臨床検査技師などが1年で臨床工学技士(CE)の受験資格を取れる「1年課程」が減っています。2025年10月時点で全国に7つあった課程のうち2校が募集をやめ、2027年度に入れるのは5つになりました。
一方で厚生労働省の調査では、いま働いている職種とは別の医療資格を持つ人の割合がいちばん高かったのはCEでした。そのほとんどが、この1年ルートを通った臨床検査技師との組み合わせです。
なぜこのルートだけが突出したのか。制度の仕組みと歴史を一次資料でたどり、細りつつある1年課程の実際も整理しました。

この記事の要点
- CEの1年課程は2025年時点で全国に7つ。北里大学保健衛生専門学院と神戸総合医療専門学校が募集をやめ、2027年度に入れるのは5つ
- それでも、別の医療資格を持つCEは7.4%で12職種最多。うち7割強が臨床検査技師の資格
- 背景には、検査技師などが1年でCEの受験資格を取れる「短縮課程」がある
- このルートは、1990年代〜2000年代の検査室の「冬の時代」と、CEの需要が増えた時期が重なって定着した
- 1年課程はすべて昼間。学ぶ専門内容は3年課程とほぼ同じ量を1年に詰め込む
検査技師からCEへの1年課程、7つから5つに
臨床検査技師などがCEの受験資格を1年で取れる課程(臨床工学技士法14条2号)は、国家試験を実施する医療機器センターの学校・養成所一覧(2025年10月1日現在)では全国に7つありました。
| 都道府県 | 学校 | 課程 |
|---|---|---|
| 東京都 | 首都医校 | 臨床工学技士特科(昼間1年) |
| 東京都 | 帝京短期大学 専攻科 | 臨床工学専攻(昼間1年) |
| 新潟県 | 臨床工学専攻科(昼間1年)※2026年4月の入学生で募集終了 | |
| 京都府 | 京都保健衛生専門学校 | 臨床工学技士専攻科(昼間1年) |
| 大阪府 | 大阪ハイテクノロジー専門学校 | 臨床工学技士専攻科(昼間1年) |
| 大阪府 | 藍野大学 | 臨床工学専攻科(昼間1年) |
| 兵庫県 | 臨床工学専攻科(昼間1年)※2027年度から募集停止 |
ただ、この一覧のあとで2校が募集をやめています。北里大学保健衛生専門学院は、臨床工学専攻科の募集を2026年4月の入学生で終えました。神戸総合医療専門学校も2026年3月に、1年課程(学校での名称は臨床工学特科)の2027年度以降の募集中止を発表し、3年制の臨床工学科も同じく募集を停止しています。神戸のお知らせには「進路の多様化や18歳人口の減少等により入学者数減少の現状を鑑み」とありました。
2027年度に入学できる1年課程は、東京・京都・大阪の5つです。新潟と兵庫からは、この課程がなくなります。
2年のあいだに7つのうち2つが募集をやめました。1年ルートの入口そのものが、養成校全体と同じように細くなっています。
それでも、この1年ルートを通ったダブルライセンスは、医療職のどの組み合わせよりも多い。なぜこのルートだけが突出したのかを、厚労省の調査と歴史からたどります。
ダブルライセンスはどれくらいいるのか
別の資格を持つ人は1.9%、CEは7.4%で最も高い
前回の記事では、社会人入学で養成校の定員を埋める案が回るのかを、厚労省の調査で確かめました。そのなかで「実際に回っているキャリアチェンジ」として挙げたのが、臨床検査技師と臨床工学技士の組み合わせです。今回はここを掘り下げます。
医療関係職種12,021人に、いま主に働いている職種以外の医療資格を持っているかを聞いた結果です(資料3 p.19)。
| 職種 | 保有している |
|---|---|
| 臨床工学技士 | 7.4%(98名) |
| 言語聴覚士 | 3.4%(13名) |
| 視能訓練士 | 3.4%(6名) |
| 臨床検査技師 | 2.1%(51名) |
| 看護師 | 1.6%(23名) |
| 全職種 | 1.9%(223名) |
全体では50人に1人もいません。そのなかでCEだけが7.4%と、ほかの職種の2倍以上でした。
組み合わせの大半は、臨床検査技師と臨床工学技士
では、どの資格を持っているのか。組み合わせごとの人数を見ると、偏りがはっきりします(資料3 p.20)。

