflow-2-system/

日本光電社製 小型ベッドサイドモニタ BSM-1700 シリーズ ライフスコープPT
https://medical.nihonkohden.co.jp/iryo/products/monitor/01_bedside/bsm1700.html

手回しハンドル(ハンドクランク)

手回しハンドル(ハンドクランク)は、遠心ポンプを手動で回転させるためのデバイスです。

基本的には緊急用で、コンソールのバッテリーが切れた時、突然バッテリー駆動ができなくなった時などに使用します。

私はハンドクランクを使用した経験を2度遭遇しております。

1度目は、搬送のために電源プラグを抜いた瞬間、コンソールの電源が落ちた事例です。

2度目は、転院のための搬送で搬送車へ積み込む際に、どうしても回路の取り回しが厳しいということで、搬送車乗り込み時限定でハンドクランクを使用しました。

・・・いつ使うかわかりませんので、動作の感覚を掴むために触っておきましょう。

ハンドクランク:(左)TERUMO社HPより, https://www.terumo.co.jp/medical/equipment/me174.html
(右)Rotaflow用, Moegi撮影

流量計用ゲル(グリス)

超音波式フローセンサーは、センサー部にゼリーやグリスを必要とします

エコー用ゼリーやホワイトグリスなどを用意しておきます。

エコー用ゼリー:アクアソニック100, https://axel.as-1.co.jp/asone/g/NC7-6808-01/

ホワイトグリス:https://www.ebay.co.uk/itm/134917344655

ベアハガー

ベアハガーそのものは、患者さんの体温を維持するための機器です。

膜型人工肺に温風を吹き付けることで、結露発生を防止することでwet lung(ウエットラング)対策のために使用します

ベアハガー:3M社HPより, https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/bair-hugger-jp/pw/unit/

rSO2モニタ, O3モニタ

rSO2局所脳酸素飽和度O3脳オキシメータといい、元々は脳の組織酸素飽和度の指標となりますが、最近ではECMOやTAVIの管理で下肢血流評価にも使用されています

特にECMO管理中は送血側の下肢虚血をモニタリングして、必要時は分枝送血(下肢送血)を実施します

Medtoronic社のINVOSやMasimo社のRoot with O3が使用されています。
・・・ほとんどがINBOSだとは思います。

INVOS
Medtronic社資料より, https://www.jsicm.org/meeting/jsicm48/web_ex/company/09_7.pdf

Root with O3:Masimo社HPより, https://www.masimo.co.jp/root/O3.htm

血行動態モニタ

補助循環管理中は、サーモダイリューションカテーテル(スワン・ガンツカテーテル)を留置し、血行動態をモニタリングすることが大半です。

主にCVP(中心静脈圧)PAP(肺動脈圧)SV-O2(混合静脈血酸素飽和度)CI(心係数)CO(心拍出量)などをモニタリングし、離脱の指標にします。

Edwardsのモニタが使用されていることがほとんどではないでしょうか。

ヘモスフィア(左), Vigilance II(右):Edwards社HPより
https://www.edwards.com/jp/healthcare-professionals/products-services/hemodynamic-monitoring/hemosphere
https://manuals.plus/ja/edwards/vigilance-ii-lifesciences-vigilance-1-2-monitor-manual

この記事を読んだ方へオススメの参考書

Moegi

ECMOに関するおすすめの参考書です。ぜひご一読を。

体外循環による救命治療の全領域を網羅した日本版ECMOの決定版です。
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場
ECMOって何?という疑問を根本から解説する入門におすすめの一冊です。
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場
ECMOを使用する医療従事者がモヤモヤを感じている、ちょっとした疑問・難問100テーマを解説したTips本です。
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場
ECMO、そしてImpellaの台頭という近年の大きな変化を汲んでの大幅改訂版。医師とCEによる共同執筆、図・写真を多用して視覚的分かりやすさと、各社装置・デバイスの特徴を現場目線で解説されています。
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

さいごに

以上でECMOシステム構成とECMO周辺機器の説明を終わります。

ここまでで関連用語とシステム構成の話をしてきましたので、いよいよ本編に入る感じです。

まずは、V-A ECMOからスタートします。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

シェアして頂くと励みになります!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

CEじゃーなる おすすめ書籍紹介

Moegi

補助循環(ECMO・IMPELLA)に関連するおすすめ書籍をご紹介します

ECMOって何?という疑問を根本から解説する入門におすすめの一冊です。
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場
ECMOを使用する医療従事者がモヤモヤを感じている、ちょっとした疑問・難問100テーマを解説したTips本です。
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場
ECMO、そしてImpellaの台頭という近年の大きな変化を汲んでの大幅改訂版。医師とCEによる共同執筆、図・写真を多用して視覚的分かりやすさと、各社装置・デバイスの特徴を現場目線で解説されています。
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場
IMPELLAの参考書が販売されています。 基礎編と臨床編で構成されており、プロトコルなど全国の医療機関の実例を基に執筆されています。 販売されて間もないCP SAと5.5SAも掲載されています。
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

この記事を書いた人

職歴
現大学病院勤務
取得資格
臨床工学技士(CE)、ITE 心血管インターベンション技師、ME1種検定試験

得意領域
カテーテル、アフェレシス、内視鏡、機器管理

大学病院での幅広い勤務実績をもとに、臨床工学技士業務全般執筆しております。
1児のパパでもあり、子育て情報も発信していけたらと思います。

コメント

コメントする

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

目次