[令和5年度最新][シリーズ 育児休業]
さて、今回の題材を「育休」とさせていただいているのは、私Moegiは数ヶ月の「育児休業」を妻のサポートと大切な時期を我が子と過ごすために取得しました。
何故「育休」をテーマとしたかというと、念のため申し上げますが、私は「男性」です。昔に比べれば取得しやすい環境であるのは間違いないのですが、それでも取得が困難であることもまた間違いないです。
「多忙な急性期病院の臨床工学技士が育休を取得できるの?」、「育休申請を申し出ても嫌がられるかも・・・」とかあるかもしれません。
しかし、育休は育児・介護休業法によって労働者は守られていますし、育休を取得する権利があります。
育休の制度なども触れながら、「男性職員でも育休を取得しても良いんだぞ(そもそのこの表現こそ間違いですが)」、「取得していくべきだ」ということを伝えることができればと思います。
今回は男性が育児に関わる上で知っておくと良い情報をまとめたいと思います。
女性の産前産後休暇などは注釈程度にまとめます。
※実は令和3年6月に育児・介護休業法が改正されています。
より男性が育児休業を取得しやすい環境にはなっています。
育児に関わる休暇について
まず、育休といっても何種類かあります。
細かい休暇の名称を挙げると企業ごとに微妙に異なってきますが、「育児休業」、「育児休暇」、企業ごとに定められている「特別休暇」が主なものです。
世間一般的に「育休」というと「育児休業」を示していますので「育児休暇」と混同しないようにご注意ください。また、今回は「部分休業」や「時短勤務」などには触れませんのでご了承ください。
それぞれ説明します。
育児休業(法改定後)
今回のfocusとなっていて、育児に関わる一番重要となるのがこの「育児休業」です。
法改正によって少しややこしくなっていますが、基本的な内容としてママさん、パパさんどちらも関係なく、原則としてお子さんが1歳になるまで取得可能です。
法改正前までは分割取得が不可能でしたが、法改正後はママさん、パパさんともに2回まで分割取得が可能となりました。つまり、ママさんパパさんが交互に2回ずつ取得することも可能になったわけです。
さらに法改正により「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設されました。
育児休業の期間中は無給となります。そのために「育児休業給付」という制度がありますので、必ず確認するようにしましょう。
育児休業に関してもう少し詳しく・・・
※参考 厚生労働省 石川労働局より
育児休業は男女問わずに、そして夫婦同時に取得できます。取得期間は養育する子の1歳到達日(誕生日の前日)まで取得可能で、条件を満たせば①1歳2カ月まで、②1歳6カ月まで、③2歳まで育児休業を取得を延長できます。
①1歳2ヶ月まで
通称「パパ・ママ育休プラス」というもので、両親ともに育児休業を取得した場合、1歳2ヶ月まで育児休業が取得できます。
②1歳6ヶ月まで
(1) 保育所(※)に入所の申し込みを行っているが、子の1歳の誕生日以後の期間について、当面入所できない旨通知された場合。
※保育所には無認可保育施設は含まれないため、市町村に対して保育の申し込みを
行っているが入所できない場合に限ります。
(2) 常態として子の養育を行っている配偶者であって、子の1歳の誕生日以後の期間について常態として子の養育を行う予定であった者が死亡、負傷・疾病、離婚などによって子を養育することができなくなった場合。
③2歳まで
(1)保育所等(※)に入所の申込を行っているが、子の1歳6か月の誕生日応当日以後の期間について、当面入所できない旨通知された場合。
※保育所には無認可保育施設は含まれないため、市町村に対して保育の申し込みを
行っているが入所できない場合に限ります。
(2)常態として子の養育を行っている配偶者であって、子の1歳6か月の誕生日応当日以後の期間について常態として子の養育を行う予定であった者が、死亡、負傷・疾病、離婚などによって子を養育することができなくなった場合。
育児休暇
「育児休業」と混同されやすい「育児休暇」ですがこちらは企業が定める休暇制度の一つです。
つまりは特別休暇の一種と考えてもらって構いません。
ただし、対象者、休暇期間、給付金の有無(有給か無給か)は企業に委ねられている部分です。
数日間(3日や5日、7日など)、有給休暇としている企業が多いのではないでしょうか。
Moegiの病院では5日間、有給の扱いで取得できます。
近年は育児休業の取得率が増加してきており、育児休暇を制度化されてきている企業も増えてきてきているのではないでしょうか。元々、育児・介護休業法の2017年改正後に育児をする目的の休暇を設置する「努力義務」が課されています。
導入している企業が未だ少ないと思われ、導入している企業としては人材確保する上でのアピールポイントにもなるわけです。(もっとも、子供が欲しい人がどれくらいいるのか不明ですが・・・。)
特別休暇
