臨床工学技士の養成校が、学生を集められなくなっています。厚生労働省が2026年10月26日に出した資料では、CE養成校の半数が入学者の確保について「すでに深刻な状況」と答えました。「10年以上は続けられる」と答えた学校は1校もありません。
臨床工学技士のブロガーとして、その大元の資料からCE養成校に関わる数字を拾って整理しました。
編集部自分の地域でもここ10年ちょっとで養成校が劇的に増えたんですよね。
それなのに「10年もたない」と学校自身が答えているのは正直ショックでした(何も考えずに増やしすぎなんだよ)
この記事の要点(3つの数字)
- 「10年以上継続可能」と答えた臨床工学技士養成校:0校(回答30校)
- 臨床工学技士養成校の定員充足率:57.0%(12職種で2番目に低い)
- 臨床工学技士の仕事を「知らない」社会人:52.4%
厚労省はなぜ今、養成校の数字を集めたのか
2040年に向けて12職種の養成を見直す検討会
大元は、厚労省の「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」です。2026年5月に始まり、10月26日が第5回でした。
対象は看護師やリハ職、臨床検査技師など12職種で、臨床工学技士も入っています。構成員には日本臨床工学技士会の専務理事も名を連ねています。
開催要綱が挙げている理由は、18歳人口が減って養成校の定員充足率が下がっていることです。2040年に向けて、地域ごとに必要な人数をどう育てるかを話し合う場です。2026年冬をめどに議論をまとめる予定とされています。
業界紙のMEDIFAXやCBnewsも26〜27日に報じましたが、どちらも有料記事です。数字の大元は、厚労省のサイトで誰でも読める第5回の配付資料です。
調査の中身:速報値で、CE養成校の回答は30校
この記事で使う数字は、次の3つの調査から取っています。
- 学校養成所向け調査:全国1,920校が対象、1,332校が回答(2026年7〜8月)。CE養成校は45校中30校が回答
- 社会人向け調査:医療資格を持たない20歳以上の40,520名(2026年9月、Web調査)
- 医療従事者向け調査:有資格者12,042名。各職能団体を通じて会員に回答を依頼(2026年9月)
CE養成校の経営見通し:「10年以上継続可能」はゼロ
全職種と並べるとCEの厳しさが目立つ
資料1の22ページに、「現在の体制で、入学者の確保をこの先何年続けられるか」を学校に聞いた結果があります。


| 回答 | 臨床工学技士(30校) | 12職種全体(1,332校) |
|---|---|---|
| 10年以上継続可能 | 0.0% | 23.5% |
| 5〜10年は継続可能 | 13.3% | 13.5% |
| 3〜5年は継続可能 | 10.0% | 11.2% |
| 3年以内に困難になる可能性 | 13.3% | 8.4% |
| すでに深刻な状況 | 50.0% | 23.6% |
| 判断が難しい | 13.3% | 19.7% |
全体でも4校に1校近くが「すでに深刻」と答えています。CEはその倍以上です。
目を引くのは一番上の行です。CEでは30校のうち1校も「10年以上いける」を選んでいません。比較的余裕のある学校でも「5〜10年」が上限、というのがCE養成校の自己評価です。
とはいえ、12職種全体でも「10年以上いける」と答えた学校は4校に1校しかありません。養成校の苦しさはCEに限った話ではなく、この点は次の記事でくわしく見ます。
「3年以内に困難」まで含めると63.3%
「すでに深刻」と「3年以内に困難」を足すと、CEは63.3%になります。12職種のなかでCEより高いのは、8校しかない義肢装具士(75.0%)だけ。「10年以上継続可能」が0%の職種も、この2つに限られます。
5年以内に続けられなくなる、という答え(「3〜5年」「3年以内」「すでに深刻」)を全部足すと、CEは73.3%。回答した学校の4校に3校が、5年先を見通せていません。
充足率と並べると「深刻さ」の感じ方は職種でばらつく
同じ資料の定員充足率(次の章でくわしく見ます)と並べると、少し違う景色が見えます。
| 職種 | 定員充足率 | 「すでに深刻」 |
|---|---|---|
| 診療放射線技師 | 103.2% | 9.3% |
| 看護師 | 89.6% | 25.5% |
| 臨床検査技師 | 76.1% | 27.6% |
| 作業療法士 | 66.5% | 30.9% |
| 臨床工学技士 | 57.0% | 50.0% |
| 歯科技工士 | 53.5% | 17.5% |
| 義肢装具士 | 80.6% | 62.5% |
定員が埋まっている診療放射線技師は「深刻」が1割未満で、ここはイメージどおりです。一方で、充足率がCEより低い歯科技工士は「深刻」が17.5%にとどまり、充足率が8割ある義肢装具士は62.5%でした。
充足率の数字だけでは、学校の危機感は測れないということです。CEは「充足率が低い」と「学校自身が深刻だと感じている」が両方そろっている職種、と読めます。
定員充足率57.0%:学校は増えたのに学生が来ない
12職種で2番目に低い充足率
資料1の8ページには、職種ごとの学校数と定員充足率が並んでいます。