CEとして働く人が持つ別の資格は、98名のうち72名が臨床検査技師でした。反対に、臨床検査技師として働きながらCEの資格を持つ人も46名います。3番目に多い「CEとして働き、看護師の資格も持つ」21名と比べても、この2つは飛び抜けています。
なぜ臨床検査技師とCEなのか:制度の仕組み
CEには、1年で受験資格が取れる課程がある
CEの国家試験を受けるには、高校を出てから養成校で3年以上学ぶのが基本です。ただし臨床工学技士法14条には、別の学校で一定期間学んだ人向けの短縮ルートが用意されています。
| ルート | 条件 | 養成校での修業 |
|---|---|---|
| 基本(14条1号) | 高校卒業 | 3年以上(101単位) |
| 短縮(14条2号) | 大学・短大・医療系の養成所などで2年以上学び、指定科目を修めた | 1年以上(87単位) |
| 短縮(14条3号) | 同じく1年以上学び、指定科目を修めた | 2年以上(87単位) |
| 大学(14条4号) | 厚労大臣の指定科目を修めて大学を卒業 | 4年 |
臨床検査技師の養成校で2年以上学んでいれば、14条2号の条件のうち「2年以上の修業」はそれだけで満たせます。
指定科目は、検査技師の学校で学ぶ科目と重なる
もうひとつの条件が、厚労大臣の指定科目です。人文科学・社会科学・自然科学・外国語・保健体育のほかに、次の21科目から8科目を修めている必要があります。
公衆衛生学、解剖学、生理学、病理学、生化学、免疫学、看護学概論、保健技術学、応用数学、医用工学概論、システム工学、情報処理工学、電気工学、電子工学、物性工学、機械工学、材料工学、計測工学、放射線工学概論、臨床医学概論、内科診断学
解剖学、生理学、病理学、生化学、免疫学、公衆衛生学、医用工学概論。臨床検査技師の学校で学ぶ医学系の科目が、そのまま並んでいます。検査技師の課程を出た人は、指定科目の8科目を埋めやすいわけです。
一方で、反対向きのルートはありません。臨床検査技師には短縮課程がなく、CEから検査技師を目指すなら3年以上の課程に入り直すことになります(資料3 p.3)。46名と72名という差の背景には、このルートの非対称もありそうです。
科目が大きく重なり、しかも1年で済む課程が制度として用意されている。
12職種のなかで、この条件がそろっている組み合わせはほとんどありません。
1年ルートが生まれた歴史
最初は夜間2年課程だった
短縮課程の始まりは、日本臨床工学技士教育施設協議会の調査報告(2020年)にまとまっています。14条2号の最初の学校は1994年、東京の夜間2年課程(定員40名)でした。昼間に働く社会人や医療系の有資格者が通えるように、という狙いです。
ただ、当初は指定科目を出身校で修めていることが求められ、定員を埋められない課程が多かったといいます。その後、放送大学などでの科目取得が認められて、2号の課程は増えていきました。
昼間1年課程を開いたのは、検査技師の学校だった
そこから「昼間1年なら入学したい」という声が多く出て、昼間1年課程が増えます。同じ報告は、昼間1年課程の開設について、こう書いています。
3年制の臨床検査技師養成課程を養成している学校が、都道府県の職能団体(臨床工学技士、臨床検査技師)等関係団体から意見徴収し開設の必要性が認められた結果、開学に繋げてきた。
検査技師を育てている学校が、自分の卒業生の次の進路として、CEの1年課程を開いた。このルートは最初から「検査技師の学校の延長」として作られていました。
検査室の「冬の時代」と重なった
この時期、臨床検査技師の就職はどうだったのか。当時の専門誌を見ると、1990年代後半から2000年代前半にかけて、検査室には厳しい言葉が並んでいます。