特別休暇は年次有給休暇とは別に、法律によって定めがないが企業が制度化している福利厚生の一つです。例えば、慶弔休暇、夏季休暇、リフレッシュ休暇、病気休暇といったところでしょうか。
これらは有給休暇としている企業が多いですが、絶対に有給であるわけではないことにご注意ください。
さて、出産・育児に関わる特別休暇もあります。もちろん、企業ごとに名称も異なったり、そもそも制度化されていない企業もあることを念頭に置いてください。
妊婦さんやママさんが取得できるものが多いですが、今回は男性が取得可能なものを挙げます。
育児休暇
既に上記で述べた通りです。特別休暇の一つで、5日前後で取得できるところが多いです。
配偶者出産休暇
妻の出産における入院の準備や付き添い、出産時の立会い、第2、第3子の出産のため、下の子の世話のために設けられている特別休暇です。
陣痛がきて入院、出産立会いのための休暇という意味合いが強いのか、2、3日を定めている企業が多そうです。
子の養育休暇
子のが3歳未満の場合、年齢ごとに数日取得できます。予防接種などで取得できそうですね。
子の看護休暇
その名の通りですが、年数日取得できそうです。
以上で主な育児に関わる特別休暇を挙げました。我が子が大きくなるまでは年休は何かあった時のために節約しておきたいものです。利用できる制度は利用しましょう。
法改正について
育児休業などを定めている「育児・介護休業法」ですが、令和3年(2021年)6月に改訂されました。
実はこの法改定では私達男性職員の育児休業が取得しやすい内容へ改訂されたのです。そして、法改定後の施行が令和4年(2022年)4月1日から順次されているのです。
その改訂ポイントをまとめたいと思います。
産後パパ育休(出生時育児休業)の創設(令和4年10月1日施行)
まずは、「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設され、令和4年10月1日より施行されました。
何といっても、パパさんの育児休業が取得しやすくなったという内容となります。
(このご時世全員が取得できるとは言ってない。いや、労働者の権利だ!!)
この産後パパ育休は、育児休業取得ニーズ的に出生直後の時期に高くなることから、より柔軟に育児休業を取得しやすいようにと、男性職員の育児休業取得促進のため設けられました。
やはり、ママさんは産後1ヶ月は安静に、休養が必要と考えられるため、可能な限りパパさんも育休を取得するのが望ましいと考えます。
出産による母体のダメージはかなりのものです。
妻の出産時のあれだけの叫び声は初めて聞きました。
産後ダメージの回復には1ヶ月程度の休養が必要と言われています。
やはり、出産後に男性の育休の必要性、重要性を感じます。
さて、この産後パパ育休、通常の育児休業と何が違うのかということですが、「出生時育児休業」自体は以前から存在しております。改定後の産後パパ育休(=出生時育児休業)との違いを比較したいと思います。
まずは、厚生労働省が出している表が解りやすいのでご覧ください。
育児・介護休業法「令和3年(2021年)改定内容の解説」, p11, 厚生労働省
まず法改定前は、出生後8週間以内に取得すると、8週後に再度育児休業が取得可能な「パパ休暇」の制度がありましたが、パパ休暇と育児休業はそれぞれ分割して取得ができませんでした。つまり、出生後8週間以内に1度、出生後8週間以降から1歳になるまで(原則)の期間内に1度の計2度までしか取得できず、早目に仕事に復帰したが、やっぱり育休が必要となった際に3度目、4度目と取得できなかったのです(下図)。
育児・介護休業法「令和3年(2021年)改定内容の解説」, p12, 厚生労働省
改定後には、産後パパ育休において出生後8週間以内で2回までの分割取得と、育児休業においても出生後8週間以降から1歳になるまでの期間内に2回までの分割取得の計4回の期間でパパさんは育休が取得が可能になりました。
分割取得が可能になったことにより、夫婦で交代しながら育休を取得することが可能になりました。
さらに、保育所に入所できなかった際の取得開始日も緩和されたことにより、より柔軟に夫婦で育休を取得することが可能になったわけです(下図)。
育児・介護休業法「令和3年(2021年)改定内容の解説」, p12, 厚生労働省
また、育児休業の申請をするには、育児休業開始日より1ヶ月前に申し出る必要がありましたが、法改定後には、育児休業開始日より2週間前より申し出ることで取得が可能になりましたので、急に育休が必要となった際に開始時期を早められることになりました。
「パパ・ママ育休プラス」について
パパ・ママ育休プラスは、制度自体は2010年に制定されていました。パパさんの育児休業の取得を促し、夫婦が協力して育児を行うことを目的とするものです。
少しわかりにくいので解説します。
「原則、⼦が1歳に達する⽇(1歳の誕⽣⽇の前⽇)までの間の労働者が希望する期間。なお、配偶者が育児休業をしている場合は、⼦が1歳2か⽉に達するまで出産⽇と産後休業期間と育児休業期間と出⽣時育児休業を合計して1年間以内の休業が可能」・・・と定められておりますが、ん?と思われた方がいらっしゃるかもしれません。
