本記事では「タスクシフトを踏まえた上で、内視鏡室での臨床工学技士(CE)の役割」について説明します。
前回の記事では内視鏡についての簡単な説明をとりあげました。
今回の記事では、内視鏡室でどのような業務があるかを解説をしていきますが、所々看護師さんの業務内容であることもありますが、ルート確保以外は誰がやっても良い内容かと思われますので、その点を踏まえて読んでいただきたいと思います。(チーム医療ですからッ!!)
CEが内視鏡室に介入していない場合は、看護師や放射線技師へ置き換えていただければと思います。
当サイトの内視鏡の記事につきまして
当ブログの内視鏡記事では、内視鏡担当を始めた初学者、内視鏡に興味がありどんなことをしているのか気になる方などをターゲットとしております。
最前線でESDをされているCEさんや内視鏡技師さんにはかなり物足りなかったり、ツッコミを入れたくなるような記事になるかもしれませんがご容赦願います。
内視鏡領域は、まだまだCEが介入して発展させられる領域であり、これから内視鏡業務をCEが立ち上げていく施設様がチラホラと見受けられます。
「ウチではこういう工夫をしている」、「当院でESDの縫縮はこういう手法をしている(ex:野村先生のROLMなど)」などといった貴重なコメントをお待ちしております。
内視鏡検査/検査について
まず、内視鏡室でどんなことをしているのかについてです。
今回は検査/治療内容については触れませんのでご了承ください。
以下が主な検査/治療内容です。
- 上部消化管内視鏡検査(食道/ 胃/ 十二指腸)【通称:胃カメラ】:EGD, GS, GIF
- 下部消化管内視鏡検査【通称:大腸カメラ】:CS, CF
- 内視鏡的粘膜切除術:EMR
- 内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD
- コールドスネアポリペクトミ:CSP
- 拡大内視鏡検査(食道/ 胃/ 十二指腸/ 大腸)
- 超音波内視鏡検査:EUS
- 内視鏡的逆行性胆管膵管造影:ERCP
→内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)、内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)、内視鏡的ステント挿入術(EBD)などを含む - 小腸内視鏡検査:カプセル内視鏡、ダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)
- 胃瘻増設(PEG)
内視鏡室での業務内容
私達コメディカルが関わる内視鏡室での業務内容例です。
- スコープのセッティング
- 治療/検査の準備
- 患者の受付と前処置、事前確認(タイムアウト)
- 検査のデバイス介助
- 治療のデバイス介助
- スコープ、リユースデバイスの洗浄/滅菌
- 電気メスの設定変更
- 検査/治療デバイスの補充や定数管理
- 小腸カプセルの読影補助(消化管内視鏡技師とカプセル内視鏡読影技師の認定が別途必要)
- 鎮静目的のルート確保(看護師 or 医師)
- リカバリー室での鎮静後患者のアフターケア(主に看護師)
各業務内容の説明
以下が各業務内容についての説明です。
なお、日本臨床工学技士会が「内視鏡業務指針」を公開していますので、そちらも参考にしてください。
スコープのセッティング
つまりは、始業前点検ですね。スコープのアングルが掛かるか、吸引/送気/送水がちゃんとできるかの確認です。「CO2出ないんだけど」は、頻繁にある出来事ですね。
あとは、検査内容ごとに合ったスコープの選択ですね。「次、拡大機能付きにして」、「側視鏡にして」など対応できるようします。
治療/検査の準備
治療/検査に合ったスコープをセットします。ガーゼや潤滑ゼリーは必須ですね。吸引/送気チェック用の水入りコップ、キシロカインスプレーなどは常に傍に置いてます。
あとは治療であれば使用するデバイスの準備、検査であればその都度生検鉗子や染色液(インジゴやルゴール)を準備します。
患者の受付と事前確認(タイムアウト)
「CEの役割」という記事であれっ?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、CEが内視鏡室への患者入室を受け付けたり、検査介助に入られている施設もあることでしょう。