| 年 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1994 | 14条2号の最初の課程(東京・夜間2年) | 日本臨床工学技士教育施設協議会 |
| 1996 | どの検査部でもリストラ・人件費の削減が話題に。点数の引き下げで機械化し、人手を減らす方向 | 臨床検査 1996年1月号 |
| 2000 | 「冬の時代」。検体検査の点数の引き下げで収益が減る | 臨床検査 2000年9月号 |
| 2001 | 14条3号の最初の課程(東京・夜間2年)。この時点で2号の課程は6施設 | 日本臨床工学技士教育施設協議会 |
| 2002 | 大学病院でも外注やブランチラボの導入が進む | 臨床検査 2002年8月号 |
| 2006 | 約3,000人が合格しても、病院の検査部に就職できる学生は多くない。合格後に臨床工学の専攻科で1年学ぶ学生が増えている | 薬事日報 2006年4月14日 |
2006年の薬事日報のコラムは、検査技師の国家試験に受かった学生が、CEの専攻科に1年進む流れをはっきり書いています。病院の検査部の採用が狭き門だった時期に、もうひとつ資格を足して就職先を広げる。そういう使われ方をしたルートでした。
病院の検査部の採用は、2006年の7対1入院基本料の新設をきっかけに増えたとされます。「検査技師はいまも就職難」とまでは、この記事では言いません。ルートが定着したのは、採用が厳しかった時期だった、ということです。
協議会の報告も「景気の悪化により入学者数が増加する傾向が見られている」と書いています。CEの短縮課程は、ほかの道が狭いときに選ばれてきた道でもあります。
いま、両方の資格を持つ意味はあるのか
臨床検査技師は、いまもCEに関心がある
医療従事者向け調査では、取りたい資格も聞いています(資料3 p.22)。臨床検査技師が取りたい資格は看護師(114件)に次いでCE(73件)。反対に、CEが取りたい資格でも臨床検査技師は看護師に次ぐ2番目(44件)でした。このルートへの関心は、いまも途切れていません。

エコーができるCEの強み
私が学生時代に病院実習で行った先にも、このルートで資格を取ったCEの方がいました。
編集部その方の働き方を見ていて、検査技師として心エコーもできるCEは強いと思いました。
透析のDW(ドライウェイト)の評価や心疾患の評価につながりますし、心臓カテーテルの業務でも、エコーで心臓を見て病態を理解できるのは役に立ちそうと、現場に出て働くようになってから痛感しています。
何よりいまは透析の現場で、CEがシャントエコーを当てる時代です。2021年の厚労省の通知によりCEでも透析の穿刺に付随するバスキュラーアクセスのエコーが認められるようになりました。
一方当然ですが心エコーのような生理学的検査は、臨床検査技師の業務として位置づけられています。両方の資格があれば、この線の両側に立てます。



VA関連の学会では、臨床検査技師の方に直接エコーを教わることもあります。
検体検査はともかく、エコーまわりで2つの資格を持つことには、たしかに魅力があると思います。
それでも引っかかる、1年で足りるのかという疑問
ただ、大学で4年かけてCEの課程を修めてきた身としては、どうしても引っかかることがあります。CEの学習内容は、1年で習えるほどの量なのか、という点です。


数字で見ると、1年課程は3年課程の101単位から、基礎分野の14単位を除いた87単位です。専門の中身は減っていません。
3年課程とほぼ同じ専門内容を、1年に詰め込んでいるということです。協議会の報告も、昼間1年課程では時間の制約から、入学時に免除される科目を前提に「医療系科目と工学系科目を裏表で講義・開講せざるを得ない場合が想定される」と書いています。



検査技師の課程で医学系はすでに学んでいる、という前提があるから成り立つ仕組みです。
逆に言えば、電気・電子や機械といった工学系は1年で一気に学ぶことになる。そこは入ってから相当きついはずです。
これが「キャリアチェンジは回る」の証拠にならない理由
ダブルライセンスの数字は、「医療職のキャリアチェンジは機能している」という話の材料に使われがちです。でも、ここまでの経緯を見ると、そうは言えません。
医学系の科目がほぼ重なり、1年の短縮課程がある。この条件がそろうのはごく一部
検査技師の採用が厳しかった時期と、CEが増えていった時期が重なった
これだけ条件がそろっても、複数資格を持つ人は全体で1.9%