| 職種 | 定員充足率 |
|---|---|
| 診療放射線技師 | 103.2% |
| 看護師 | 89.6% |
| 臨床検査技師 | 76.1% |
| 作業療法士 | 66.5% |
| 臨床工学技士 | 57.0% |
| 歯科技工士 | 53.5% |
臨床工学技士の学校は専修学校などが32校、大学などが16校。入学定員は合わせて2,189人です。
※学校数と定員には、臨床検査技師などの資格を持つ人向けの課程(臨床工学技士法14条4号の学校)は含まれていません。
養成校が増えた10数年と、細り始めた入口
養成校が増えた時期は、実際にありました。臨床工学技士の国家試験合格者の累計は、2006年の時点で21,931人でした。2026年の第39回までで60,624人になり、20年で約2.8倍に増えています。
ただ、入口の細りは国家試験の数字にも出始めています。
| 回(実施年) | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 第32回(2019) | 2,828 | 2,193 | 77.5% |
| 第34回(2021) | 2,652 | 2,232 | 84.2% |
| 第36回(2023) | 2,706 | 2,311 | 85.4% |
| 第38回(2025) | 2,598 | 2,049 | 78.9% |
| 第39回(2026) | 2,396 | 1,573 | 65.7% |
ところが、受験者は2019年から2026年で約15%減りました。2026年の合格者1,573人は、2018年以降でもっとも少ない人数です。



2026年は合格率が65.7%まで下がっているのは別記事でも述べたように出題基準の改定の影響も考えられます。
ただ受験者数そのものが減っている点は、入口が細っている表れだと私は見ています。


18歳人口は2040年までに35%減る
同じ資料1には、18歳人口が2021年から2040年までに全国で35.2%減るという推計も載っています。いまの57.0%は、まだ減り始めの段階の数字です。



増えた学校の数に対して、18歳の数が追いつかなくなった。
シンプルに言えばそういうことだと私は読んでいます。
学生が来ない理由として資料から読めること
そもそも職種名を知られていない
資料3の社会人調査では、医療資格を持たない40,520人に14職種の認知度を聞いています。臨床工学技士を「知らない」と答えた人は52.4%。14職種のなかで、視能訓練士(63.5%)に次いで2番目に高い数字です。


| 職種 | 仕事内容までよく知っている | 名称とおおよその仕事内容を知っている | 名称のみ知っている | 知らない |
|---|---|---|---|---|
| 看護師 | 22.4% | 51.7% | 17.9% | 7.9% |
| 理学療法士 | 7.4% | 27.5% | 48.9% | 16.1% |
| 診療放射線技師 | 6.1% | 29.5% | 35.3% | 29.0% |
| 臨床検査技師 | 4.8% | 20.4% | 44.8% | 30.1% |
| 臨床工学技士 | 2.4% | 9.3% | 35.9% | 52.4% |
| 視能訓練士 | 2.3% | 9.2% | 25.0% | 63.5% |
仕事内容まで分かっている人(左の2列の合計)は、CEで11.7%。同じ技師職でも、臨床検査技師は25.2%、診療放射線技師は35.6%でした。
見方を変えると、CEは「名前は聞いたことがあるが、何をしているかは知らない」人が35.9%いる職種です。名前を知っている人のうち、仕事内容まで分かっているのは4人に1人しかいません。
知られていない職種には関心も集まりにくい
同じ調査で「処遇が他産業と同程度だとしたら、資格取得に関心があるか」も聞いています。「非常に」と「やや」を合わせた関心は、CEが14.1%で14職種のなかでもっとも低い数字でした。理学療法士は19.8%、臨床検査技師は18.8%です。
仕事の中身が見えない職種は、進路の候補にすら入りにくい。
高校生や保護者が進路を考える場面で、CEは最初から選択肢に上がっていない可能性があります。
厚労省はどこへ向かうのか:都道府県単位の協議の場と養成校の再編
この調査結果をうけ厚生労働省は一体どこへ向かうのでしょうか。
「処遇を改善する?」「知名度向上に向け取り組む?」「入学定員を絞り込む?」
・・・見えてきた答えは養成校の事実上の統廃合です。
都道府県ごとに「プラットフォーム」をつくる案
資料1の冒頭(32ページ)と結論部分(41ページ)で示されたのは、都道府県ごとに関係者が集まる協議の場(プラットフォーム)をつくる案です。