対患者は看護師、デバイス介助はCE・・・といった固定概念がいつの間にか構築されているかもしれませんが、近年はタスクシフトの観点から、CEも内視鏡室への誘導や検査説明、アフターケアまで介入している施設さんはあるかと思われます。
検査/治療の準備が整ったら、待機されている患者さんを内視鏡室へ案内し、項目は1例ですが、以下の内容などを確認します。
①名前と生年月日
→患者間違いを防止するため
②アレルギー(キシロカインや造影剤など)
→当然ですが、使用禁か慎重投与のため
③既往歴(緑内障、不整脈や心筋梗塞、外科手術後など)
→ブスコパンなどが使用可能か確認するため。挿入困難の予測をするため。。
④内服薬(お薬手帳)
→抗血小板薬や抗凝固薬などの確認。縫縮の追加など。
⑤ペースメーカや人工関節など体内の金属物
→対極板の貼る位置や設定変更が必要なことがあるため。
⑥入れ歯や動揺歯が無いか
→スコープ操作で外れて誤飲してしまうことがある。
・・・などといったことを確認し後にスコープ挿入準備に入ります。
初めて受けられる患者さんにはより丁寧に説明し、不安除去に努めます。
スコープの挿入サポート
顎先の向き、体位変換などを効果的にサポートすることで、挿入が円滑にあることは良くあります。
特に大腸の挿入時には、適宜体位変換と圧迫を併用します。
検査のデバイス介助
デバイスの準備や組織生検、色素散布を介助します。
治療のデバイス介助
止血デバイス、クリップ、処置デバイスの介助をします。
どんなデバイスがあるのかは後々紹介しようと思います。
スコープ、リユースデバイスの洗浄/滅菌
使用後のスコープの洗浄とリユースデバイスの洗浄を行います。介助には入らず、洗浄だけを業務とする方もいらっしゃるのではないでしょうか。
スコープの種類によって、洗浄方法が異なるのが面倒です・・・。
リユースデバイスは洗浄後滅菌へ出します。
電気メスの設定変更
先生の指示の下に設定変更をします。食道・胃・十二指腸・大腸と臓器ごとに出力が違いますし、覚えるのは大変です。
治療ごと、デバイスごとの設定でラベルをつけて保存できることが救いですかね。
検査/治療デバイスの補充や定数管理
いざ治療の時に「あれないの?」とならないようにします。
現実、新しいデバイスのサンプルやデモ商品ですら、私達CEがディーラーとやり取りしてデモ商品の手配をしています。
・・・割と重要な仕事です。
小腸カプセルの読影補助
飴玉よりもう少し大きい小型のカメラを飲み込んでもらいます。体表にホルター心電図のような装置を装着し、カメラと通信して画像を取り込みます。
その読影ですが、先生はご多忙なため診断はできませんが、怪しいなと思うところをマーキングし、先生にチェックしていただきます。
画像の読影補助には、消化管内視鏡技師とカプセル内視鏡読影技師の認定が別途必要となります。
鎮静目的のルート確保
患者さんの中には、一定数、上部・下部に関わらず内視鏡が痛みであったり、嗚咽間であったりと検査困難である方がいらっしゃいます。
そんなとき鎮静剤を使用しますが、点滴ルートが必要となります。
検査前に看護師さんか、先生にルート確保していただきます。
リカバリー室での鎮静後患者のアフターケア
上部消化管検査(胃カメラ)の際には、喉に麻酔のスプレー(キシロカインスプレー)をします。
検査後も1時間程度は効果は持続するため、飲水飲食はやめていただきます。
また、鎮静剤使用した患者は、検査してすぐに会計して帰宅するわけにはいきません。
1時間程度安静にしていただきます。
もしかしたら、ショックや呼吸停止になっているかもしれません。
さいごに
以上で内視鏡室での業務内容のざっくりした内容の紹介でした。
まずはイメージ作りです。
今後の記事によって、内視鏡への興味を持っていただきたいと思います。
追記:Special Thanks
Twitter上にて、当記事が臨床工学技士養成校の方の目に留まり、DMにて「大変分かりやすい」「ぜひ教育の参考にしたい」とお褒めの言葉をいただくやりとりがありました。
X(Twitter)でのRT、いいね、コメント大変励みになります。
藍野大学臨床工学科のご担当者様、この度はありがとうございました。
コメント