臨床検査技師⇔CEのダブルライセンスは、検査技師の就職難と、CEの1年課程の需要がたまたまかみ合った結果だと私は見ています。
医療とは別の仕事をしてきた社会人を一から育てる話とは、前提がまったく違います。
これからダブルライセンスを目指す人へ
2027年度に入れるのは5つ、すべて昼間
冒頭の表のとおり、2027年度に入学できる1年課程は、首都医校、帝京短期大学、京都保健衛生専門学校、大阪ハイテクノロジー専門学校、藍野大学の5つです。すべて昼間の1年で、2年課程(14条3号)は一覧にありません。働きながら通える形ではないので、1年間は仕事を離れるか、大きく減らす前提になります。
費用と期間の目安
学費は学校によって違います。たとえば首都医校は、臨床工学技士特科の学費を129万円と案内している。帝京短期大学の専攻科(臨床工学専攻)は、入学金10万円と授業料等119万320円です(令和8年度)。専門実践教育訓練給付金の対象になっている課程もあるので、雇用保険に入っている社会人は出願前に確認しておきたいところです。
取る前に考えておきたいこと
出願前のチェック
- 出身校で修めた科目が指定科目の8科目を満たすか(学校の入試窓口で確認できる)
- 1年間の学費と生活費、仕事を離れる期間の収入
- 工学系の科目を1年で学び切れるか
- 両方の資格を活かせる職場があるか(エコーや心臓カテーテルなど、何に使いたいか)
- 資格を2つ持っても、手当が二重に付くとは限らないこと
この記事を読むときの注意点
- 厚労省の調査はすべて速報値です。複数資格の人数は職能団体の会員だけが対象です
- 年表の雇用環境は、当時の専門誌・業界紙の記述によるもので、統計ではありません
- 学校の一覧と学費は、出願前に必ず各校の最新情報を確認してください
- CEのエコーの業務範囲は、施設の取り決めや医師の指示のもとで行うものです
よくある質問
- 臨床検査技師から臨床工学技士になるには何年かかりますか?
-
臨床検査技師の養成校で2年以上学び、指定科目を修めていれば、14条2号の1年課程に入れます。最短で1年です。1年課程は2025年10月時点で全国に7つありましたが、北里大学保健衛生専門学院と神戸総合医療専門学校が募集を終えたため、2027年度に入れるのは5つです。すべて昼間です。
- 臨床工学技士から臨床検査技師になる短縮ルートはありますか?
-
ありません。臨床検査技師には短縮課程がなく、3年以上の養成課程に入り直す必要があります。
- 臨床工学技士は心エコーをしてもいいのですか?
-
CEのエコーとして業務が整理されているのは、透析の穿刺に付随するバスキュラーアクセスのエコーです(2021年の厚労省の通知)。心エコーのような生理学的検査は、臨床検査技師の業務として位置づけられています。
まとめ:特殊な条件で生まれ、いま細りつつあるルート
- CEの1年課程は7つから5つへ。北里と神戸が募集をやめ、2027年度は東京・京都・大阪だけになる
- それでも別の医療資格を持つCEは7.4%で12職種最多。その7割強が臨床検査技師
- 検査技師の課程は指定科目と重なり、CEには1年の短縮課程がある。逆向きの短縮ルートはない
- 昼間1年課程は、検査技師の学校が開いた例が多い。検査室の「冬の時代」に定着した
- いまもエコーまわりで両方持つ魅力はあるが、1年で3年分の専門内容を学ぶ負担は重い
- 条件がそろった特殊なルートで、「キャリアチェンジは回る」証拠にはならない



エコーまわりで両方の資格が活きる場面は、たしかに増えています。
ただ、このルートは誰にでも開かれた近道ではありません。何に使うのかを決めてから選ぶ道だと思います。
次の記事では、CEが看護師など別の資格を考える理由を、厚労省の調査で詳しく読みます。
- 次回:臨床工学技士が別の資格を考える理由(近日公開)
- 「社会人入学で数を補う」は回るのか|厚労省調査を現役CEが読む
- 臨床工学技士の養成校、半数が「すでに深刻」|厚労省調査を現役CEが読む
参考資料
- 厚生労働省「第5回 医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会:資料」(2026年10月26日)
- 資料3「多様な人材が参入しやすい養成課程に係る調査結果について」
- 日本臨床工学技士教育施設協議会「調査報告:臨床工学技士法 第14条2号・3号養成施設について」(2020年11月3日、第1回臨床工学技士学校養成所カリキュラム等改善検討会 参考資料3)
- 厚生労働省 第1回臨床工学技士学校養成所カリキュラム等改善検討会 資料2「臨床工学技士教育見直しの背景」(2020年11月5日)
- 公益財団法人医療機器センター「学校・養成所一覧|臨床工学技士国家試験」(2025年10月1日現在)
- 北里大学保健衛生専門学院 臨床工学専攻科(募集終了の記載)
- 神戸総合医療専門学校「令和9(2027)年度 臨床工学特科募集中止のお知らせ」(2026年3月13日)
- 大学改革支援・学位授与機構「令和8年度 認定 短期大学・高等専門学校専攻科一覧」(帝京短期大学 専攻科臨床工学専攻の学費)
- 首都医校「臨床工学技士の専門学校は1年で卒業できる?」(学費の記載)










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