プラットフォームの案(資料1 p.32・p.41)
- 誰が集まるか
-
市町村、職能団体、ハローワーク、養成校、医療機関、保険者協議会など
- 何を話すか
-
人材の確保、養成体制の安定化、医療機関の業務効率化と勤務環境の改善
- 養成所の指定申請
-
申請があったときにプラットフォームで意見を聴く仕組みも論点に
「養成校の連携・再編」が選択肢に入っている
プラットフォームで話し合う中身には、養成校の連携・再編がはっきり書かれています。2027年度の概算要求には29億円のモデル事業が入っていて、最大15の都道府県で需給の把握や再編の計画づくりを試す予定です。
看護師ではすでに、看護学校を大学に移したり、遠隔地にキャンパスを置いたりする例が資料で紹介されています。




この資料の構成から読み取れるように、厚労省が考えているのは「学校を守って数を増やす」ことではありません。
「地域ごとに必要数を数えて、それに合わせて学校の数と配置を組み直す」方針です。
現役CEとCEを目指す人にとって何が変わるか
現役CE:新卒が届きにくくなる地域が出てくる
養成校が減れば、新卒のCEも減ります。現場から見ると、人を採りにくくなるということです。そのぶん、いま働いているCEの価値は上がるはずです。
ただ、影響の出方は地域で違ってくると思います。資料1には、CE養成校ごとに卒業生がどの県に就職したかの表があります。卒業生の8割以上が地元に就職している学校もあれば、地元に残るのが1割台の学校もありました。地元に人を出している学校がなくなると、その県の病院やクリニックには新卒が届きにくくなります。





正直なところ、学校の数は絞ってもいいと思っています。
高度化していく現場に合わせるなら、入学者を絞って養成校を整理するほうが筋がいいというのが私の考えです。
ただ整理するなら、学校がなくなる県への新卒の流れをどうするかも、セットで必ず考えてほしいところです。
受験生・保護者:学校選びで見たい2つの数字
これからCEを目指すなら、学校の名前や学費に加えて次の2つを確かめておいてください。
定員を大きく割っている学校は、体制が変わる可能性も考えておく
自分が働きたい地域に卒業生を出しているか
前の項で触れたとおり、卒業生が地元に就職する割合は学校によって11%から86%まで開きがあります。地元で働きたいなら、ここは大事な判断材料になります。
この調査を読むときの注意点
- すべて速報値です。確定値で数字が変わる可能性があります
- CE養成校の回答は30校です。1校で約3ポイント動きます
- 医療従事者向け調査は、職能団体の会員だけが対象です。非会員の意見は入っていません
- 「すでに深刻」は学校側の自己評価で、実際の閉校予定を示すものではありません
よくある質問
- 臨床工学技士は将来性のない仕事なのでしょうか?
-
今回の調査が示しているのは、養成校が学生を集めにくくなっているということです。臨床工学技士の仕事がなくなるという内容ではありません。新卒が減れば、働いているCEの希少性はむしろ高まるとも考えられます。
- CE養成校はこれから潰れていくのですか?
-
「すでに深刻」は学校側の見通しで、閉校の予定ではありません。ただ、厚労省は都道府県ごとに養成校の連携・再編を話し合う仕組みを検討しているので、学校の数や配置が変わっていく可能性はあります。
- 志望校の定員充足率はどこで調べられますか?
-
大学は入学者数などを公表することが求められていて、各大学の情報公開ページに載っています。専門学校も公式サイトで入学者数を出しているところが多いので、オープンキャンパスで直接聞くのも手です。
まとめ:養成校の数が変わる前提で動く
- CE養成校の50.0%が入学者確保は「すでに深刻」と回答し、「10年以上継続可能」は0校だった(回答30校、速報値)
- 定員充足率は57.0%で、12職種のなかで2番目に低い
- 社会人の52.4%が臨床工学技士の仕事を知らない
- 厚労省は都道府県ごとの協議の場で、養成校の連携・再編を話し合う仕組みを検討している



現場で働いている側としては、新卒が減ることを前提に、教育や業務の回し方を考えておく時期に入ったと思います。
次の記事では「社会人入学で数を補う」という案が本当に回るのかを、資料の数字から見ていきます。
- 次回:「社会人入学で数を補う」は現場で回るのか(近日公開)
- 【2026年版】臨床工学技士 今年の国家試験の合格率は?
- 【令和2年最新】病院に勤めている臨床工学技士の人数は?
参考資料
- 厚生労働省「第5回 医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会:資料」(2026年10月26日)
- 資料1「地域における医療関係職種の養成・確保体制の枠組みについて」
- 資料3「多様な人材が参入しやすい養成課程に係る調査結果について」
- 厚生労働省「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会 開催要綱」
- 日本臨床工学技士会「臨床工学技士合格者」(合格者累計、1988〜2020年)
- 厚生労働省「第39回臨床工学技士国家試験の合格発表について」(第34〜38回も同ページ群、第37回は訂正後の値)
- 厚生労働省「病床機能報告」令和7年度報告結果(CEじゃーなる集計)
- 厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」











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