そうなんです。2ヶ月延長すると言いつつ、取得期間は1年を超えることができません。
さらにパパ・ママ育休プラスの取得条件は下記です。
①配偶者が子どもの1歳の誕生日前日までに育児休業を取得している
②子の1歳の誕生日前に育児休業開始予定日が設定してある
③夫婦ともに育児休業を取得すること
④パパ・ママ育休プラス取得者の育児休業開始予定日が、配偶者の取得した育児休業開始の初日以降になっていること
つまりは、
①産後夫婦が同時に育児休業を1年取得している場合は、ともに取得期間が1年を超えるため、2ヶ月の延長は取得できません(保育所に入所できなかった場合は規定通り片方は延長できる)。
②ママさんは1年間育休を取得し、ママさんの仕事の復帰タイミングでパパさんが2ヶ月延長して育休を交代して取得することができる。
③ママさんは1年間育休を取得し、パパさんは産後2ヶ月後から取得することで、手のかかる時期は夫婦2人で育児をし、1年取得し終えたママさんが仕事を復帰しても、産後1年2ヶ月目までパパさんが取得することができる(下図)。
・・・などということです。
転職なら、求人情報・転職サイトdoda(デューダ)
「育児と仕事の両立:夫婦二人で育児休暇を取るために「パパ・ママ育休プラス」を利用しよう」https://doda.jp/woman/guide/seido/021.html
育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け(令和4年4月1日施行)
法改定により、育児休業を取得しやすいような環境整備と育児休業に関する周知と取得意向の確認が義務付けられました。その内容をまとめたいと思います。
1. 育児休業を取得しやすい雇用環境整備の措置
育児休業と出生時育児休業(産後パパ育休)の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じることが義務付けされました。当然ですが、男女とも対象に実施です。
全労働者を対象とすることが望ましいが、少なくとも管理職は、研修を受けた状態にする。
形式的に設けるのではく、実質的な対応が可能な相談窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知すること。
自社の育児休業の取得事例を収集し、これらの事例を掲載した書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者が閲覧できるようにする。提供する取得事例が特定の性別や職種、雇用形態等に偏らないよう、可能な限り様々な労働者の事例を収集・提供し、特定の者の育児休業の申出を控えさせることに繋がらないように配慮すること。
育児休業に関する制度と育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示すること。
2. 妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
本人又は配偶者の妊娠・出産等の申し出た労働者に対して、個別に制度周知をしたり、休業取得意向確認したりする措置を実施することが義務化されました。
具体的な内容としては、以下の全ての事項を周知しなければなりません。
①育児休業・産後パパ育休に関する制度(制度の内容など)
②育児休業・産後パパ育休の申出先(例:人事部など)
③育児休業給付に関すること(例:制度の内容など)
④労働者が育児休業・産後パパ育休期間に負担すべき社会保険料の取扱い
周知方法には以下の方法が挙げられます。
①面談(オンライン可)
②書面交付
③FAX
④電子メール等 のいずれか ※③、④は労働者が希望した場合に限る
労働者へ周知する際に管理職の方が気を付けることとして、個別周知と意向確認は、育児休業・産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにすることが目的ですので、取得を控えさせるような形で周知を行ってはいけません。
取得を控えさせるような形というのは、例えば、取得の申し出をしないよう威圧する、申し出た場合の不利益をほのめかす、取得の前例がないことをことさらに強調するなどの様態です。
有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(令和4年4月1日施行)
法改正後、労働者(有期雇用労働者)の育児休業と介護休業の取得要件が緩和されました。
・・・ちょっと個人的には理解しにくい内容なため、サラッといきます。
【育児休業】
⑴ 引き続き雇用された期間が1年以上
⑵ 1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない
【介護休業】
⑴ 引き続き雇用された期間が1年以上
⑵ 介護休業開始予定日から起算して、93日経過日から6か月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない
【育児休業】
⑴ 引き続き雇用された期間が1年以上 → 撤廃
⑵ 1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない
【介護休業】
⑴ 引き続き雇用された期間が1年以上 → 撤廃
⑵ 介護休業開始予定日から起算して、93日経過日から6か月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない
※無期雇用労働者と同様の取り扱いです。
引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外可。
※育児休業給付、介護休業給付についても同様に緩和。
男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設(令和4年10月1日施行)
重要な内容だったため、先に解説してしまいましたが、産後パパ育休(出生時育児休業)が創設されました。
正確な取得日数としては、子の出生後8週間以内に4週間まで取得が可能です。
4週間取得以降は、通常の育児休業となります。
また、再度の解説となりますが、育児休業の申請をするには、育児休業開始日より1ヶ月前に申し出る必要がありましたが、法改定後には、育児休業開始日より2週間前より申し出ることで取得が可能になりました。
育児休業の分割取得(令和4年10月1日施行)
こちらも先に解説してしまいました。改定後には、産後パパ育休において出生後8週間以内で2回までの分割取得と、育児休業においても出生後8週間以降から1歳になるまでの期間内に2回までの分割取得の計4回の期間でパパさんは育休が取得が可能になりました。
分割取得が可能になったことにより、夫婦で交代しながら育休を取得することが可能になりました。
さらに、保育所に入所できなかった際の取得開始日も緩和されたことにより、より柔軟に夫婦で育休を取得することが可能になったわけです。
育児休業の取得の状況の公表の義務付け(令和5年4月1日施行)
令和5年4月1日より施行となっておりますが、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられることになりました。
これは男性の育児休業取得促進のために、男性の育児休業等取得率の公表が義務付けらることになりました。
もう少し正確に言いますと、男性の①「育児休業等の取得割合」又は②「育児休業等と育児目的休暇の割合」の公表となります。
事業主は部署ごとの管理職は良い数字にしたいと焦ると思うので、これからの男性育休は取得しやすいかもしれませんね。
育児・介護休業法「令和3年(2021年)改定内容の解説」, p27, 厚生労働省
育児休業等を理由とする不利益取扱いの禁止・ハラスメント防止
法改正後は、妊娠・出産の申し出をしたことや、産後パパ育休の申し出・取得をしたこと、産後パパ育休期間中の就業を申し出・同意しなかったこと等を理由とした不利益な取扱いの禁止が追加されています。
また、事業主には、上司や同僚からのハラスメント防止する措置を講じることが義務付けられることとなりました。
例えば以下の事例が考えられます。
①上司へ育休取得を相談したら、「男のくせに育児休業を取るなんてあり得ない」と言われ、育児休業の取得を諦めざるを得なかった。
②産後パパ育休の取得することを同僚に伝えたら、同僚から「迷惑だ。自分なら取得しない。あなたもそうすべき。」と言われ苦痛に感じた。
③育児休業から復帰後、解雇されたり、不当な減給や降格、異動があった。
育児・介護休業法については厚生労働省のHPへ。今回の記事執筆に参考にした資料があります。
まとめ
正確性を優先するため、どうしても細かい話が長くなってしまったため、簡単なまとめです。
- 男性でも育休は取れます。というか取れる社会になるべきです!
- 育児休業は原則としてお子さんが1歳になるまで取得可能で育児介護休業法で定められています。
- 1歳2ヶ月まで「パパ・ママ育休プラス」
- 1歳6ヶ月〜最大2歳まで 保育所に当面入所できない場合
- 育児休暇はあくまでも努力義務のため勤務先により異なります。
- 令和4年10月より産後パパ育休(出生時育児休業)が創設されました
- 育児休業とは別に取得可能です。
- 労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能であるため労使共に使いやすい制度です。
- 分割して2回取得可能で使いやすい制度です
細かな点はまた各項目をご覧ください。
さいごに
今回は、育児に関する休暇制度についてまとめました。想定よりもボリュームが大きくなったため、給付金の内容には触れることができませんでした。
男性の育休がちゃんと制度化されたのがホント最近の話ですので、もっと広まれば良いなと思います。給付金については次の記事で触れていきたいと思います。
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